↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/576

2.5.18 生首は勇者である(※ただし下級)

 ステータス画面に表示されている項目がいくつか増えていた。

 きっとレベルアップしたおかげなのだろう。

 けれども真一がまず気になったのは、自分の生死に関わること。

 バッドステータスに『窒息』が増えている件だ。

 とはいえその理由は少し考えてみればすぐに分かる。


 レベルアップしたということは、あの巨大モンスターを倒したということ。

 どうやら真一の攻撃は巨大モンスターの身体を奥深くまで貫いたらしい。

 そして真一の頭はモンスターの体内で密閉状態になったのだ。

 どうやらファンタジーあるあるな感じで死体が消滅することはなかったみたいだ。

 そしてあれだけの巨体にのしかかられたら、外から空気が入ってこなくなる。

 息ができなくなって窒息するのは当然の話であった。


 そもそも真一が息苦しく感じている時点でただ事ではない。

 感じる苦痛が100分の1なのにこれだけ息苦しいのだから、実際には気が狂うほどの苦しさのはずである。

 本来ならとっくに窒息死しているところだ。


 とはいえ今の真一にとっては、1秒毎のスリップダメージが0.021から0.022に増えただけのことである。

 ヒーラーさんのサステナヒールが効いている以上、HP自動回復の効果の方がはるかに上回っている。

 慌てる必要はどこにもなかった。


 それよりも気になるのはHPの方だ。

 なんとレベルが一気に3つも上がっている。

 おかげで最大HPも20から35と2倍近いアップだ。

 一匹倒しただけでこれだけの『経験値?』をゲットできたのだ。

 この巨大四足獣モンスターは、恐ろしく格上の強力な個体だったに違いない。

 その身体を軽く貫通したのだから、真一の防御力はこの異世界でも最上位クラスと考えて良さそうだ。


 ともかく真一のHPは35まで増えた。

 今までは20しかなかったので、スリップダメージでHPが全損するまで約15分。

 それが、、、


 えーと、計算すると、 、 、

 27分くらい?

 うーん、微妙〜


 最大MPも同じくらい増えて、ミニマムヒールを使える回数も10回から17回に増えている。

 けれどもこちらはそれ以前にMPがほとんど回復していない。

 ヒーラーさんに助けてもらう前の時点で、一度ほぼ使い切って、、

 そこからかなり時間が経過したのに3しか増えていなかった。

 遊覧飛行とかで2時間以上ほとんど休んでいたはずなのにコレである。

 MPの時間回復はかなり微々たるもののようだ。


 このままだとやはり、ヒーラーさんのサステナヒールが切れた時点で命が危ない。

 サステナヒールの持続時間は7000秒ちょい。

 ヒーラーさんが約2時間おきにサステナヒールをかけてくれない限りは、真一は生き続けることはできない。

 だけど、、、


 ヒーラーさん、きっと今晩寝るよな、、、?


 そしてヒーラーさんが寝落ちしたら、真一は死ぬことになる。

 どうやら真一は今晩を乗り越えることすら難しそうだ。


「今夜が山田な、、、」


 自嘲げに呟く真一。

 その声は巨大モンスターの巨体に圧し潰されて消えていった。


 とはいえ先のことを考えてもしかたない。

 それよりも気になるのはステータス画面に追加された項目だ。

 『種族』、『職業』、『称号』の3つの表示が増えていた。

 レベルが上がったから、見られるステータスが増えたとかだろうか。


 で、まず『職業』が『なし』。


 「無職である!

  異世界まで来て、無職である!!」


 と1人ボケてみた真一だったが、これは単に何の登録手続きもしてないからだろうか?

 異世界モノのお約束で、冒険者ギルドとかに行って、謎テクノロジー水晶なんかで職業選択をするのかもしれない。


 それよりもツッコミどころ満載なのが『種族』だ。

 どうやら真一は普通の『人間』とは違うようだ。

 真一の『種族』は『異世界勇者』。


「俺って勇者だったのかよ!!」


 いま初めて明かされる真実であった。

 異世界召喚時のガイダンスを途中で打ち切られたせいで、全く聞いてない話である。

 まぁ魔王を倒す者なんだから、勇者でも変じゃないのかもしれない。

 ただし、、、


「そして下級ってなんだよ!!」


 わざわざ下級勇者って書くとか、ただの嫌がらせに近いわ!


