9. 異種族の恋人
第二章 『海賊編』
「リリアナさまー、ボールそっちにいったよー!」
「了解!」
「あ、リリアナさま危ない!!」
「えっ?! わわっ……!」
私の頭にボールが直撃するかと思いきや……
「……っと。 全く、お前たち。
リリアナ様はあまり球技に慣れておられないのだ。ちゃんと加減をして差し上げろ」
それは間一髪、シェリの手によって回避された。
ここは王都中央にある大きな公園。
謁見が終了した後、私たちはこの公園を訪れていた。
というのも、王政を学びに来たギルが、この王国の子供たちの様子も是非見学したいと望んだため。
公園には運良く子供たちがたくさん集まっていた。
が、彼らは私たちの姿を見つけるや否や、目をキラキラさせて共に遊ぶことを望んできたのだ。
なので、現在この公園では彼らとシェリ、私によるドッジボール大会のようなことが行われていた。
「ありがとう、シェリ」
「平気か?」
「リリアナさまごめんね……!
ラドシェリムでんか、今度はリリアナさまと同じチームになりたい。それでオレが、リリアナさまのこと守る!」
「おっとカイリ、 俺のボールは強いがいけるか?」
「だ、大丈夫っ!」
シェリとカイリの微笑ましいやり取りに、思わず笑顔になる。
しかしそこへ、
「カイリ、次はわたしたちの番!リリアナさまはこっちでおままごとするんだから。
ね?リリアナさま」
と、カイリと同じ歳ほどの女の子たちが数人、私の元へと駆けてくる。
「そうだったね。あ、良かったらカイリも一緒にどう? おままごと」
「おままごと…… オレはラドシェリムでんかにボールの特訓してもらうからいいー」
彼をままごと遊びに誘ってみたが、やはりボール遊びの方が良い様子。
「じゃあシェリ、男の子たちのことは任せてもいい?」
「ああ、分かった」
そんなわけで、私はシェリたちとはいったん分かれ、次は女の子たちのグループに混ざった。
「リリアナさまはお母さん役ね!」
「はーい。
よし、じゃあみんな。ママはご飯を作ろうかな?
あ、でもデザート作るのは、お姉ちゃんたちにお願いしてもいい?」
「はーいママ!」
「ママ、 妹役のわたしたちは?」
「じゃあママのご飯作りのお手伝いをしてくれる?」
「はーいっ!」
だが、私たちがおままごとを初めてすぐに。
「美しい妻に可愛い娘たち。 最高の眺めだな。俺もそのままごとやらに入れてくれよ」
とある男性がそう声をかけてきた。
私はヒヤリと汗を垂らす。
「ちょ、ちょっと!バレたらどうするの……!」
「マントで全身隠してるし大丈夫だろ」
「 ナプティムウト様との約束は?
それに今の "あなた" は、明らかに 怪しい人なんだよ」
私は小声でそう返しつつ、彼を見上げた。
その正体とは言わずもがな、ギル。
彼は姿を見せないよう、今の今まで公園の物陰に隠れていたはずなのだが、何故だか今になって、急に私たち女子チームの前へと姿を表した。
全身を覆い隠すフード付きのマント、サングラス、プラス、黒いマスクという、どう見ても不審者な出立ちで。
「未来の夫に向かって何だその言い草は」
「ちょっと! 子供たちは純粋なんだから、そんなこと言ったら本気で信じちゃうでしょう!」
「照れるな照れるな」
「〜〜〜」
小声で争っている私たちを、女の子たちはきょとんとした目で見ている。
「この人、リリアナさまのお友達? おじちゃんもおままごとに入れて欲しいの?」
「お、に、い、さ、ん!
