禁足地へ
気づいたら、目の前に雷様がいて、トレノちゃん、レビンちゃん
ヤムちゃんが床に座っていた。
「沙有珠よ、今日は団体さんじゃな」
「そうか、今日は落雷の日だった……」
「雷様! お久しぶりです! 夜夢です!
また、これました!」
「おう、そうかよかったの」
「か、かみなりさま!?」
「つのが生えてる?」
トレノちゃんと、レビンちゃんが、お約束の反応をしている。
「トレノちゃん、レビンちゃん、紹介するね、こちら雷様。
あたしの師匠なんだ」
「うむ。沙有珠と、夜夢の師匠をしておる。
わしの事は雷様と呼ぶがいい。
二人とも、そう呼ぶでな」
「は、はい」
「わかりました」
トレノちゃんも、レビンちゃんも、見た目はそんなに驚いてない。
あたし達の知り合いって事だからかも。
「それで、雷様、こちらが、北原翔玲乃ちゃん。
あたしの友達です。」
そういうと、トレノちゃんが自己紹介した。
「北原翔玲乃です。さうすちゃんとは、仲良くさせてもらってます。
宜しくお願いします」
「うむ。おや? これは……」
返事を返そうとしてる雷様の様子が変だけど、何かあったのかな?
「あとにしよう。沙有珠よ、もう一人も紹介してくれ」
「はい! えっと、こちらは、大泉雷凌ちゃん。
あたしの友達です!」
レビンちゃんは、待っていたかのように、自己紹介をはじめた。
「はじめまして、大泉雷凌です。さうすさんには、
大変お世話になってます。友達って言われて嬉しいです」
レビンちゃんたら、なんで泣きそうなの?
「ちょっと、レビンちゃん! ずっと友達だったでしょ?
今更何を言ってるの?」
「えぇ、そうですね。ははは」
顔を赤くして照れてるけど、変なの。
レビンちゃんは、ちょっと遠慮がちな所があるんだよね。
お互いにだけど、もう一歩が踏み込めない感じ。
そんな会話をしてる時に、雷様は、レビンちゃんを
じっと観察してた。
「うむ。こっちもか……」
???
雷様の言動が引っかかる。
何かあったのかな?
「雷様、何かあったの?」
「翔玲乃に、雷凌じゃったか、そなたらは、
何か困っておったりするか?」
「「えっ?」」
「雷様、どちらかと言うと、今、困ってますよ」
トレノちゃんも、レビンちゃんも、うんうん頷いてる。
「おう、そうか、それは悪かったの。ただな、嫉視の印が
付いておったのでな。困っておらんかと思ってな」
「しっしの印? なんです、それ?」
「簡単に言うと、呪いという事になるかの」
「「「「えーー!!」」」」
全員が驚いた!
「足萎えの呪いとは、違うやつですか?」
聞いたのはヤムちゃんだ。
「うむ。違うの。
嫉視の印を付けられると、妬みや嫉妬の対象に
されてしまうんじゃよ。
さらに、相手に起こった嫉妬心を暴走させようとする」
「うへぇ、足萎えの呪いは、自分の心を思考誘導させようとしてくる
けど、その印は、相手の心を暴走させようとしてくるんですか?」
「そうじゃな、と言っても、誰でも視れる訳ではないぞ。
嫉視の印を視る事が出来る者だけじゃ」
「ここにいる者は、誰も見えとらんのじゃろ?
二人を視て、何か見えんか?
沙有珠はどうじゃ?」
あたしは、雷様にそう言われて、トレノちゃんと、レビンちゃんを
まじまじと見つめたんだけど、何かって言われても、いつもの2人だからなぁ……
「何も? いつもの2人ですね。おかしな所は見当たりません」
「そうか、夜夢はどうじゃ?」
ヤムちゃんも、あたしと同じ様に、2人を観察してたけど
「雷様、それは、見たら一発で分かるものなんですか?」
「うむ。一目瞭然じゃな。」
「えーー! 全然分かりません」
「そうか、翔玲乃に、雷凌。そちたちはどうじゃ?
