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エピローグ



「ねえ、ギル。

グッセンスタシューン王国に、マーレデアム王国やテティス様のことを伝えたのって、結局は彼女自身だったんだよね?」



書物をパラパラとめくりつつ、私はギルにそう問いかける。



ここはバルバロス号の客間。

今日は私が作成した学校教材のサンプルを届けにやって来た。


ギルが教材のチェックをしている間、私は向かいの席で書物を読ませてもらっている。



彼は手元に目を向けながら、私の質問に答えてくれた。



「だろうな。海人族の文字を指導したのもテティスだろ。記録したのは旦那の部下あたりかもしれねえが」


「そっか…… 。でも、海魔のことを記録したのはきっと……」


「まあ、俺の方の先祖だろうな」


「……ほんと、不思議な縁で繋がってたんだね、私たちって」


「だからずっとそう言ってただろうが。

なのになんで俺を選ばないかねえ」


「あの、ギル……

この客間にいるのは私たちだけじゃないの、忘れてない?」



と言った途端、ギルと私が向かい合う机の上に、ゆらりと黒い影が落ちる。


……その正体というのはもちろん。

 



「で、誰が誰を選ぶと言う話だったか?


答えは明確。リリィが愛しているのは俺だからだ」


「けっ。こんな横暴な男のどこがいいんだか。リリアナ、男の趣味が悪すぎるぜ」


「何だとギルストロン」


「やるかラドシェリム」



影の正体がシェリというもの、もはやお約束。

二人の間に火花が散るのも、もはや定番。



「そっ、それにしてもあの国王様って結局は何者だったの?

何だかグッセンスタシューン王国と愛し子にすごく執着してたっていうか」



そして、慌てて話題を変える私。



「あの愚王一族は、俺の先祖に仕えていた奴らの子孫だ」


「……部下の一族ってこと?」


「そうだ。取り分け、近しい側近。マーレデアム王国の守護者みてえな立ち位置の奴ら、って言や分かるか?


あれほどに自分たちの国王と祖国に尽くしたってのに、その国王が俺たちの先祖に排除された後は、祖国の民らに役立たずの "焼印" を押された。

で、外国へ逃亡せざるを得なかった、とか、そんな話だ。


それで俺の一族と祖国だった隣国を死ぬほど恨んでて、隣国が喉から手が出るほどに欲しがった女神の国を、1900年の時を経て掌握してやった、て感じだな。

まあ、一種の復讐みたいなもんだ。



俺に言わせてみれば、「くだらねえ」の一言だがな」



約2000年の時を経て、グッセンスタシューンへと帰ってきた隣国国王の側近一族たち。


グッセンスタシューン王国の頂に立つことこそ、自身たちを排除したギルの一族、そして祖国に向ける最大の報復になるのだと、そう信じていたのか。



2000年も昔のことを未だそんなに恨んだりするものなのかとは、もう今となっては疑問に思わない。



数千年の時を超えてもなお、私たちは繋がっているのだから。



「テティス様が書物を残したのはきっと、後世のグッセンスタシューン王国の人たちに、彼女自身のことを知ってもらいたかったからなんだね」


「まあな。それに、テティス自身も結局はあの海底王国のことを忘れきれなかったんだろ。


……海に残してきた自分の国のことも、多少は心配してたんじゃねえか?」



ギルは視線をチラリと上げる。

私の後方には、シェリが控えている。



「……そうだね。じゃあテティス様の願いは、私が受け継がなくちゃ」


「今後はお前が、マーレデアム王国を守ってくってか?」



ギルが頬杖をつきながらそう言った。



私はゆっくりと立ち上がり、後ろに控えていたシェリの手を取ると、ギルのもとまで移動する。



「ギル。テティス様が守りたかったのは、こういう姿だと思うよ」



今度はギルを立たせ、私は彼の手のひらにシェリのそれを合わせた。


"握手" 、という形で。


 


「今はまだ無理でも、いつか王国民同士、手を取り合える日が来るといいね」



私は客間扉の方へと眼を向ける。


開け放たれたドアの向こうに広がっているのは、テティスの愛した広大な海。


海面には雲一つない青空が映り込む。



海と地上が織りなす景色というものは、きっと昔も今も変わらない。

変わらず、美しい。




「……ほんと、リリアナには敵わねえな。

だとよ、ラドシェリム」


「…………」


「よーし、ダンマリか。リリアナ、今からでも遅くはねえ。 こんな冷てえ男はほっといて、俺と……って、


いでででででで!!」



ギルの濁ったような声に驚いて、私が彼らへと視線を戻すと、どうやらシェリが握手の手を力一杯握り込んでいるようだった。



「てんめえ! 痛えぞ、この馬鹿力野郎!」


「ふん。貴様が貧弱なだけだ」


「ああん?! てかいつまでこうやってるつもりだ! マジで痛えから離しやがれっ!」


「断る」




またまた始まってしまった小競り合い。

そして、それに苦笑する私。


いや、苦笑というより、



「シェリとギルって、何やかんや言って意外と相性良いよね。 ふふっ、面白い」



少々声に出して笑ってしまった。



「「良くない!!面白くない!!」」



おっと、今度は揃っている。




海の王子と陸の国王。


今後、二人はどのような関係を築いていくのだろうか。



未来が楽しみになってきた。





本日もご訪問いただきましてありがとうございます!


15話の後書き後、少し今後の章のお話をいたしましたが、詳細は活動報告にも記しますので、またご一読いただけると嬉しいです^^


今後ともどうぞよろしくお願いいたします!

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