雷神養成ギブス
2発目からは、気絶しなくなった。
あたりが真っ白になった後、凄まじい轟音が鳴り響く!
そんな中、立ち尽くすあたし。
一歩も動けない。
わずか数秒のはずなのに、何時間も経った気がした。
気がつくと豪雨の中、びしょ濡れになっていた。
そんな事が10回続いた。
雷様おへそ返してくれないかなーとか思いながら
お腹に手をあててみるけど、やっぱり無いままだ。
11発目の雷で、変化があった。
あたりが真っ白になった後、いつもなら、凄まじい轟音が鳴り響くのだけれど、
いつまで待っても音は鳴らない。
変だな? と思っていると、浮遊感。
身体が上へと浮き上がっていく。
真っ白な世界の中、自分の身体が上へ上へと上がっていく。
なにこれ? ドナドナ?
雷様に食べられちゃう!?
猫が首根っこを掴まれた様な体勢のまま、持ち上がっていく身体。
全く動けない。
どうなるのか? ビクビクしていると、浮き上がっていた身体が止まり
どこかに降ろされた。
真っ白で何も見えなかった世界が、霧が晴れた様に姿を現してきた。
ここは? どこ?
一面に広がる雲海。見上げると青い空が……
白い雲のベンチに腰掛けている人? 雷様かな?
が話しかけてきた。
「おいっす!」
「雷様だー!」
「お前の中にある雷様のイメージじゃ。
わしは雷様ではない。」
「えー! うっそだー! 絶対、雷様だよー!
そっくりだもん!」
「うっ、何気に失礼な奴じゃの……」
「緑の天然パーマに、2本の角。緑の身体に、トラジマのパンツ。
これこれ! 雷様って言ったら、こうじゃなくちゃね!」
いや、だから、これはお前のイメージを具現化しただけじゃからの!
ホントは違うからな!
「そうなの?
まっ、そんなのどうでもいいんだった!
おへそ返して! お願い!」
9才のあたしは、ベンチに座る雷様に突撃した!
じゃれつくあたしをなんなく躱し続ける雷様
そこをなんとかお願いします!
と、再度手を合わせてお願い攻撃をしたんだけど……
だめだった。
「今日、お前をここに呼んだのは、そんな話をする為じゃないぞ。」
「え? おへその話じゃないの?」
「もちろんじゃ。それに、へそが無くっても困らんじゃろ。
お前だけが、無いって知ってるんじゃ。
他の者には、お前のへそはちゃんと見えてるんじゃから問題なかろう。」
「えー! あったのに無くなっちゃったのがやなんだけど!」
ブーブー文句言ったのに、取り合ってくれなかった。
「試し塗りも10回終わって、ちゃんと定着もしておる様じゃしな、
今日は、デザイン合わせじゃ。」
「デザイン合わせ?
なにそれ?
そもそも、試し塗りって何?」
矢継ぎ早に質問すると、雷様は嫌な顔をしていた。
「よいか、なんで? とかはなしじゃぞ。
質問は説明が終わってからじゃ。」
「えー! なんでー?」
「ほら、言いおった」
あたしは慌てて口を塞いだ。
雷様を怒らせちゃ大変だ。
おへそ返して貰えなくなる。
口を塞いでじっと雷様を見ていたら、こくりと頷いてくれた。
「雷神養成ギブス
お前にはこれを付けてもらう。」
へ? なにそれって言いかけて、慌てて口を塞いだ。
質問は後でだった。
「10回の試し塗りで、ようやくこれを塗れる様になった訳じゃが、
今回は女の子じゃしな、わしのデザインでいいかどうか?
確認をしとこうと思うてな」
そう言って雷様はスケッチブックを開いて見せてきた。
緑の天然パーマに、2本の角。緑の身体に、トラジマのパンツ。
ちっちゃい女の子が両手を広げて無邪気に笑っている。
わーいとか擬音まで書いてあった。
子どもの落書き?
あたしでももっとうまく描けるよ!
雷様は、どうじゃ? とか言ってる。
これを見て何を言えばいいの?
「黙っていると、そうか、これでいいみたいじゃな。
じゃあ、これでいくか。」
と雷様が言った所で、待ったをかけた!