おう、そうだ。俺も入れてくれ。父親役がいねえだろ?」
「! じゃああなたは私たちのパパね!」
「よし決まりだ。
お前たち、ママの手伝いが終わったらパパとお絵描きでもするか? 人形遊びでもいいぞ」
「するーー!」
息をつき、私は思わず苦笑する。
ギルはどうやらここの女の子たちにも人気が出そうだ。
------
「あの大馬鹿ども……」
シェリは眉間に皺を寄せ、顳顬を抑えながらそう言葉を発した。
女子グループが何やら騒がしいと思い視線を向けると、何故だがそこにギルがいたからだ。
「ラドシェリムでんか、リリアナさまたちと一緒に遊んでる人だれ? 友達?」
「全く違うが知っている男だ」
「ふーん。あ、でんか!今度はボールがカーブする投げ方教えて!」
「……ああ、いいぞ」
カイリにそう返事をしたものの、シェリはリリィたちの様子を少しの間見やっていた。
同じ肌の色合いをした若い男女が、子供たちに囲まれて幸せな家庭を築いている。
リリィの本来あるべき姿を見せられた気がして、シェリはは思わず歯をギリ、と鳴らした。
"決して惑わされてはいけない"
兄の言葉が脳内を木霊する。
シェリは一度深呼吸をして首を横に振り、何かを断ち切るようにカイリたちの元へと急いだ。
------
女の子チームは人形遊びを終え、今度はお絵かきに夢中になっている。
そんな彼女たちを横目に、ギルが私へとちょっかいをかけてくる。
「リリアナは子供が好きだなあ」
「ギルだってそうでしょ?」
「まあな。お前との子なら何人いたっていい」
「ギル……何度も言うけど、あなたとは結婚出来ないから」
「ママは強情だなあ」
「?! またそういうこと……!」
「なんだよ。今は夫婦だろ?」
ものすごく物申したいが、子供たちの手前、あまり大きな声で騒ぎ立てることも出来ない。
悶々としている私に、またギルが話しかけてくる。
「リリアナ。お前は気付かねえのか?」
「何を?」
「何故えげつない寿命を持つ海人族が、たった一つの都市に収まっているのか、ってことをだよ」
私はギルの方を見やった。
彼はボール遊びをする男の子たちの様子を眺めている。
「どういうこと?」
「子供が生まれて、孫が生まれて、そうやって子孫は繁栄していく。
なのに、こいつらの人口は溢れかえっていない。
それは何故か分かるか?」
「何故って…… 。確か、愛し子の不在期間が長くって、その間にマーレデアム王国の人口がすごく少なくなってしまった、とか、そういう話?」
「……あいつら。それすらお前らのせいにしてやがるのか?」
「あ、ううん! それは違うよ!
原因は私も詳しく聞けてないけど、愛し子とは直接関係のない要因でそうなったって聞いてるし……
ギルが言いたいのはその話じゃないの?」
「違う。そんな後天的な話じゃねえ。俺が言ってるのは先天的なものだ」
「先天的?」
「今の王家の子息子女。
あの男が350、その兄が600、そのまた姉が…… まあ仮に800歳としよう」
ギルが彼らに言っていた、何故シェリたち三姉弟の年齢差が200以上も離れているのか。
それが先天的な要因と、何か関係があるのだろうか?
「リリアナ。恐らく、海人族は種族的に "子孫を残しにくい" 。
国王は1750年も生きてるってのに、その間に三人しか子が生まれていない。
あの姉王女も、婚姻を結んで400年経つが未だ子がいないんだろう?」
私はそんな話だとは思っておらず、咄嗟に言葉が出なかった。
彼らと親しくなるにつれ、年齢のことなど気に止めなくなっていたのは事実だ。
人口の比率が寿命と見合っていないなんて、そんなこと、考えたこともなかった。
しかし。
「……そんなの、そのご夫婦の事情だってあるでしょう」
「 "民" ならそれでもいい。ガキ生んで家族を増やそうが、夫婦二人で二人三脚しようが、そんなことは俺の知ったことじゃねえ。
でも、あの王女は王家の女だろ? 普通なら子が望まれるはずだ」
「……」
トリンティアが私に子供の話をしたのはそういうことだったのだろうか。
あの時の彼女が傷付いたように見えたのは、それをギルが見抜いたからだというのか。
「仮に、お前があのシェリとかいう王族の男と婚姻を結んだとする。
海人族同士の出生率が低い中、人間のお前が望まれること。
それは一族の子孫を残すことだ」
自分の眼が大きく、大きく開いたのが分かった。
私に望まれていることが、何……?
