028 死屍術師の二か月少し4
ずっと一人で考えてると、泣いてしまいそうになる。
だから、赤い実を集めてキョーカ様の所へ行った。
『そっか、ユー君の命の恩人か。
それは確かに、助けないとダメだと思うよ』
『そう、なのか?』
『プウちゃんが同じ状況になったらって、考えてみて』
プウが死にそうになって、助けてくれた人が、死にそうになる。
プウは、その人を助ける?
うん。助ける。
きっと、その人は大切な人だ。
キョーカ様に聞いて、分かった。
他の人のことをプウも同じだったらと、考えるのは凄く大切だ。
でも、全然分からないこともある。
ピィがプウに意地悪してくることとかだ。
それでも、きっと考えるのは大切なのだ。
術を練習して王の帰りを待つ。
ずっと、王の気持ちを考えながら、術の練習をしていた。
もうしばらくもすれば、暗くなってくるだろうというとき、感知の葉っぱが壊れるのを感じた。
すぐに、その場所へと向かった。
高い場所から、見渡してみる。
ピィの姿を見かけた。
しばらくその周囲を見ていると、王の姿を見つけた。
王以外の姿もあった。
金色髪の誰かだ。
王よりも、少しだけ背が高い、人間。
走って王のところへ向かう。
木々の向こうから王が歩いてくる。金色は少し手前の方で待っているようだ。
プウが王の前へ出ると、王は少しびっくりしたみたいだった。
ちょっと急に出すぎたかもしれない。
王に、金色について聞いてみた。
どうやら、素材にするわけでは無いみたいだった。敵でもないらしい。
やっぱり王は、あの金色を恩人と思っているみたいだ。
でも、"巫女の記憶"は、外の人間をすぐに信用するのは危険だと教えてくれた。
長く一緒にいないと、本性は分からないということだ。
しかも、あの金色はピィと同じく経絡活性を使う戦士らしい。
"巫女の記憶"も、経絡活性を使いこなす人間は、強い戦士だと言っている。
「ああ、たしか戦士の従者だって言ってた。でも、敵じゃない!」
「戦士、危険!」
黒大樹に近づけるのは危ない。
でも、王は金色にプウを信用して欲しいらしい。
金色をプウに信用させるんじゃなくて、プウを金色に信用させる。
よく分からない。
しかも、王のことを王と呼んではダメらしい。
意味が分からない。
でも、王はその理由を凄く簡単に教えてくれた。
「まあ、俺が王だと他人に知られると、俺が狙われかねないだろ?」
そういうことだった。
確かにそうだ。金色はまだ、敵かもしれない。
王はきちんと、そのことを分かっていたのだ。
王は、自分のことをユージアと呼ぶようにと言った。
でも、王の名前は、キョーカ様の呼ぶ"ユー君"と、"ユウヤ"のはずだ。
ユージア、は体の持ち主の名前だ。
それは、違う人の名前だ。名前は大切だ。
"巫女の記憶"も、名前は大切だと言っている。
ユウヤ様と呼ぶと言ったら、ダメだといわれた。
でも、"ユウ"なら良いと言ってくれた。
確かに、これならユージア、ユウヤ、どっちとも取れる。
王は丁度いいところを見つけるのも上手だ。
プウは、ユウ様と呼ぶことにした。
金色は近くで見ると、とても綺麗な人間だと感じた。
金色の髪の毛は、プウみたいな灰色の髪じゃなくて、遠くに見える光のようで綺麗だ。
肌も、白くて綺麗だ。
プウはユウ様よりもっと色が濃い。
大きさも、ユウ様より少し大きいくらいで、ユウ様と並んでると凄く似合ってる気がする。
あと、胸のところが少し膨らんでる。何でだか分からないけど、それが凄く自然に美しいことに感じた。
「シルス。この子が薬を作った、プウだ」
「……プウ? 名前なの?」
金色は声も綺麗だった。
プウみたいに、たどたどしくなくて、ユウ様とかに近いしゃべり方だ。
そんなことはいい。
プウの名前を名前じゃないと思ったのが許せない。
「文句、言うか!?」
「ご、ごめんなさい。悪気があったわけじゃないのよ!
