↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/576

2.6.19 人生最大の危機

 真一は途方にくれていた。

 身動きもできずに死を待つだけの状態に追い込まれてしまったのだ。

 ここまで頑張ってきたものの、今回ばかりはどうやら助かりそうにない。

 しばらくは放心状態であった。


 上空からダイブさせられて、、、

 咄嗟にモンスターを攻撃した判断にミスはなかったと思いたい。

 実際に狙い通り、大幅なレベルアップもできた。

 だけどその結果は遠回りな自殺にしかならなかったのだ。


 何もできない長くて無為な時間が過ぎていく。

 後悔や怒りといったマイナスの感情が、頭の中をグルグルと回り続ける。

 何をする気力も湧いてこなかった。


 実際、あれからどれくらい時間が経っただろう?

 もう何時間もボケーっとしていた気がする。


 ふと、そんなことが真一の頭をよぎる。

 ステータス画面でヒーラーさんのサステナヒールの残り時間を見れば、時間経過が分かるはずだ。

 というかもしかしたら、もうサステナヒールが切れてるかもしれない。

 いまこの瞬間にHPが尽きかけていてもおかしくはなかった。


 ヤバっ!


「ステータスっ!」


 今さらながら真一は、人生の残り時間を失念していたことに気がついた。

 慌ててすぐさまステータス画面を呼び出す。


 もっとも今さらジタバタしても、もはやどうにもならないのだが、、、


ーーーーーーーーーーーーーーー

名前:馬宮 真一

HP:33 / 35

MP:5 / 34

補助効果:

 HP自動回復 【+1 / 28秒】

  ▶ロングサステナヒール 【113928 / 114514秒】

状態異常:

 スリップダメージ 【-0.22 / 10秒】

ーーーーーーーーーーーーーーー


「どうにかなってたっ!!」


 感激して絶叫する真一。

 いつの間にか『補助効果』欄に表示されている『HP自動回復』の魔法が変化していた。

 さっきまで『サステナヒール』だったはずが、『ロングサステナヒール』に変わっているのだ。

 『サステナヒール』が切れたあと、ヒーラーさんがかけ直してくれたのだろう。

 そしてその新たな魔法は、『サステナヒール』の回復量が減る代わりに、効果時間を長くしたもののようだ。


「ヒーラーさん、ありがとうっ!!」


 回復量は『2秒で1』だったのが、『28秒で1』に。

 14分の1の回復スピードだ。

 問題はこれで回復が間に合うかである。

 今の真一のスリップダメージは、『窒息』が増えて『10秒で0.22』。

 一方の回復量は『28秒で1』なので、10秒に直すと0.33、いや0.35くらいだろうか。

 十分にダメージ量を上回っている。


 良かった、セーフだ。


 それに対して持続時間は『114514秒』に伸びていた。

 相変わらず中途半端な数字である。

 サステナヒールのときもキリの良くない秒数だった。

 正確な数字は思い出せないが、ちょうど2時間に少し足りないくらいだったはずだ。

 だいたい7150秒くらいである。


 ってことは、えーと、15、、、いや16倍ってとこか?

 秒じゃ分かりにくいから時間に直すと、60秒で割って、60分で割って、、、

 んーと、、、31〜2時間か。

 長いなっ!!

 

 『ロングサステナヒール』が丸一日以上持続するというのはとても助かる。

 そして回復量もそれほど余裕はないが、スリップダメージを十分に上回っている。

 まさに今の真一にピッタリなリジェネ魔法。

 つまり真一は、、、


 今晩寝ても大丈夫なのだ!!


「ヒーラーさん、神かよっ!!グッジョブ過ぎるって!!!」


 しかも32時間に1回なら、ヒーラーさんにとってもそれほど負担にならないだろう。

 いつまで飽きずに付き合ってくれるかは不明だが、1週間くらいは回復を続けてくれるかもしれない。

 それまでにレベルを上げるなどして、自力で現状を打破できればいいのだ。

 まだまだ先行きは厳しいが、それでも希望は見えてきた。

 それに少なくとも31時間は寿命が伸びたのだ。


「はぁあぁぁ〜良かったぁ〜」


 グギュルルルウゥッ!


 安心して気が抜けたところで、真一の腹が鳴る。

 腹パーツははるか彼方にあるはずだが、体内を音の振動が伝わって、真一には確かに聞こえたのだ。

 やはり耳で聞こえなくても、骨伝導みたいな感じで全身の音は届くみたいである。


 そうだっ、試しに、、、


 ゛ブッ


 ケツに力を入れてオナラをしてみたが、こっちはかすかに聞こえた気がするだけだった。

 頭から遠いと届きにくいのだろうか?


 うん、汚い実験はここまで。


 それよりも問題は空腹である。

 この異世界に来てから4〜5時間経っている。

 もちろんその間にまともな食事などしていない。

 薬草を探して草をかじりまくったが、不味くてほとんど吐き出している。


 まぁ、食事にされそうになったことは、何度もあったんだけどなっ!!


