一の祠
今日は2話投稿です
12時
18時
に予約入れてます
岩場が続く峻険な道なき道を進んで、あたし達は滝へと到着した。
高さは10メートルくらいかな?
あまり大きな滝ではないけど、勢いが凄い。
近くに行くと、大きな声で話さないと聞こえないくらいの音がした。
滝壺もそんなに大きくなく、広さ的には8メートルくらいだと思う。
深さもそんなにはないんじゃないかな。
滝は岩に落ちていて、跳ね返った水が滝壺に貯まる感じ。
あたし達は水筒に水を汲み、休憩する事にした。
ここの水もうまい!
HPのゲージ全回復って感じだよ!
一緒に座っていた雷様が、すっくと立ったので
何かと思っていたら、ちょっと待っておれとか言って、滝の岩場に
行ってしまった。
目で雷様を追っていたら、その姿がふっと消えた。
あ! 滝の裏に入った!
滝あるあるだ! 滝の裏側には洞窟があるって奴だ!
行ってみよう! 秘密基地っぽくていいよね。
立ち上がった所で、雷様が現れた。
もう出てきちゃったよ!
仕方なく、その場で待っていたら、どうしたのじゃ? とか言ってきた。
あたしも滝の裏に行ってみたいって言ったら、しばし待てと。
先に一の祠に行ってからじゃと言われちゃった。
むぅ。って思ったけど、一の祠に行った後、ここに来て
修行するんだって。
打たれちゃうのかな? 修行って言ったら、滝に打たれるよね。
打たれたことないから、どんな感じかなーって思っていたら
出発するらしい。
あたしは、雷様のあとをついて歩き出した。
下から見ると垂直の壁に見える崖を、僅かな窪みや出っ張りに足をかけたり
指をかけたり。
下を見てはいけない。マジ恐い。
雷様は、すいすいと登っていく。
あたしは身体が小さいから、次の出っ張りとかに手が届かない事が結構ある。
そうなると、もうね……
飛ぶしかないんだよね……
垂直の崖から手を離す……
めっちゃ恐い!
でも、次の出っ張りに掴まるには、ちょいジャンプして掴まるしかない。
届かなかったり、掴みそこねたりしたら、アウトー!
滑落して終了ーになっちゃうから、必死だった。
あそこの雲梯より恐いものは無いと思っていたけど、
ここも恐い!
それにしても、この身体、握力が尽きない。
身体が軽いってのもあるけど、ずっと掴まっていられる。
この力が無かったら、とっくに落っこちてたな。
力が続く事を願って、あたしは崖を登った。
崖を登りきると、ちょっとした広場に祠が建っていた。
「ふぅ。やっと着いた。
このルート、キツ過ぎ。」
思った事がつい口に出てしまった。
はははと雷様は、笑っていた。
「前のルートより、早く着いたじゃろ?」
確かにだいぶ早く着いたかもしれないけど、キツ過ぎる。
あたしは何も言わずにこくりと頷いた。
「少し休憩したら、掃除を始めるからな。」
「はい!」
あたしは地面に直接座り、水筒の水を飲んだ。
ぷはっ!
うまーー!
マジ生き返るなー!
しっかし、ここから落ちたら死んじゃうなーって思って見てた崖を登って
ここに来る事になるなんて……
大体、ここから降りようとか、ここを登ろうとか、普通は思わないよね。
山歩きをする人ってみんなこうなのかな?
なんて思ってたら、掃除をやるみたいだ。
ちょっとした広場なんて言ったけど、洞窟? 崖に空いた穴? みたいな感じ。
天井は5メートルくらい上。
なんていうか、鳥系の魔物とかドラゴンでも住んでいそうな場所だ。
実際は祠しかないけど。
あたし達は崖を登って来たけど、本当のルートは、左右に崖を掘った道がある。
道と言っても、幅が50センチくらいしかないから、崖に手を広げて
そろりそろりと歩く感じだけど。
崖を登るよりは全然楽。
あたしは、祠の横にある道具入れから、ほうきを取り出して掃き掃除を始めた。
雷様は、背負い袋から水筒を取り出して、雑巾を濡らして祠を
拭いている。
外が終わったら、祠の中を掃除する。
雑巾で床を拭いて、お供えしている水を交換する。
山に来たら毎回やる事と言われている作業だ。
雷様は、懐から、何かを取り出すと
水の横にお供えした。
そして、あたしに横に座る様に言うと、座ったまま、2回お辞儀をして
2回拍手をし、更にもう一度お辞儀をした。
あたしも同じ事を一緒にやった。
2礼2拍手1礼というらしい。
食べ物でもお供えしたのかな? って思って聞いたら
沙有珠のへそじゃよ。って。
!?