珍しい名前だったから……」
金色は困ったみたいに謝ってきた。
思わず怒ってしまった。
プウを金色に信用させなくちゃならないのに。
ユウ様を見ると、少し困った顔をしている。
でも、金色を見るとまた少し、キモチがトゲトゲしてくる。
金色の腰に、気になるものを見つけた。
緑色の毛だ。
「金色。それ、渡せ」
また、思わず冷たい言い方になってしまった。
なんでだか、金色にトゲトゲした言い方しか出来ない。
金色も、プウが冷たく言ったからか、怖い顔になって腰の何かに手を掛けてる。
"巫女の記憶"が言うには、あれは武器らしい。戦士の武器だ。
経絡活性を使った戦士が武器を使うと、一瞬で人を殺してしまうことができる。
ユウ様が金色から緑色を受け取った。
そんなに、気安く近づいて大丈夫なのだろうか。
ユウ様はもっと気をつけるべきだ。
緑の毛を渡してもらった。
"巫女の記憶"が言うには、これは上質な素材になるみたいだった。
魔素視で見ながら、魔素を流してみる。
確かに、見たことも無い種類の魔素の流れ方をしている。
金色も見てみると、これに似た感じの魔素が流れていた。
形はプウ達と同じだけど、流れの種類が似ているのだ。
きっと、この緑色の毛は、金色と同じ群れだったに違いない。
"巫女の記憶"は、同じ群れで長く一緒にいると、魔素の流れが似てくると言っていた。
それが、絆というものになるのだ、とキョーカ様も言っていたのを思い出した。
金色に聞いたら、やっぱりそうだった。
緑色の毛と、金色は同じ群れだ。
確認するために、金色の口の中の感じと緑色の毛の感じを確かめた。
「お前。この尻尾、繋がり、とても、強い」
そう言ったら、金色が泣いた。
何でだか、その涙を見たらプウの胸がきゅぅっとした。
ユウ様の体がどうしても手に入らなくて、とても悲しかった時のプウと似ている。
金色は、悲しいのだ。
この緑色の毛と離れるのが、寂しいのだ。
"巫女の記憶"も、流れの近いもの同士をつなげると、とても効果が高いと言っている。
これは金色にくっつけるのが良い。
本当は、キョーカ様たちの素材にしたい。
でも、何でだろう。金色と緑色を一緒にいさせてあげたいと思った。
金色に緑色を移植した。
金色は凄く辛そうだ。
普通はこうなると"巫女の記憶"も言っている。
移植をすると、凄く体に負担がかかるのだ。ユウ様みたいなのは、特別だ。
そうしたら、ユウ様が金色を黒大樹へ連れて行くと言い出した。
多分だけど、そうなるかもしれないって気はしていた。
でもダメだ。
金色はまだ信用できない。
そう言ったけど、ダメだった。
ユウ様はどうしても黒大樹へ連れて行く気みたいだった。
"巫女の記憶"が、毒を作って飲ませれば良いと教えてくれた。
この毒は、きちんとした解毒の薬を長く飲まないと死んでしまう毒だ。
悪いことをすれば、解毒の薬を飲ませないようにする。
そう言えば、金色は悪いことが出来ないということだ。
これなら、金色を黒大樹へ入れても大丈夫かもしれない。
王にそう言うと、納得してくれた。
王も、きちんと金色が危ないと分かっているのだ。
ちゃんと説明すれば、聞いてくれる。
ユウ様と金色は、黒大樹の中へ入るとすぐ眠ってしまった。
金色は凄く苦しそうだ。
プウは金色の移植した魔素の流れを調整してあげることにした。
"巫女の記憶"も、調整はしばらくは毎日続けなくてはならないと教えてくれた。
この作業は、もしかしたらユウ様にも教えないとダメかもしれない。
金色の眠りを深くするように、頭の魔素を操作する。
そうしてから、金色の体に模様を描き直していく。
それが終わると、プウの体を重ねて、魔素の流れを良くしてあげる。
近くで見てもやっぱり金色は綺麗だと思う。
何だか、匂いも良い。
ユウ様とも違った匂いだ。
鼻、目、口、どれも丁度いい形をしてる気がする。
そして、この胸のところの柔らかいもの。
乳房だ。
"巫女の記憶"が教えてくれた。
女についていて、子供にごはんをあげるのに必要なもの。
まだ、プウには無い。
やっぱり、プウはまだ子供は作れないみたいだ。
ユウ様やキョーカ様の言っていたとおりだ。
きっと、金色くらいに大きくなって、乳房も膨らんでこないとダメなのだ。
キョーカ様は言っていた。
好きな人が出来たら、結婚してくださいって言って、子供を作る。
ピィは言っていた。
男と女はつがいになって、子供を作る。
もしかしたら。
ユウ様は、金色に群れに入って欲しいのではないだろうか。
力を借りるため、と言っていたけど、本当はそう思っているのではないだろうか。
でも金色は、黒大樹の外の別の群れの人間だ。
もしかしたら。
嫌な考えが浮かんでくる。
ユウ様がプウ達の群れから出て行って、別の群れに行ってしまうのではないか?