「俺たち人間は海人族に比べて子が生まれやすい。あいつらよりも、うんと寿命が短いからな。
愛し子のお前が海底ではこいつらと同じように長く生きることになるのは知ってる。
だが、人間ていう事実は変えられねえ。
現に、前愛し子が "王子" の子を腹に宿したのは、婚姻を結んでわずか半年ほどだったと記録にある。
お前は大方、王家やらその側近の息子辺りに言い寄られてるんじゃねえのか?
なんたって愛し子は、2000年に一度しか現れねえ奇跡みたいな "人間の女" だからな。
取り込みたいのは当たり前だ。
海女神の力を継ぐ希少な存在の上、海人族に比べて子を生みやすい。
こんな好条件の女はそうそういねえだろうからな」
全身が、震えた。
ギルは、こう言ったのだろうか。
前愛し子…… つまり、海魔となった愛し子は実はマーレデアム王国王家に嫁いでいて、子供まで宿していた。
……さらに、海人族であり王族であるシェリが私に愛を囁くのは、愛し子と海人族の血を受け継ぐ子を産ませるためだ、と。
「そ、そんなこと、」
「ないと言い切れるか?
あいつらはまだまだお前に知られたくない事実があるみたいだぞ」
「……知られたくないこと?」
「前の愛し子が海魔になった理由だ」
「それはちゃんと、最初に聞いてる。
彼女は陸に戻ろうとして、テティスの怒りを買ってしまったんでしょう?」
「……本当に、反吐が出るな。
そんな嘘八百ばかり言ってリリアナを引き摺り込みやがって」
「嘘……?」
「……貴様。いい加減にしろ」
その時ふと、私たちのもとに黒い影が落ちて来た。
「あ、ラドシェリムでんかだー!」
「でんかたち、ボール遊びは終わり?」
「そうだ。お前たちもそろそろ帰りなさい。
父や母が心配するぞ」
「えーっもうそんな時間? まだ遊びたかった〜! リリアナさまも楽しかった?」
「……」
「リリアナさま? どうかしたのか?」
カイリや女の子たちの呼びかけにハッとなり、私は慌てて笑顔を作る。
「あ、ご、ごめんね。ぼーっとしちゃって。
今日はすっごく楽しかった! みんな、また一緒に遊んでくれる?」
「うん! 絶対また公園に来てね。
あ、お兄さんもまた一緒におままごとしようね! お絵描き上手だったー!」
「おう。またパパがお前たちに絵の描き方を教えてやるからな」
「あははー! パパありがとう!」
子供たちはケラケラと笑いながら、自宅のある方向へと駆け出して行く。
公園には、私たち大人三人だけとなった。
「……さて。
いい加減にするのはてめえだ、よっ」
「!?」
ギルの拳がシェリを目掛けて放たれた。
「シェリ…!」
シェリはそれを頬に受け、少し蹌踉めく。私は慌てて、彼の身体を支えた。
「てめえならこんなの簡単に避けれるだろうが。
敢えて殴られるだけの理由があるなら別だけどな。なあ、海底王国の王子サマ」
「……」
「……ギル。今日はもう帰って」
「そのつもりだ。そろそろ秘薬の効き目も切れる。
お前、あのホメロスとかいう鮫を貸せ。今日は俺一人で船まで帰ってやるよ。
俺を食わねえようせいぜい言い聞かせておけ。
で、時間に余裕が出来たお前がやるべきことはこれだ」
ギルは私たちの方を鋭く見据えた。
「今すぐにリリアナに全てを話しやがれ。
それでリリアナが海底王国から逃げ出そうが軽蔑しようが、甘んじて受けろ。
てめえらにこいつを留める権利も咎める理由も、これっぽっちもねえんだからな。
リリアナをこれ以上海底王国の都合に巻き込むのなら、陸上国全てに、お前たちの存在と海底王国のことを知らしめてやる。
潜水艦やら戦艦やら。陸の技術を舐めんなよ。海底に行く方法なんて、俺たちにはいくらでもあるんだからよ」
遠回しにマーレデアム王国に攻め込む術があることを匂わせるギル。
