7. 海神妃
第四章 『海女神の娘たち編』
ここ最近の私の日課といえば、
一に、女神のお祈りを唱えること
二に、海魔族三従士であるルビ、パル、メノウと一緒に家事や散歩、読書をすること
そして、三に、メリドゥーシャを筆頭としたアランフォルスの側妃たちと、日々情報交換という名のお茶会をすること
である。
「メリドゥーシャ、今日はルビたちと一緒にお菓子を作る約束をしてるの。
お茶会には行けないかもしれないって、他の側妃の方たちにも伝えてくれる?」
「あら、それはだめよリリアナ。皆、貴女に会うためにわざわざ中庭に集まっているんだから。少しでも顔をお出しなさい」
「でも、だいぶ日が傾いてからの参加になっちゃうけど、いいの?」
「リリアナはご正妃なのだから、わたくしたちに遠慮なんてするべきではないわ。
でも、そうね。貴女の都合が付きそうになったら従者をわたくしたちの所まで寄越してちょうだい」
「ルビ、パル、メノウ。今日も少しお使い頼まれてくれたりする……?」
『メガミ、モチロン マカセテ』
『オレガ スグニ イッテヤル』
『……イッテヤル』
私のお使いは嬉々として頼まれてくれる優しい三従士たち。
「いつもありがとう」
申し訳ないと思いつつ、その代わりに本日のお菓子作りでは三人が特に大好きなものばかりを作ろうと鼻息を荒くする。
「あ! お菓子、良かったらメリドゥーシャにもお裾分けさせてね」
「ふふ、ありがとう。陸上のお菓子は美しいし美味だけれど、食べすぎてしまうのがたまに傷よ」
「上品を極めてるようなメリドゥーシャにそう言ってもらえると自信出る」
「なあに、それ」
と、メリドゥーシャは口に手を添えてくすくすと笑う。
以前とは比べ物にならないくらいのこの穏やかな関係に、こちらも自然と笑みが溢れる。
女神の愛し子として海底で暮らす中、私は本当にたくさんの素敵な女性たちに出会ってきた。
それは、お姉さん的存在だったり侍女として側にいてくれたりとさまざまだったけれど、
メリドゥーシャのように完全なる友人として対等にお付き合いの出来る女性には、実は初めて出会ったかもしれない。
「今後ともよろしくお願いします、メリドゥーシャ」
「もう、だからなあに」
堪えきれなくなった、とばかりにメリドゥーシャが声を上げて笑い出した。
「随分と楽し気に話しておるな」
するとそこで、私の自室扉が一人でに開いた。
「……アランフォルス様」
今日も監視、という名の訪問のために、アランフォルスとノワルがやって来たのだ。
「入る時はノックをして下さいっていつも言ってるのに。
万が一私たちが着替えでもしていたらどうするつもりですか?」
「どうするも何も、其方もメリドゥーシャも我が妃たちなのだから、何の問題もあるまい」
……いや、あなたのお妃はメリドゥーシャだけでしょうと、声を大にして物申したい。
すると、私たちのやり取りを隣で見ていたメリドゥーシャが、
「アランフォルス様。女性のお部屋を訪ねる際はちゃんとお伺いを立てて下さいな。
しかも、貴方様は常にノワルを引き連れてリリアナのお部屋にご訪問されましょう?
ご正妃のお着替え姿がその者の目に入ったら一体どうなさるおつもりですの?」
と、とても艶っぽい笑みをアランフォルスへと向けた。
「ふむ、確かにその通りかの?