……そんなことあるわけが無い!
こんなことを考えるプウは、悪いやつだ。
ユウ様を疑うなんて、プウはひどいやつだ。
でも、涙が出てきそうになる。
とても不安で、仕方が無い。
こんなこと考えちゃダメだって分かるのに、どうしても止まらない。
金色は綺麗だ。
プウなんかより、全然、綺麗だ。
「うう……」
ダメだ。泣いてはダメだ。
「うううう…………」
目が覚めると、ユウ様の姿が無かった。
慌てて周りを見渡した。でも、プウの隣には金色がいる。
二人で出て行ってしまったということはない。
そうだ。
ユウ様が出て行くわけが無いのだ。
こんなことを考えてしまうなんて、プウは本当に悪いやつだ。
金色の魔素の流れを調整して、黒大樹を出た。
すぐにユウ様は見つかった。
ユウ様を魔素視で見てみると、少しだけ金色に似てる流れになってる気がした。
胸がきゅぅっと、痛くなる感じがした。
なんだか、息が苦しい。
ユウ様がこっちを向いた。
静かに笑って、挨拶をしてくれた。
金色に無事に移植が終わって、安心してるに違いない。
「おはよう。それと、おつかれさん」
「……」
やっぱり、そうだ。
プウがちゃんと、金色に移植をしたから、喜んでる。
不安な気持ちが大きくなる。
ユウ様が遠くへ行ってしまう気がする。
そんなはず無いのに、泣きたくなって仕方が無い。
こんな状態ではダメだ。
ユウ様にちゃんと聞いて、確かめて安心しないとダメだ。
「王、プウの王、違うか?」
「どうしたんだ、急に」
「答え、言う!」
王は困ったように笑っている。
教えたくないのだろうか。
もしかしたら、プウ達が知らないうちに、金色と出て行こうと考えているのかもしれない。
「……金色、群れ違う」
「だから、言っただろう? シルスは無くちゃならない力だ」
そうだ。それに金色はとても綺麗だ。
でも、力ならプウにだってある。
「プウ、力、ある!」
「プウは黒大樹の周りから、出れないだろう?」
やっぱり。そうなのだろうか。
結界から出れないプウより、綺麗で子供も出来る金色が良いのだろうか。
「……王。黒大樹、出たい。違うか?
プウ達、邪魔、金色、一緒、出ていく、違うか?」
ユウ様は何かを考えている。
やだ。
早く答えを言って欲しい。
そんなに深く、何を考える必要がある!?
何を悩む必要がある!?
そこで悩むということは――
「プウ。お前こそどうなんだ?
俺やキョウカを助けてくれるのは、飼っていた時の恩があるからなのか?」
ユウ様は、プウが考えていたことと全然違う質問をした。
でも、これはプウがずっと考えていたことでもある。
プウの方が、ずっとずっとずっと、聞きたいことだった。
「キョーカ様言った。王、プウ選んだ。何故?」
ユウ様は少し何を言われたのか分からないみたいだった。
でも、
「お前を連れ帰った時のことか」
分かってくれた。
ユウ様は少し長く考えていた。
そして、優しい顔で言った。
「そうだな。たくさんいた金魚の中で、お前だけが離れた所にいて、模様も特殊だった」
「特殊?」
「そうだ。他と変わってるってことだな。
でも俺はそれがとても気に入ったんだ」
どきりと、心臓が大きくなった気がした。
「気に、入った?」
「……好きってことかな。だから、連れて帰るなら、お前だろうって思ったんだよ」
ユウ様は、たくさん、たくさんの中から!
プウを好きになって!
選んで、連れて帰ってくれたのだ!
「ん。後、あれだ」
ユウ様が、プウのことを抱きしめた。
ぎゅっと、強く。
プウがユウ様の体の傷を治していた時とも違う。
金色の魔素を循環させていたときとも違う。
たぶん。
好きってキモチを伝えてくれるために、抱いてくれたのだ。
嬉しかった。
こんなキモチ、初めてだ。
ユウ様の体の温かさが流れてくる。
少し痛いけど、ぎゅっとされてるところに、強く、強く、ユウ様を感じることが出来る。
「色々ありがとうな。……俺の体のこともそうだけど、シルスのことも」
ユウ様が体を離した。
あったかいが遠のいた。
急にユウ様を感じることが出来なくなって、凄く悲しくなる。
「ん。もっとして欲しいのか?」
もっとして欲しい!