私は真っ青になりながら言葉を絞り出す。
「ギル……お願い。もうやめて」
「リリアナ、こいつらの言葉に惑わされるんじゃねえぞ。
お前の生き方を、絶対に海人族に決めさせるな」
焦燥の汗が背中を伝う中、彼は私の耳元へと顔を寄せ、さらにこのような言葉を続けていく。
「三日後に答えを聞いてやる。
ただし、今度はお前が俺の元へ来い。
その女神の秘宝を海底から掲げてみろ。それがグッセンスタシューンへの道しるべになる」
ニヤリと笑み、そんな不思議な言葉を残すギル。
その後はすぐにホメロスの背に乗り、上方へと飛び立ってしまったのだった。
「……リリィ、すまん。もう大丈夫だ」
するとシェリがそう切り出し、私から身体を離した。
彼とは目を合わせられないままだったが、私はなんとか言葉を紡いでいく。
「シェリ…… ギルの言ってたことは本当なの?」
「……出生率の低さはあの男の言った通りだ。
でも、俺は其方に子を生んで欲しくて愛を告げたわけではない。それだけは、信じて欲しい。
王家の子供の有無を重視していたのは先代が存命だった時代までだ。姉上はそのせいで、数百年もの間辛い思いをされてきた」
「トリンティア様が…… そうだったの。
じゃあ、海魔の話は? 前の愛し子様が海魔になってしまったのは、彼女が陸へ帰ろうとしたからなんだよね?」
「……」
「シェリ」
「……リリィ、すまない。
前愛し子はテティスの怒りを買って醜い海魔へと変えられたわけではない。
彼女自らが海魔になることを望んだのだ」
今度は勢いよく、視線を上げた。
「自ら……? ど、どうして?!」
「彼女にはどうしても、母国に帰らなねばならない理由があった。
でも、それを阻止したのが、我々の先祖。
先代の国王と一族の者たちだ」
私は半年前のことを思い出す。
あの時の私は、シェリに脅されて一先ずはここに残ることを決めた、という感じだった。
あの時の彼の印象は、"なんて意地悪な人" だった。
「前愛し子には隣国に婚約者がいて、近々輿入れすることが決まっていたそうだ。
そのことを知った先代国王が、父上の兄君に当たる方と早急に婚姻を結ばせた」
……でも、そんな懐かしむような話ではないのは明らかだった。
「そして前愛し子の意に沿わぬ行いを強い、子を宿らせた。
彼女は当時、今のリリィと同じ17の乙女だったそうだ」
「?!」
「子を宿しながら、それでもどうにか王子の元から逃げ出した彼女は陸の母国へと戻った。
しかし、時はすでに遅く、彼女の国はその隣国によって、すでに滅ぼされた後だったようだ」
私は言葉が出なかった。
前愛し子にそんな過去があったなんて。
海魔とは、怪魚を操り海を荒廃させるもの、マーレデアム王国にとって脅威となる魔物。
そういう認識しか持てていなかった。
「俺はテティス女神のことを、どこか伝説上の人物のように思っていた。
だからユーリとの一件があるまで、まさか女神が陸に上がっていたことも、その子孫が愛し子となっていたことも知らなかった。
……前愛し子はあのグッセンスタシューン王国の王女だったのだろう。
婚約者というのは、おそらく隣国の王か王子。
容易に察しがつく。
二人の婚姻で国を平安させようとしたが、王女が姿を眩ましたため、婚約破棄となる。
そして憤慨した隣国がグッセンスタシューンを攻め入ったのだ。
……我が王家が、前愛し子を海底へと引き留めている間に」
私はふ、と全身の力が抜けていくように感じた。
前愛し子は、最後まで祖国を守ろうとしたのだろう。
意に沿わない結婚を強いられ、女神と海人族の血を受け継ぐ子を望まれ、それを成した。
それでも祖国の無事を願い、王女の使命を果たそうと、陸へと帰って行ったのだ。