お互いを見て、何か気づかんか?」
トレノちゃんも、レビンちゃんも、お互い見つめ合ってるけど、
はてな顔をしてる。
「わたしには、わからないです。」
「わ、わたしも! わかりません……」
「そうか、分からなければ、それでよい」
「ちなみに、見えたらどう見えるんですか?」
「ふむ。昆虫の視界ってわかるかの?」
「昆虫の視界?」
しまった、またオウム返ししてしまった。
「人間の目は、可視光線で見ているんじゃが、紫外線で見ている生物もいるんじゃ。
電磁波の波長の違いで、見え方が変わってくるんじゃよ」
「ふーん」
難しい話しになったので、よく分からない。
「例えばじゃ、人間の目には、黄色1色の花に見えるが、昆虫の目には、
白と赤の2色の花に見えてたりする。
色も変わるし、色数も変わって見えたりするんじゃ」
「そうなんだ」
「ふーん」
みんな分かってないみたい。
「わしは、どっちも視えるでな。それで、わしが二人を視ると
どう見えているか」
雷様が答えを言うまでに、間があったので
誰かがつばを飲み込む音が聞こえた。
「肌の色が青い」
「「「「え?」」」」
「肌の色が青い人間は、いないじゃろ?」
「はい」
「でも、普通の人は、雷様の様な目を持ってないですよね?」
「そうじゃな。」
「まさか! 蟲が?」
こう言ったのは、ヤムちゃんだ。
「うむ、考えられる事じゃな」
「「えーー!!」」
あたしと、ヤムちゃんは、びっくりして大声を出してしまった。
「紫外線の視覚を人間は持っておらんからの。蟲がその視界を
見せている可能性はあるの。
まぁ、他の何かの可能性は十分にあるがな」
トレノちゃん、レビンちゃんは、何を言っているのかわかっていない様子だ。
「わたしの顔色が悪いって事ですか?」
なんて、聞き出した。
「血の気の引いた顔色という訳では無いぞ。鮮やかな青色をしておる。」
「「えぇ!?」」
二人とも、自分の顔を抑えて、びっくりしている。
あたしには、普通の顔色に見えるから、雷様が見ている視界の事が
よくわからない。
たぶん、みんなもそうだろうな。
「雷様、仮に蟲に操られて、その視界を見せられていたと
したら、どうなるんですか?」
「そうじゃな、印を見つけたら、攻撃してくるじゃろうな。」
「攻撃ですか?」
「うむ。大抵の場合、複数いるでな、集団で印のついている者に
嫌がらせをはじめるんじゃ。
そのうち、暴力をふるいだし、その行為はどんどんエスカレートしてくる。」
「えぇ!?
それって、いじめでは?」
「うむ。だから、困った事はないかと、最初に聞いたのじゃ」
雷様は、トレノちゃん、レビンちゃんの方をみて
そう言った。
二人は下を向いてしまった。
「言いにくい事かもしれんがな。これについては誰かに相談しないと
なかなか解決しないんじゃ。
恥ずかしいとか、誰かに迷惑をかけたくないとか、自分が我慢すればいいとか
考えて、深みにはまっていく。
幸い、ここには、沙有珠も夜夢もいる。
ついでにわしもな。
困っている事があれば、話すといい」
雷様がそう言うと、二人は泣き出してしまった。
二人が泣き止み、少し落ち着いてから、トレノちゃん、レビンちゃんは
自分の言葉で、話しだした。
トレノちゃんは、転校する前からいじめにあっていたそうだ。
レビンちゃんも、どういう訳か、仲間はずれにされたりする事があった事を
告白した。
あたしとヤムちゃんは、泣きながら聞いたよ。
こんな辛い事に耐えていたなんて、知らなかった。
印がつけられていたとはいえ、人のする事が怖くなった。
話しが終わり、みんなが落ち着いた頃、雷様が
あたしにだけ聞こえる声で、話しかけてきた。
『解決法なんじゃが、嫉視の印を消すしかないの』
『はい。どうやったら、その印を消せるんですか?』
『それなんじゃが、すぐには無理じゃな』
「なんでですか?」
みんなには聞こえない声で話していたのに、口に出してしまった。
あたしがいきなり、そんな事を言ったので、みんながびっくりしている。
「さうすちゃん、どうしたの?」
「なにかありましたか?」
「……なにがなんでなの?」
「あっ、ごめん。独り言だよ、気にしないで。ははは……」
ごまかしたけど、みんな変な顔をしている。
『他の者には、まだ聞かれたくないんじゃ。気をつけるようにな』
『はい、すみません。
それで、どうして無理なんですか?』
『紋様を歩かなければならんのじゃ』
『え!?』
『嫉視の印を消すには、紋様を歩いて
その時に出る炎で、印を焼き尽くす必要がある』
『うわぁ……あれをやるのか……』
『そうじゃ、雷神養成ギブスを付けている沙有珠
ならまだしも、付けていない二人では、まず無理……』
『では、どうすれば……』
『修行をするしかないのぉ』
『修行をすれば、歩ける様になるんですね!』
『うむ。沙有珠が歩いた紋様より、簡単な
紋様なら、二人でも歩ける様になるじゃろ』
『そっか! それなら、やるしかないですね!』
『ただ、二人が修行をする覚悟があるかどうか、それを確かめん事には
させられんがな』
『うん! 聞いてみる』
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