こんなに素敵で、嬉しくて、温かくて、優しくて……!
なんでもいい!
もっと、もっとして欲しい!
ユウ様がまた抱きしめてくれる。
でも、今度はすぐに離してしまった。
「もっと」
「今はやらなきゃならない事が山積みだろう。それが終わったらな」
「もっと」
「やることが終わったらな」
「もっと!」
「だーめ! ……やることやったらな」
やることをやったら。
やることをやったなら、また抱いてもらえるのだ。
ユウ様が、水で手を洗いたいと言った。
手についた汚れなら術を使えば簡単に取れる。
生き物と生き物じゃないものを分けるのは、"巫女の記憶"の術の中でも基本的なことだ。
綺麗にしてあげると、ユウ様は凄く喜んでくれた。
また抱いてくれるだろうか?
どうやら抱いてくれないみたいだった。
次は、首が少しひっぱる感じがすると言った。
皮が突っ張ってしまっているのかもしれない。
一度溶かして、間に別のところの肉を差し入れて、再形成すれば治るだろう。
ユウ様の首を見ていたら、また抱いて欲しくなった。
思わず、プウから抱きついてしまった。
でも、そうしたらユウ様がきちんと抱き返してくれた。
嬉しい!
もっともっと、ずっとこのままでいて欲しい!
ユウ様は、そのままプウを持ち上げた。
さっきよりも、ぎゅっと抱きしめてくれている。
プウもユウ様をもっと抱きしめる。
そのまま、ユウ様は歩いていく。
強く、強くプウを抱きしめてくれる。
ふわふわと、ユウ様に持ち上げてもらって、移動する。
幸せだった。
こんな時間が、ずっと続いたら良いと思う。
「下すぞ?」
急に、ユウ様がおろすと言った。
やだ!
もっと抱いていて欲しい。
「プウ。痛い、髪掴むな!
わがままばかりやってっと、二度と抱いてやらないぞ!」
二度と抱いてもらえない。
そんなの、嫌だ!!
飛び跳ねるように離れた。
プウが気がつかないうちに、ユウ様の髪の毛を引っ張っていたみたいだった。
ユウ様は怒った顔でこっちを見てる。
勝手に抱きついて、ユウ様にひどいことをした。
もう二度と抱いてもらえない。
あれが、もう、二度と、してもらえない。
プウが、言うことを聞かなかったから、嫌いになったのだ。
涙が溢れた。
止まらない。
今まで我慢してたものが全部壊れた。
やだ。行かないで。
「怒って悪かった!」
……ユウ様は困った顔で許してくれた。
きちんと、次から言うことを聞けば毎日だって抱いてくれるらしい。
泣いたのも、ちゃんと許してくれるみたいだ。
涙を拭こうとおもったら、ユウ様がプウを引き寄せて抱いてくれた。
「きちんと節度守って言うこと聞けば、毎日だって抱いてやるから。
だから、な? もう泣くな」
抱いたまま、ユウ様は金色と緑色を回収しにいく話をした。
猛毒防腐薬を掛けてきたらしい。
あれをかけたなら、魔素の多いトコならば半日掛からずに回収しやすい状態になる。
説明したら、少しの時間だけ何でも言うことを聞いてくれると、ユウ様が言った。
それなら。
もっともっともっともっともっともっと強く。
プウを抱いて欲しい。
プウがお願いすると、ユウ様は言われた通りに強く抱いてくれた。
体中をぎゅっと包み込むように、強く、強く。
「プウ。もしかして、水の中にいる気分になってるのか?」
ユウ様の言葉で分かった。
そうだ。これは前の時のプウが感じていた安心感にも似ているのだ。
そしてこれは、ユウ様という流れの中に全身を包まれている状態なのだ。
そんなの、幸せに決まってる!