「ちょーっと! 待って!
質問は後でって言ったから、黙ってたんだけど、聞いてもいい?
これはなに?」
あたしはスケッチブックの落書きを指さして聞いてみた。
「お前が纏う雷神養成ギブスのデザインじゃ。」
「はっ?」
ぽっかーんと雷様を見てしまった。
「なんて? これ、あたしなの?」
「うむ。お前の中の雷様のイメージにしてみたんじゃ。」
「あたしが纏うって言ったけど、この格好になるって事?」
こくりと頷く雷様。
「だめー! 絶対無理! こんな格好になんかなれないよ!」
何を言っているんだこのオヤジは!
雷様がオヤジ扱いになってしまったが、仕方ないよね。
「罰ゲームじゃないんだから、こんな格好になんてなれる訳がない!
恥ずかしい」
って言ってやった。
「その恥ずかしい格好をわしはしておるんじゃがなぁ」
「雷様は、似合ってるからいいけど、あたしには似合わないよ!」
「えっ? 似合ってる?」
「うん! もう、その格好以外考えられないくらい似合ってる!」
って言ったら、なんか落ち込んでた。
「このデザインが気に入らないとなると、どうするか……」
「ねぇ! 他にはないの?」
「あるにはあるが……大人向けじゃし……」
「いいよ! 大人向けでも。見せて!」
「こ、こら、勝手に見たらだめじゃ!」
あたしはスケッチブックを雷様から奪い取ると
ページを捲った。
あっ!?
あたしは動きが止まってしまった。
なんていうか、エッチな格好をした女の子が変なポーズをしていたから。
うっふーんとか、擬音が書いてあったけど、必要なの?
次のページをめくると、そこにも、あっはーんて擬音が……
そこで雷様にスケッチブックを取られてしまった。
もうちょっと見たかったのに……
「子どもが見ちゃダメじゃ」
赤い顔をした雷様がそんな事を言った。
「他のデザインはこっちじゃ」
雷様は、別のスケッチブックを持ってきて開いて見せた。
「あるんじゃん!」
最初からこっちを見せればいいのにと思ったし、大人用のスケッチブックに
あの落書きを描くな! と思った。
で、見せてもらったけど、水着?
どれも肌の露出面積が多いのばっかりだった。
「ねぇねぇ、養成ギブスって石膏とかじゃないの?」
「あー、人間が骨折した時にやる奴か。
それとはちと違うが、ギブスに落書きとかやるじゃろ?
あれと似た様なもんじゃ」
ん? 落書き?
そういえば、友達が腕を骨折してギブス付けた時に、
うんちくんの落書きされてたなー
なんてのを思い出したけど、養成ギブスと落書きが結びつかない。
はてな顔一杯の顔をして、雷様を見ていたら、
何かを察したらしく、説明をしてくれた。
「雷神養成ギブスってのは、ボディペインティングって
言ったら分かるかの?」
「ボディペインティング?」
あたしにはよくわからなかったので、わからないと言ったら
「裸の身体に直接、塗料で絵を描くのが、ボディペインティングじゃ」
「えっ!?」
「雷神、いやまずは雷人か。雷人になる為の塗料を全身に塗る。
特殊な塗料でな。
高い電圧をかけないと塗れんのじゃ」
「高い電圧って、もしかして!」
「そう、雷じゃ。
大体1億ボルトの電圧をかけながら塗っていく感じじゃな」
「えぇ! じゃあ、あたしが何回も雷に打たれたのは!」
「あぁ、さっきも言ったと思うが、下塗りじゃ」
雷で下塗り……
あたしの身体に落書き……
わけがわからない……
「雷様はあたしの身体に落書きしようとしてるんですか?」
わからないから聞いてみた。
「いや、落書きなんてしないぞ。
ふむ。
よく伝わらなかったか。子供に説明は難しいのぉ」
ふぅとため息をつきながら、雷様は言った。
「まず、なぜわしがお前に、雷神養成ギブスを
付けようとしているか?
それから説明せんとだめじゃな」
そうそう、そういうのもわからなかったから、お願いしたい。
あたしはこくりと頷いた。
「1発目の雷。
覚えているか?」
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