「その後、前愛し子は再び海へと戻り、我々海人族に報復するため海魔の姿に変化した、と。
……王宮禁室に保管されている秘蔵書の一つに、海魔について書き残された古書がある」
シェリが拳を震わせている。
マーレデアム王国民たちは、海魔の正体が前愛し子だとも、その成り立ちに王族が関わっていたこともきっと知らない。
そして私には、次代の愛し子として海魔を浄化することを望んでいる。
……でも。その海魔になってしまった彼女のことを思うと、私はどうしても、今までと同じように首を縦に振ることが出来なくなってしまった。
「……シェリ、聞いてもいい?」
「嘘偽りなく、すべて答えると誓う」
私は緊張を誤魔化すように、抜けてしまった力を取り戻すように、ぐ、と自身の手を握りしめた。
「もし、私がこの先、海人族の男性と婚姻を結ばなかったら。
海魔を浄化する役目を果たせなかったら……
私はマーレデアム王国の人たちを失望させてしまう……?」
戸惑っているのか、その答えを聞くのを恐れているのか。
私の唇は少し震えている。
「……本来は王家であろうが愛し子の意にそぐわぬ婚姻は結べない。
父上もそうお考えになっている。
しかし、愛し子と海人族の確かな結び付きを、皆が期待しているのは事実だ」
シェリは私の頬へと手を伸ばしたが、寸でののところでそれを止める。
「俺は王族だ。この国を守る使命がある。
海魔がどんな過去を持とうとも、我々にとっては生命を脅かされる危険視すべき存在。
海への祝福、即ち、海魔の浄化は絶対だ。
これを行えるのは愛し子であるリリィのみ。
故に。
其方が拒んでも決して陸には返してやれん。それだけは初めて出会った時から変わらない。
それであの男が我が王国を攻めるというのなら、迎え撃つまで。
我々とて決して、其方を奪われるわけにはいかないのだ」
シェリの手は私の頬に触れることなく、ゆっくりと下げられていった。
彼の金色の瞳は決して揺らがず、ただ私だけを見つめている。
この人とずっと一緒にいたいと思った。
でもそう思うだけでは、もうだめなのかもしれない。
「リリィ。其方には酷なことばかりを告げて本当にすまない。
それでも、これだけは言わせて欲しい。
俺は本当に、リリィを心から愛している。
……それだけはどうか、信じてくれ」
苦しそうに眉をひそめ、唇を固く結んでいるシェリ。
戸惑いながらも、今度は私が手を伸ばし、彼の頬を指先で触れる
「……シェリ、話してくれてありがとう」
そう言葉にするのが精一杯だった。
彼の頬も私の指も、まるで体温などないかのように冷たい。
私は彼から手を離し、足にグッと力を入れた。
海女神の愛し子として、マーレデアム王国のためにすべきこと。
(絶対、ギルたちにマーレデアム王国を攻めさせない)
女神一族の末裔として、海魔となってしまった愛し子のために出来る唯一のこと。
(グッセンスタシューン王国の、元の姿を取り戻すには、まずは何から始めればいいんだろう)
もし快活な王国に戻ったなら、少しは彼女の慰めになるだろうか。
海魔の暴動を抑えられることに繋がるだろうか。
「……リリィ?」
「シェリ。あなたのことが、世界で一番大好きだよ。
……それは、絶対に変わらないから」
恋人としてではなく、愛し子として彼の支えになることを誓おう。
愛おしい人たちの幸せを、何としててでも守らなければ。
そう決意を固めるように、私は女神の秘宝へと視線を移す。
(私はもう一度、グッセンスタシューン王国へ行かなくちゃ。
……逃げないで、向き合わなきゃ)
"三日後に答えを聞いてやる。
ただし、今度はお前が俺の元へ来い"
それが例え、シェリたちにとって意にそぐわないことだとしても。