 と、自分で自分にツッコミを入れる真一。

 しかも地球で最後にメシを食ったのも、事故に遭う数時間前のことだ。

 めちゃくちゃ腹が減っているのも当然の話である。


 とはいえこんな生首だけの状態では、食べ物を探すことは難しい。

 このままずっと飲まず食わずでいたら、そのうち『空腹』とか『飢餓』のスリップダメージが発生しそうだ。

 まぁそれでも生きていけそうなのが、今の真一の身体である。

 とはいえずっと腹が減っているなんて、考えるだけでも辛い。

 その苦痛も100分の1に軽減されるのかもしれないが、だとしても考えるだけで恐ろしい拷問である。


 やはり何とかして食糧を見つけたい真一であった。

 とはいえ今はそもそも身動きすらできないのだ。

 モンスターの肉に閉じ込められて。


 ん?

 肉、、、?


「あるじゃんっ!昼メシっ!!」


 肉に閉じ込められてるんなら、周りの肉を食えばいいのだ。

 調理できないので生肉だけど、そのかわり血から水分補給ができるかもしれない。

 異世界の謎モンスターの生肉など、普通なら腹を壊すところだろう。

 けれどもチートスキル持ちの真一に死角はない。

 最悪のケースでも、『毒』の状態異常を喰らってスリップダメージが0.01増えるだけだ。


 しかもひたすら肉を食っていけば、この肉の檻から抜け出すトンネルも作れる。

 まさに一石二鳥だ。

 真一はさっそく昼食にとりかかる。

 いや、どちらかというともう夕食に近い時間だろう。


「そうと決まれば、いただきまーす!!!」


 ガブッ!!


「うぐぅげっ!マズぅうぅぅーっ、、、」


 生臭くて、獣臭くて、めっちゃマズい。

 しかもタイヤのゴムのように硬くて食感も最悪だ。

 ウゲーっと吐き出す真一。

 思わず涙が溢れてくる。

 ただただ苦痛なだけの食事であった。


 これ、メシを食わなくても生きていけそうだし、無理して食べる必要ないのでは?


 どうせ食べなくてもスリップダメージが少し増えるだけのことである。

 空腹を我慢する苦痛と、このクソ不味い生肉を食べる苦痛。

 つまりはこの2つの苦痛のどちらを取るかという話だ。

 少し悩んでみるも、正直かなり拮抗していた。


「いや、でも脱出しないとだもんな」


 感じる苦痛が同レベルなら、脱出に近づける方がいい。

 真一は覚悟を決めて食事を再開する。

 それは過酷な重労働であった。

 生臭くてマズいだけではない。

 肉が硬くて噛みちぎるのが大変なのだ。


 真一の周囲は上下左右、どちらの方向も硬い肉に覆われていた。

 内蔵みたいな柔らかい場所ではなく、筋肉系の身がギッシリ詰まった肉である。

 ここまで深く突き抜けてくるまでには、それなりに柔らかい部位を通過してきたはずだ。

 けれどもそんな通り道も何トンもの巨体の自重と圧力に押しつぶされ、完全に塞がってしまっていた。

 方向転換すらままならない真一は、ひたすら前に食べ進むしかないのだ。


 とはいえ相手はレベルが一気に3つ上がるほどの格上モンスター。

 たぶん本来ならザコ真一では、文字通り『歯が立たない』はずの強敵なのだ。

 それなのに何とか食べ進められているのは、転生チート能力の副作用で真一の防御力が極大になっているから。

 そのおかげでメチャクチャ硬いはずのモンスターの肉よりも、真一の歯の方がさらに硬いのだ。


 おかげで硬い肉に歯が通るのだが、問題は噛みちぎるための力。

 レベル4の真一のザコ筋肉では、全力で食いしばらないと噛み切れないのだ。

 咀嚼するのもアゴが疲れるし、本当に辛い。

 ほとんど噛み砕けずに塊のままの肉を無理やり飲み込んで行く。

 そうして何とか10センチほど食べ進めたのだが、もはやアゴが限界だった。

 しかも必要以上に噛みまくったせいで、満腹になるのも早い。


「あ゛〜っ、もう無理。お腹いっぱい」


 ついにギブアップした真一だった。

 少しだけ先に進んだものの、脱出は遠い。

 上空から見た感じ、この巨大モンスターは横幅3〜4メートルくらいあった。

 それだけ掘り進めるにはあと何食必要なことか、、、

 しかも真っ暗な中では進む方向も運任せだ。

 間違って体長方向に進んでいたら、さらに何倍もの距離が必要になる。


 だが本当に致命的な問題は、そこではなかった。


 グギュウウウっ!


 真一の腹が鳴る。

 腹がふくれたら、今度はどうなるか?

 そう、別の生理現象が発生するのである。


「おなかいたい、、、」


 当然の帰結である。


 異世界トイレ問題勃発。


 真一の人生最大の危機であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。