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2.8.21 囚われの勇者(のパーツ)

 『大』と『小』をする現場を目撃されるという大惨事。

 しばらく涙を流して放心していた真一だったが、ようやく再起動する。

 ちなみに出すもの出したら攻撃されたのだが、そのあとは何もなく放置されたままだ。


 どういうことかな?

 俺のケツを攻撃した誰かは、やるだけやって逃げたってこと?


 あれこれ考えてみても、相手の意図など分かるはずもない。

 いずれにしても真一の腰パーツは、人のいる場所にあるということだ。

 だとするとこの先あまり排泄行為はしたくない。

 とはいえ生理現象を我慢することなんて不可能である。

 普通の人間ならば、、、


 けれども真一にはチートスキルがある。

 この先ずっと飲まず食わずでも、きっと死ぬことはない。

 たぶんスリップダメージが少し増えるだけで済むだろう。

 空腹や喉の渇きも辛いが、その苦痛も100分の1で済むなら耐えられるはずだ。

 だったら、、、


「断食するか、、、」


 それが真一の結論だった。

 もちろんそれではここから脱出するためのトンネルを掘ることができない。

 だけどあれだけ辛い思いをして、10センチほどしか進めなかったのだ。

 このペースだとあと10日くらいかかってもおかしくない。

 そんなにのんびりしていたら、肉が腐って食えなくなる。


 うん、諦めよう。


 はじめから無茶な計画だったのだ。

 とりあえず今は、、、


「疲れた〜」


 気がつけばこの異世界に来てから随分経っている。

 外を見ることはできないが、とっくに日も暮れている時間だろう。

 ヒーラーさんのおかげで安心して眠れるのだから、今後のことは明日考えればいい。

 今日はもう休むことにしよう。

 とにかく人生最悪の、受難の1日であった。


「お休みなさい」



ーーーーー



 さて、真一の受難の日々は、1日だけで終わるのか?

 もちろんそんなはずもない。

 翌日以降も次々とトラブルに見舞われることになる。

 はい、さっそく、、、



ーーーーー



「痛ったぁぁぁっ!!!」


 鋭い痛みを感じて真一は飛び起きた。


 タンスの角に思い切り小指をぶつけた!

 めっちゃ痛いっ!!


 熟睡していたところを叩き起こされたが、目を明けても周りは明かり1つない真っ暗闇の中。

 一瞬意味が分からなかったが、少しずつ意識が覚醒してくる。

 真一は巨獣の肉の中に囚われたまま夜を明かしたのだ。


 外が見えないので、どれくらい寝ていたのか全く分からない。

 たっぷり眠れた感じだし、そこそこ疲れもとれている気はする。

 だがそんなことよりも、泣きそうなくらい小指が痛かった。

 寝ぼけた頭のままで、真一は考える。


 ってか、タンスってなんだよ!!

 異世界にタンスなんて、あるわけない、、、こともないか。


 原因がタンスかは分からないが、とにかく真一は左足の小指をどこかにぶつけたようだった。

 100分の1でここまで痛むとは、いったいどれだけ凄まじい勢いでぶつけたのだろうか。

 そもそも寝ていた真一は左足を動かしてなどいないのだ。

 つまり逆に何かが真一の小指にぶつかってきたということ、、、


 って!、ヤバいんじゃねぇかっ!!?


 危険を感じて一気に目を覚ます真一。

 左足が何者かに攻撃されているのだ。

 真一の左足は太ももからつま先まで全て所在不明だった。

 今まで何の手がかりもなかったのだ。

 いくつに分断されているかも分からない。

 だがどうやら小指の付いている足先部分が、何者かに見つかったようだ。


 身構える真一。

 足先の感覚に意識を研ぎ澄ませる。

 真一の左足は、、、


 あれっ、これ、、、

 誰かに持ち上げられてる?


 感覚的には、足首から先が独立パーツに分かれているようだ。

 その足首パーツを誰かが持って、いろいろ角度を変えるように動かしている感じだ。

 攻撃されている、というよりは、調べられているみたいである。


 そうしてアレコレされること十数秒。

 左足を持つ誰かは調べ終わったのか、真一の左足をどこかに置いた。

 真一はそこからしばらくの間、じっと様子をうかがう。

 だがいくら待ってもそれ以上何かされることはなかった。

 どうやら誰かさんは立ち去ったようである。


 だがそれよりも重要なのは、、、

 真一の左足が、普通に足の裏を下にして置かれていることである。

 5本の指がちゃんと地面に接地しているのだ。

 それがどういう意味を持つかというと、、、

 試しに指で地面をつまむように曲げ伸ばししてみれば、、、


「動けるっ!!」


 つまり真一の左足パーツは自由に動けるのだ。

 足首から先だけの重さしかないので、指の力のみで十分に移動することができる。

 これなら逃げ出すこともできそうだ。

 さっそく左足をセコセコ移動させてみる真一。

 だが、、、


 バコッ


 前方に壁があった。

 ならば指で地面を押すようにしてバックしてみる。


 バスッ


 後ろにも壁?

 ってかこれ、、、

 箱の中じゃねぇーかっ!?


 左足脱走計画は、いきなり頓挫とんざである。


 真一(の左足パーツ)は囚われの身となってしまったのだ。

 もっともそもそも本体(生首)からして、巨獣の肉の中に囚われてる最中である。

 囚われの勇者すぎるにも程がある真一であった。


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