 それにしても真一が下級勇者ということは、他に中級や上級の勇者もいるのだろうか?

 あの邪神の口ぶりからして、どうもこの異世界に送り込まれた地球人はたくさんいるっぽいのだ。

 ちなみに真一の中では、あのインチキ神さまの少年は『邪神』で確定していた。


 それよりこの先もずっと下級勇者なのかな?

 それともレベルを上げれば、中級や上級に上がるのか?


 そのあたりも気になる真一だったが、今考えてもしかたないことである。

 そして最後に最も気になるのが『称号』の項目だ。

 ますますゲームっぽい設定だなと感じる真一。

 案外、この異世界は実際にあの邪神がゲームとして創り出した世界なのかもしれない。

 その根拠となるのが真一が持つ1つ目の称号、『創世神の召喚兵』である。


 創世神ってのは間違いなくあの邪神のことだろう。

 つまりこの異世界を創り上げたのはあの邪神なんだと予想がつく。

 そして真一はその創世神に召喚された『一兵士』というわけだ。

 恐らくこの称号はこの異世界に召喚された時点で、最初から与えられているものなんじゃないだろうか。

 きっと他にもいると思われる転生者たちも、みんな持っていると予測できる。

 対して真一にはもう1つ獲得している称号、『ジャイアントキラー』があった。


 これって今回この巨大モンスターを倒したおかげでゲットできたんだよな?


 たぶんレベルが自分より凄く上とか、ステータスが何倍もある相手を倒すと得られる!みたいな獲得条件なのだろう。

 ただしステータス画面をどれだけ眺めてみても、それ以上の説明は出てこない。

 ウンウン念じたり、アレコレ唱えたり、さんざんやってみてもダメだった。

 ステータス画面を触って操作するのかもしれないが、真一には指どころか首から下は何もないのだ。

 おかげで称号の獲得条件も、その効果も不明である。


 まぁこれ以上は悩んでみてもしょうがない。

 それに方向性は間違っていないのだ。

 真一がやるべきことは、こうやってモンスターを倒してレベルを上げていくことである。

 そのためにまずは、、、


「ここから脱出しないと、、、」


 ということで巨体モンスターの死体の中から脱出しようと、足掻いてみる真一。

 だが事態は想定よりも遥かに絶望的であった。

 なんせ全く身動きできないのだ。

 想像以上にモンスターの死体が重い。

 世界最強クラスの防御力でいい気になっていたが、真一はレベル4しかないザコなのである。

 真一が優れているのは防御力だけで、腕力や攻撃力はレベル通りの非力さだった。


 レベル4の人間がこの異世界でどれくらいのポジションなのかは分からない。

 けれども感覚的には大したことはなさそうである。

 実は真一はレベルアップしたおかげで、力が強くなったような手応えを感じていた。

 異世界のどこかにある全身のパーツを動かしてみた感触から、地球にいた頃よりも全身が強靭になっている気がするのだ。

 ただしそれは岩を砕きビルを飛び越えるような、超人的なレベルのものではない。

 体感的には、、、


「オリンピック出場できる、、、いや、選考会に出られるかどうかってトコか、、、」


 少なくとも100メートルを10秒で走ったり、100キロのバーベルを持ち上げたりできる気はしない。

 つまりこの異世界の凶悪モンスターからみれば、完全にミジンコレベルであった。

 

 そんなひ弱な腕力でトラックよりデカいモンスターの巨体を持ち上げるなど不可能に決まっている。

 ましてや今の真一は生首だけ。

 脱出などできるはずもない。

 このままでは今晩を乗り切ることもできず、死ぬことになるだろうというのに。


 真一はとんでもない袋小路に、自分から突っ込んでしまったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。