リリアナ、すまなかった。今後は必ず、其方の了承を得てから部屋に入るとしよう」
「そうしてやって下さいまし」
……なるほど。さすがのアランフォルスも愛妻には甘いらしい。
「メリドゥーシャ、ありがとう。もう本当にに助かる」
「お安いご用よ」
メリドゥーシャが少し茶目っ気に微笑んだ。
「では、我が妃らの麗しい姿も確認できたところで、我ら男どもは暇しようかの。行くぞ、ノワル」
「……はい」
その一言以外、終始無言だったノワル。
私は再びメリドゥーシャの方をちらりと見やった。
彼女はアランフォルスを見送るために、彼の腕に自身のものを絡めながら、扉付近へと移動していく。
その様子を視界に捉えつつも、私はノワルの元へと歩みを寄せた。
「あの、ノワル」
「リリアナ女神様。いかがされましたか?」
ノワルは立ち止まり、こちらを振り返った。
彼と二人だけで会話出来る機会はそうない。
……が、もう部屋を後にするノワルとほんの数十秒で成り立つ会話の種も、私は持ち合わせていない……
なので、こうなったらお菓子の力を借りてしまおうと思った。
「あ、えっと。後でルビたちとお菓子を作る約束してるの。
たくさん作る予定だから、良かったらアランフォルス様とノワルにもお届けさせてね」
「……いえ、僕は甘い物が好きではないので」
…………なかなかに即答。実に居た堪れない。
メリドゥーシャのこともあるし、二人に共通の話題が作れたら、とまた余計なお節介心を出してしまったのがいけなかったのか。
「……そっか、ごめんね、」
「でも甘くない物なら受け付けますよ」
言葉が重なって、私は思わずノワルを見上げた。
「へ……?」
「甘い物は苦手ですが、それ以外は食します」
「! ほんと? 今日ルビたちとはみたらし団子も作る予定なの。それなら甘くないお醤油味だから、ノワルも大丈夫だと思う」
「ミ、ミタラシ?」
「陸のお菓子だよ。曾おばあちゃんが好きだったの」
「……それは興味深いですね」
「海底では初めて作るからちょっと不安だけどね。でも、頑張って美味しく作るよ」
「初めて……。では、こちらではまだ誰も口にしたことがないのですか?」
「? うん、そうだけど……
あ、もしかして私がノワルを実験台にしようって企んでるとでも思ってる?」
「おや、違うのですか?」
「そんなことしないよ……」
「いいえ、是非なりますよ、実験台に。
なので、初めてそのミタラシとやらを食させるのは僕にしておいて下さい」
「うっ、なかなかのプレッシャー……」
「楽しみにしています」
ニヤリと笑うノワルにつられて、私も眉をハの字にして苦笑した。
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「メリドゥーシャよ。其方も気付いておるのだろう?」
「何のことでございましょう?」
アランフォルスはリリィと談笑しているノワルへと目を向けている。
「其方の "弟君" のことだ」
「はて、弟とはどちらのお方でして?」
「ふん、相変わらずだのう。弟と友人の恋路を見守るつもりはないのか?」
「……リリアナには想い人がいるのでしょう? それを止めさせてまで、身内に引き入れたいなど浅ましいことは思いませんわ」
「そうか、それは残念だ。ノワルがリリアナの心を慰めてくれるのなら、"あの男" のことを存分にいたぶってやれるというに」
「……何を、なさるおつもりですの?」
「なに、我が寵姫に聞かせるような話ではない」
そう話すアランフォルスを仰ぎつつも、メリドゥーシャは彼の腕へとさらに身体を密着させる。
「まあ、水臭いですわ、アランフォルス様。
何かございましたら、まずはわたくしめにお話し下さいな」
「 何かある場合はそうしようかの。
其方は2000年以上もの間、余に忠実に仕えてくれておるからな」
アランフォルスはメリドゥーシャの額に軽く口付けた後、彼女の腕を解いた。
そして「今夜は其方の部屋へ行く」と言いながら、呼び寄せたノワルと共に部屋を出て行った。
「2000年以上 "お慕い" しているからこそ、ですわよ、アランフォルス様。
……でも。愛に長いも短いもございません」
メリドゥーシャはほんの少しばかり眉を寄せながら、愛する夫の背中を見送ったのだった。
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「海底地図を確認すると、この辺りがカリュブディスの本城付近か」
「そろそろ陸側にも連絡しておいた方がいいかもね。ギルってば海上でもう十日も待ちぼうけくらってるんだから」
「でも、万が一我々の動きが相手に悟られると余分な戦闘を強いられることになる。今回も戦うことが目的じゃないからね」
シェリ、ユーリ、そしてナプティムウトの三人は、薄暗い海中で地図を広げながら再度議論していた。
「でもさ、思ったんだけど本城付近の割には海水が澄んでるよね。別城の時は酷い汚濁水だったのにさ」
「カリュブディス本人が毎日浄化を行なっているからだろうね。
こんな、有能な戦闘鮫魚で移動しても十日以上かかるような距離範囲にまで祝福を飛ばせるなんて、並の力技じゃない」
シェリはナプティムウトの言葉を黙って聞いていた。己の拳には力がこもっている。
「……だが、これではっきりした。カリュブディスにも不可能なことがあるということがな」
「あ、それ僕も気付いた。
"ヒーリング" の効果でしょ?」
「ヒーリング効果?」
「はい。宰相様。
えーっと、例えばリヴァイアサンを討伐した時のことって覚えてます?
