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剛腕JK  作者: ロキ
56/92

南沢夜夢(みなみさわ やむ)

今日は2話投稿です

12時

18時

に予約入れてます


 学校からの帰り道

あたしは、困っている女の子に遭遇した。

まわりには、あたししかいない。


電動車椅子が動かないみたいだ。

あたしは、声をかけた。


「どうしたの? 大丈夫?」

「急に動かなくなっちゃって」

「押そうか?」

「うん……これ、電動だから重いかも……」

女の子は、あたしを見て、押せないんじゃないかって思ったのかも。

だから、あたしは言ったんだ。


「あたし、力はけっこうあるから」って。


「押してもいい?」

「じゃあ、お願いしてもいいかな?」

「うん、まかせて!」


あたしは、電動車椅子の後ろにまわって、押して上げる事にした。


小学生の女の子が乗ってる車椅子は、電動とはいえ、そんなに重くなかった。

不安そうな女の子だったけど、普通に動き出したので、安心したみたい。


「ありがとう! わたし……」


女の子が何かを言いかけた所で、あたり一面が真っ白になった!?



気づいたら、目の前に雷様かみなりさまがいて、車椅子に乗っていた女の子が

床に座っていた。


「あれ?」

また、いつものやつと思ったけど、どうしてこの子がいるの?


「はて? 沙有珠さうすよ、この子は誰じゃ?」

「え? 雷様かみなりさまが呼んだんじゃないの?」

「わしは呼んでおらん。」


こんな会話が繰り広げられていたのだが、床に座っていた女の子が、

叫び声をあげた。


「か、かみなりさま!? つのが生えてる!」


あたしが雷様かみなりさまって呼んだのを聞いたからか、雷様かみなりさまを見て

びっくりしたんだろう。


まぁ、そうだよね。

いきなりつのが生えたおじさんが目の前にいたら、びっくりもするわ。

とりあえず、落ち着いてもらおう。

あたしはこの子の名前も知らないし。


「とりあえず、落ち着いて。

この人……人じゃないか……この神さまは、雷様かみなりさま。」


と言った所で、女の子が叫んだ。


「おへそ取られちゃう!」


む。と思い、雷様かみなりさまをひとひとにらみ。


雷様かみなりさまは、両手を振って取っておらんぞ。取ってないからな。

と言っているが、あたしは、取られちゃったからね。そこは、信用しない。


調べた方がいいよって言ったら、女の子が着ていた服をたくし上げておへそを出した。

あたしには、おへそがある様に見えるけど、本人はどうなんだろ?


「あった! おへそあるよ!」

女の子は、触ったりして確かめていたから、大丈夫なんだろう。


ちょっと落ち着いた所で、あたしは、女の子に声をかけた。


「あたしは、小金井沙有珠こがねいさうす4年生。君は?」

「わたし? わたしは、南沢夜夢みなみさわやむ。4年です。

さっきは、車椅子押してくれてありがとう。

って、車椅子はどこ?」


車椅子が無い事に気づいた南沢夜夢みなみさわやむって名乗った女の子が

慌てた様子で部屋の中を見回した。


「無いみたいだね。」

「どうしよう、あれが無いと帰れない……」


不安そうな顔で、あたしを見てくるけど、そもそもどうしてここにいるのか?

わからないから、なんとも言えない。

あたしは、雷様かみなりさまに聞いてみた。


「あっちの時間に戻ったら、ありますよね?」

「うむ。あるじゃろうな。」


「帰りはいつも通りですか?」

「あぁ、7日後じゃな。」


あたし達のやり取りを聞いていた女の子が、反応した。


「7日後?

7日後って、どういう事?」


「ちょっと待って。」


あたしは、女の子にそう言うと、もう1つ雷様かみなりさま

質問した。


「この子もあたしと同じ?

戻ったら何も覚えてない?」

「うむ。ここでの事は覚えておらんじゃろうな。」


ふむふむ。あたしは、ここに来ないと、ここでの事は思い出せない。

この子もそうだとして、次回があるかどうかは分からないけど……

今回はこの子も一緒って事か。

同世代の子と山歩きとか、合宿みたいだ。

ちょっと楽しいかもしれない。

そんな事を考えながら、女の子と向き合った。


「あのね、なんて説明したらいいのか分からないけど、

ここは、別の世界? みたいなとこなの。」


「別の世界?」


こういう時は、オウム返しになるよね。あたしもそうだった。


「うん。

でも、7日後には、ちゃんと帰れるから安心して。」


「7日も帰らなかったら、お父さん、お母さんに怒られちゃう!」


そう思うよね。あたしもそう思ったよ。


「大丈夫。ここでの7日は、元の世界だと、1秒も経ってないから。」


「え? 1秒?」

「うん。だから、戻ったら車椅子に座ってると思う。」


「ほんと?」

「うん。あたしは何回も来てるから知ってるんだ。」


信じられないみたいな感じであたしを見てるけど、これが本当の事だって

分かるのは、次にここに来た時だからね。

信じてもらえなくてもしょうがない。


「今すぐは帰れないの?」


雷様かみなりさま、どうなの? 帰れる?」


「無理じゃのぉ。」


雷様かみなりさまは首を振っている。


さて、どうしたものか……

大方、沙有珠さうすに巻き込まれた感じで、ここに来てしまったのじゃろうが

ここは禁足地。招かれざる客は番人に排除される。


「まぁ、来てしまったものは仕方ない。

沙有珠さうすよ、着替えを貸してあげなさい。予備の分があるはずじゃ。」

「はい。」


あたしは棚に入っている着替えを取り出すと、一式、女の子に渡した。


「え? なにこれ?」

「ここって、今着ている服だと入れないの。」

「入る? 入るってどこに入るの?」


「山。」

「山? わたし、山なんて登れないわよ。足が悪くて……」


そういえば、車椅子に乗ってたっけ。

どうしたらいいのかな?