おもわず取ろうとしたら、首根っこ掴まれてしまった。
「あたしのおへそ! なんで、お供えしちゃうの?」
「これも修行のうちじゃ。」
「えー! おへそをお供えするのが修行ってどういう事!?」
雷様は、必要なんじゃとか言って詳しくは教えてくれなかった。
あたしは、お供えにされちゃった自分のおへそを見ながら、
頑張れ、あたしのおへそと言って祠を出た。
扉を閉めると、雷様が、ブツブツとなにやら言い出した。
右手の人差し指と中指を立て、他の指を握りこむと、しゅっしゅっと振り回し、
左手も同じ握りにして、右手で左手の人差し指と中指を握ると、
「唵!」
と掛け声をかけた。
「これでよい。」
何をしたの? って聞いたら、結界を張ったって。
「沙有珠のへそが鷹に食われん様にしたんじゃ。」
「えー!?
鷹がいるの? そんなの聞いてない!」
って、文句を言ったら、そりゃいるぞだって。
「ここは、禁足地で人の出入りは禁じておるが、動物達の立ち入りを
禁じているわけではないのでな。
熊もいるし、猪もいる。」
「ひぇー」
そうなんだ! 熊も出るの! 今まで見なかったけど。
「まぁ、わしもいるし、わざわざ近づいては来ぬさ。」
「普通の動物は、ここに来れるとは思わぬが、鷹は空を飛ぶからの。
荒らすかもしれん。」
「雷様、絶対に入ってこられない様にしてください!」
「わかっておる。大丈夫じゃよ。」
なんの神さまか知りませんが、あたしのおへそを守ってください!
お願いします!
あたしは真剣に祈った。
「さて、そろそろ行くぞ。
滝で修行じゃ。」
「はい!」
どのルートで行くのか? びくびくしながら雷様を見ていたんだけど
さっき登ってきた崖を降りていったのを見て、膝をついてしまった。
あー!
なんでここから降りようって思うのか!
左右に道があるのに!
ひとしきりがっくりした後、置いていかれるのも嫌なので、あたしも崖を降りる事にした。
下りは上りよりも恐いな……
身体が小さいから、足場となる出っ張りとか、窪みに足が届かないんだ。
出っ張りがある足場まで、ずりずり落ちて一息つく。
窪みに手をかけ、下を見て、足場になる場所を探す。これ、ほんとやばい。
風もたまに強く吹く。
しっかりと崖に張り付いていないと、吹き飛ばされてしまう。
自分の体重を支えられる腕力と、尽きない体力に感謝した。
崖の僅かな窪みがあれば、指を入れ、身体を支える。
足場を探しながら、ゆっくりずりずり降りていく。
足場が近くに見当たらない。
登る時も、近くに掴めそうな所が無い時があった。
手が届かない、そんな時は、掴めそうな所にジャンプして行った。
恐かったけど、降りる事も出来ないし、こんな所で立ち往生とか
したくないから、あたしは死ぬ気で飛んだよ。
何も出来ずに元の時間に戻ったら、車に轢かれて死んじゃうんだ。
やれる事はやらないと!
足場がないなら、両手で自分の身体を支えるしかない。
崖のちょっとした凸凹を、広げた両手で掴む。
足場から足を外し、ゆっくりと降りていく。
身体能力が上がっているからこそ出来る芸当だ。
足場を見つけるまでは慎重にゆっくりと降りた。
ようやく見つけた足場で一息つく。
下を見ると震えるくらい怖いから、目の前の崖をみて、黙々と下へと
降りていった。
30分くらいでようやく崖下へと着いた。
雷様が待っていてくれた。
落ちないか心配してたのかもしれない。
滝までの道無き道を雷様の後をついて歩いた。
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