あの子の祝福を受けてたら急に身体が軽くなって、バツグンに動きやすくなったでじゃないですか」
「そうだったね。それは騎兵団の皆が感じていたことだ」
「ずばり! それがヒーリング効果ですよ。
だって、今は……カリュブディスに変わってからは、確かに海中が澄んでて綺麗だけど、何となく魚たちが生き生きしてるかな? くらいにしか思わないでしょ?
でも、リリィが授けてくれる祝福と浄化には、癒し、つまりリラックスの効果が含まれるってことです」
「……なるほど、それは一理あるね。
リリアナ様がお披露目時に王都広場から民に向けて祝福を飛ばした時も、新人の海人騎兵たちに授けて下さった時も、もちろんそれ以外のさまざまな場面で、本来の何倍にも勝る力がみなぎる感覚があった」
「その通りです兄上。それがカリュブディスにはない、リリィだけが持てる神力の派生効果です」
ヒーリングだけではない。
リリィはその神力を、さまざまな機転を利かしながら、祝福を、浄化を、彼女自身ではない他の者たちのために捧げてきた。
「リリィが、心から我々のことを愛してくれていたからこそ発揮された効能かと。
俺はそのように思います」
シェリは苦しげに眉をひそめ、そう言葉にした。
……するとまさにその時。
『……ナルホド。ソレハ タイヘンニ キョウミブカイオハナシ デスコト』
「?!」
『ラドシェリム・ポセイドンオウジハ ドノ トノガタ カシラ?』
突然上方から、低くしわがれた声が聞こえてきた。
騎兵団員たちはすぐさま手中に獲物を創り上げ、それを構えた。
海人騎兵団の頭上に姿を現したのは、
「なっ……! 海魔族か?!」
「いつの間に我々の上空に!」
魚のような顔面に土色の身体を持つ、海魔族と呼ばれる者たちが数名。
彼らは大魚に跨り、騎兵団員たちの上方をゆっくりと旋回している。
『ラドシェリムオウジハ ドコ?』
「……俺がマーレデアム王国第二王子、ラドシェリム・ポセイドンだ。お前は一体何者だ」
シェリは腕を曲げたまま少し片手を上げる。すると、海人騎兵たちが海魔族らに向けていた武器をゆっくりと下方へと下ろした。
『ワタクシハ コノモノノ コエヲ カリテ ハナシテイルノ。
カリュブディス カッカノ ソクヒノヒトリ、 ト イエバ ワカルカシラ』
「側妃……? 海神の妃が俺に何のようだ。
まさか、リリィに関係していることではあるまいな」
『ソノ マサカヨ。イマ ゴセイヒハ ワタクシト トモニ イルノ』
「! 貴様、リリィに何をするつもりだ!」
『ソレハ ゴジブンノ メデ タシカメナサイナ。イマナラ マダ ゴセイヒニ アエルカモ シレナクッテヨ。
アナタガ ヒトリデ ワタクシノモトニ クルノナラバ』
海魔族たちは相変わらず、上方を浮遊しながら騎兵団員たちを見下ろしている。
「な、何言ってんだこいつ……!