あたしは、雷様かみなりさまを見た。

雷様かみなりさまは、あたしの表情をみて察してくれた。


「ふむ。どれ、視せてみなさい。」


雷様かみなりさまが女の子の足を視ている。

触ったらダメだからね! と思いながら、あたしは雷様かみなりさまを見てた。

幸いにも、雷様かみなりさまは、女の子の足を触ったりはしなかった。


でもちょっと、予想外の事を言われて、ぽっかーんとしてしまった。


「ふむ。呪いじゃな。足萎あしなえの呪いじゃ。」


「「な、なんて?」」


2人して聞き返してしまった。


「足自体は、何ともない。歩かない事による筋肉不足はあるかもしれんがの。

立ってみるといい。」


「え? わたし、足がうまく動かせなくて……」


「大丈夫じゃ。ここに呪いは届かんから。

ほれ、沙有珠さうす、手伝ってあげなさい。」


「あたしは、頷くと、女の子に手を貸して、立たせてあげた。」


「あれ? あれれれ? 立ってる? わたし……」


女の子は足踏みをしたりしてる。

そのうち、そろりそろりと歩き出した。


「歩ける! 歩けるよ! わたし! ぴくりとも動かなかった足が!」


猛烈に喜んでる。

女の子はあたし達の方を見て、夢じゃないよね? とか言ってきた。


微妙……


あっちの時間に戻ったら、車椅子に座ってるんだよなぁ。

夢って言われると、否定出来ない。

ここでの事も覚えてないからね。


治ってたりするのかな?

と思いながら、雷様かみなりさまを見た。

こういう時、雷様かみなりさまは、口に出して言わなくても察してくれる。


「夢ではないな。

呪いの届かぬこの場所で歩けたのなら、足は問題ないはずじゃ。

ただ、戻った時どうなるかはわからんがの。」


「え? 戻ったら歩けなくなってるって事ですか?」


「どうじゃろうな。ここでの事は、全て忘れてしまうのじゃ。

歩いた事も、呪いの事も全て覚えていない。

その状態で、車椅子に座った状態で元に戻ったら、君は立ち上がろうとするかね?

歩こうと思うかな?」


「うっ」

っと言ったまま、女の子は考えている。


足萎あしなえの呪いは、思考誘導をしてくるんじゃよ。

自分は歩けない。立ち上がれないし、歩けるわけがない。

こんな風に後ろ向きな考えを、自分が考えたかの様に思わせてくるのじゃ。

明日から頑張ろうとか、自分にとって楽しい事をさせようとしてきて

肝心な事を考えさせない様に邪魔をする。

楽しい事は、誰でも好きじゃからな。

じゃが、その怠惰な思考誘導に負けてしまうと、本当にやらなきゃいけない事

だとか、本当にやりたい事が出来なくなり、自分が何をしたかったのか?

わからなくなってしまうんじゃ。」


「この呪いに打ち勝つには、自分の足で歩くという強い意志が必要なんじゃが

戻った時に、そう思えるかの?」


「全部、忘れちゃうんですよね?」


雷様かみなりさまは、こくりと頷いた。


女の子は考えながら、話し出した。


「動くってわかれば、頑張れると思うけど、何も覚えてないとなると……

最近はリハビリにも行かなくなってて。」


女の子は自信なさげにうつむいている。

そしてぽつりぽつりと話しだした。


「足が、全然動かないんです……

みんな、励ましてくれるけど、ぴくりとも動かない。

何か反応があってもいいと思うんだけど、ちっとも動かない。

ギブスをはめてる時から変だなって思ってた。

締め付けがキツイからなんだろうなって思う様にしてたんだけど、

ギブスが取れても、同じ感覚でした。」


「前は考えなくても動かせたのに、動け! 動け! って何度も何度も……

実際に口に出して言っても、ぴくりとも動かなかった……」


「検査しても、足に異常は無くて、もしかしたら脳神経に異常が出てるのかも

しれないって言われて、脳の検査とかもやったけど、異常なし。」


「とにかく根気よくリハビリを続けましょうって事になったけど、

まるで動かない日が、3ヶ月も続くと、あーわたしはもう歩けないんだなって……

あきらめ始めちゃった。

5ヶ月過ぎると、リハビリにも行かなくなって、漫画とか動画とか見てる事が多くなって……」


「自分で歩こうって、歩きたいって思わなくなってきて。

なんていうか、あきらめの気持ちが強くなってて……」


「立ち上がれないし、歩けるわけがない。

さっき言われた通りの事を思ってました。

もしかしたら、思考誘導されていたのかな?」


「でも、呪いが解けたら歩けてる……」


女の子の目には涙が溢れ出していた。


「あれ?」


泣いている事に気づいた女の子が涙をぬぐって


「もう、歩けないのかと思ってた。

でも、ここに来て、歩けるって分かって……

わたし、頑張ります!

呪いになんか負けない様に頑張ってみます!」


女の子は雷様かみなりさまに向けて、強い決意を見せた。


「うむ。

この地で歩き、身体に覚え込ませるのじゃ。

リハビリの続きじゃ、今までさぼった分取り返すのじゃな。」


「はい!」


お読み頂き有難うございます!

よろしければ、ブックマークと評価の方も宜しくお願いいたします。

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