団長、こんなの罠に決まってます!」
「その通りです! こいつらを捕らえて本城の在処を吐かせましょう!」
騎兵団員たちは再び武器を構え、戦闘の合図を待っている。
シェリは、自分は "側妃" だと言う海魔族をじっと見据えた。
……確かに、罠かもしれない。
しかし、これがチャンスになる可能性がゼロではない。この機会を逃すと確実に、自身たちは真正面から本城へと門を叩くのみとなる。
この誘いに乗って、万が一。億が一にでも、リリィを取り戻"鍵" を探り当てることが出来るのならば。
「……海神妃よ。一つ言っておくが、俺は人質など、取引きに値する者ではないぞ。
俺がお前たちに捕らわれようが、殺されようが何も変わらない。
我ら海人騎兵団は女神の愛し子をマーレデアム王国に取り戻すまで、何度でもカリュブディスの本城を目指す」
『フン。アナタノ クビナド イラナイワ。
アノゴセイヒヲ トリコニシタ カイジンゾクノ オウジニ キョウミガ アルダケ』
そう話す海魔族のことを、シェリは眉をひそめながら睨める。
この者の声を借りて話しているというのならば、少なくとも海神の妃とやらはこの場にはいないということ。嘘か誠かは、直接本人に会って確かめる他ない。
しかも妃は、シェリとリリィが恋仲だということを知った上で、シェリの出方を待っているのだ。
「……そうか。では俺を、貴様の元へ案内しろ。
皆の者、すまんがこの辺りで一旦待機を頼む。俺はこの海魔族たちと共に海神妃とやらの元へ行く。
もし、二日経っても俺が戻らなければ迷わず本城へと進め。リリアナ様を奪還し、必ず
マーレデアム王国へとお連れしろ。
ユーリ、団員たちを頼んだぞ。兄上、万一の時は、どうか兄上が王位に」
シェリは上方へと視線を預けたまま、そう言葉を放った。
「……いい加減にしなよ。シェリが死んだら元も子もないだろ。
君のいないマーレデアム王国にリリィを連れ帰って、あの子が喜ぶとでも思ってんの?」
「シェリ、私は王位継承権を500年前に放棄している身だよ。父の跡を継ぐことは不可能だし、もし君が死ぬ覚悟でそんなことを言っているのなら、何が何でも行かせるわけにはいかない」
ユーリとナプティムウトが武器を構え、シェリの前へと立った。
「……残念ながら、俺は死ぬつもりなど毛頭ない。リリィを未亡人にはしないし、他の男の妻にくれてやるつもりもない。
ユーリに頼みたいのはあくまで、俺が不在中の騎兵団の指揮だ。
それと兄上には万一。万一のことを言ったまでです。今さら王位を押し付けるつもりなどもちろんありませんのでどうかご安心を」
シェリはユーリとナプティムウトの方へと眼を移し、いつものようにニヤリと余裕の笑みを向ける。
「……ったくシェリは。まだ正式に結婚してないんだし、リリィが未亡人呼ばわりされる筋合いなんてないと思うけど?
まあ、君が死んだら僕が真っ先にあの子の夫候補に名乗りを上げるから心配しないで」
「シェリ。民を守れる次王は君しかいないし、その次王の手綱をしっかりと握れるのは
リリアナ様しかいないんだから、それをちゃんと念頭に置いておきなさい。
シェリの代わりも、リリアナ様の代わりも、この世には一人としていないのだから」
「心得ております、兄上。あとユーリ、お前はもう口を閉じろ」
ナプティムウトはやれやれ、と言うようにため息をつき、ユーリはシェリ向かってベーっと舌を出している。
「ふう。では皆の者、行ってくる。後で必ず落ち合おう」
騎兵団員たちが不安そうな面持ちをしつつもしかと頷いたのを見届けた後、シェリはホメロスに跨って、海魔族たちと共に深い、深い、深海の暗中へと消えていった。
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「ねえメリドゥーシャ、本当に大丈夫なの?三従士とメリドゥーシャと、私の五人だけで遠出のピクニックなんて」
今日は何故だか、珍しく朝からソワソワしていたメリドゥーシャに誘われ、私たちはお弁当を持って少し遠出をしている。
「アランフォルス様やノワルにバレたら、後でものすごく怒られるんじゃない?」
「心配しすぎよ、リリアナ。わたくしたち側妃は基本、夜まで各自自由に過ごしているんだもの。
部屋にいるのも良し、人間の男を狩りに海上へ行くのも良し。
リリアナだって、アランフォルス様からの朝のご訪問はすでに終えているのだし。
最近貴女をお尋ねになるのはその一回だけでしょう?」
「か、狩り?」と聞き返したいような返したくないような、ちょっと物騒な単語が聞こえてしまったが、きっとメリドゥーシャの冗談だと思いたい。
「それに万が一ご訪問があっても、リリアナの許可なしにお部屋に入ることはご法度になったのだから大丈夫よ」
メリドゥーシャはその美しい青い瞳を片方だけ瞑り、私にウインクを飛ばしてくる。
朝以外にアランフォルスが訪ねてきた場合は、メリドゥーシャの従者である海魔族に私の代返を頼んである。
が、どう考えても、あの海神たちを欺けるはずなんてないと思う……
「そんな心配そうな顔しなくて良いの。わたくしに任せなさいな。ほら、行くわよ」
足がなく、尾びれを使って行動するメリドゥーシャに合わせ、私も今日は徒歩ではなく、パルの背中に乗せてもらい海中を移動する。
私たちの前をスイスイと優雅に泳いでいくメリドゥーシャにさてはてと首を傾げつつも、私たちは後を付いて行った。
結構な長距離を皆でゾロゾロと移動した結果、私たちは海底山脈のような巨大な山々が連なっている場所へとたどり着いた。
その山たちには大きめの穴が所々に空いていて、それはまるで洞窟集合体のよう。
「メリドゥーシャ、目的地ってここ?」
「ええ、そうよ。今日はこの洞窟でランチしましょう」
「え?! ほ、ほんとに……?
穴の中、ものすごく薄暗いけどライトとかってあるの?」
「ランプならルビが持っているはずよ。この子はいつでも用意周到だから。
ここはアランフォルス様の神力が他よりも充てがわれていないから、少し薄暗く感じるのよ。
この辺りにはあまり生物がいないの。だから彼は、ここよりも他の場所へ重点的に祝福を飛ばしていらっしゃるの。
でも、空気だけはちゃんと澄んでいるでしょう?」
確かに、どこかおどろおどろしい雰囲気はあるが、以前の本城や別城のように、空気が薄いわけでも海水が澱んでいるというわけでもなさそうだ。
全ての海域が平等に、という理想論ではなく、あくまで合理的に祝福を施しているのが何ともアランフォルスらしい。
「リリアナと三従士はここでピクニックの準備をしておいてちょうだい」
洞窟穴の一つに私たちが入ったのを確認すると、何故だがメリドゥーシャは再び穴の外へと出やる。
「あれ? メリドゥーシャはどこへ行くの?」
「やあね、ちょっと野暮用よ。"男" に会ってくるわ」
と、彼女はとても艶しく舌なめずりをした。
「…………ちょっと待って。せっかくこれからみんなでランチなんだから、に、人間食べないでね……?」
「さあ?どうかしらね」
青ざめている私を他所に、メリドゥーシャはどこか楽しげに笑みながら、一人洞窟を離れどこかへと行ってしまった。
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洞窟を離れしばし泳ぎ進むと、指定していた場所にはすでに、従者の海魔族たちが来ていた。
彼らはメリドゥーシャの姿を見つけると、すぐさまその場に跪く。
「随分と到着が早かったんじゃなくって? 海人族の王子様」
「……貴様が海神の妃か」
海魔族たちの後方には、ホメロスに跨り、手中に長槍を握るシェリの姿が在った。