「王の中、浮く、好き!」
ユウ様に存分に抱いてもらって黒大樹へ戻ってきた。
金色はまだ眠っている。
金色は相変わらず綺麗だ。でも、それはしょうがない事だ。
ユウ様はプウのことを好きだと言ってくれた。
それなら、もっともっと役に立って、もっと好きになってもらえば良い。
ユウ様に術を教えてあげよう。
もっともっと、役に立って沢山抱いてもらうのだ。
ユウ様に魔素視の訓練のための、模様を描く。
途中、ユウ様は金色の武器を見たり、プウに石を飛ばさせたりした。
待ってる間も、色々考えてるユウ様はやっぱり凄い。
模様を一通り塗り終わったら、次は早速訓練だ。
ちょうど金色が寝ているから、他の人を相手にした魔素循環について訓練する。
寝てる相手だと、魔素循環する時に抵抗が少なくなるから、やりやすい。
プウが寝ているときには、プウが教えることが出来ないから、良い機会だ。
でも、何故かユウ様はその訓練をするのを少し嫌がった。
早く役に立って、抱いて欲しいのに。
何度も早くするように言ったら、やっとやってくれた。
金色に体を重ねて、魔素を循環させてもらう。
そう思ったけど、金色が目を覚ました。
術で深く眠るようにしてたのに、もう起きてしまった。
金色は少し前から起きていて、寝たふりをしてたのかもしれない。
突然、金色が立ち上がってユウ様を蹴った。
ユウ様の鼻から、血が出た。
体が熱くなった。
近くに落ちてた石を拾って、回転させる。
やっぱり、金色は敵だ!
石を飛ばそうとしたけど、ユウ様に邪魔された。
変なところに飛んでいって、土器を沢山割ってしまった。
また飛ばそうとしたら、抱きしめられた。
こんなときに、抱きしめてくるなんて意味が分からない。
でも、我慢できない。
プウも抱きしめ返してしまう。
ユウ様と金色が何か話をしている。
でも、プウはそれどころじゃない。
ユウ様が抱いてくれるのだ。
しばらくして、気持ちも少し落ち着いてきた。
「魂だなんて。そんなの、信じられないわ!」
「実際に話してみると良いさ」
少しだけ頭に入ってきていた言葉が気になった。
どうやら、金色をキョーカ様のところに連れて行くみたいだ。
それはダメだ!
金色は敵だ!
ユウ様にひどいことしたのだ!
「金色、導き間、入れる、ダメ!」
「キョウカだってそれを望むはずだ。世話になる人間には礼を尽くす人だ」
キョーカ様が望む?
よく分からない。でも、ユウ様が言うならそうなのかもしれない。
でも、本当に危険なのだ。
金色は、危険なのだ!
でも、ユウ様は金色とキョーカ様の所へ行ってしまった。
少しでも変なことが起きてると感じたら、プウも中に入って金色をやっつけなくてはならない。
石を毒の薬に付けて、それを手に握って耳を澄ませた。
しばらくすると、ユウ様が出てきた。
金色一人をキョーカ様のところにおいてくるなんて、何を考えているか分からない。
怒ろうと思ったら、頭をぐりぐり撫でられた。
これも悪くない!
……そうじゃないのだ!
そんなことをしてる場合じゃないのだ!
金色をちゃんと見張らないとダメなのに、ユウ様は抱きしめてくる。
そんなの、我慢出来る訳が無い!
思わず抱き返してしまった。
金色は何も悪いことをしないで、出てきた。
もしかしたら、金色もキョーカ様の凄さが分かったのかもしれない。
顔を見てみると、今までと違う感じになってる。
ユウ様と金色が話をしてる。
でも、プウは抱かれて頭撫でられてるので幸せいっぱいで、あまりお話が頭に入ってこない。
嬉しいけど、これは困る。
何か金色が嬉しそうな声で叫んでる。
振り向こうと思ったら、金色が飛びついてきた。
金色が襲ってきた!?
でも違った。プウをユウ様と挟むようにして、抱きついただけだ。
背中に、金色の乳房がぎゅっと当たる。
柔らかい。
いや、金色の体は、乳房以外も柔らかい。
腕も、おなかも、全部。
そして、前も後ろもぎゅっとされた今のプウは、とてもとても幸せだった。
こういうことが出来るなら、金色が群れに入るのも悪くない。
そうだ。
金色が違う群れの仲間なら、プウ達の群れに引き込めば良いのだ。
……プウより、金色を伴侶に選ぶかもしれない。
でも、それはプウがちゃんと頑張れば、どうにかなるかもしれない。
金色を遠ざけるだけなのは、ズルいことだと思う。
プウも一生懸命、頑張ってユウ様に認めてもらえば良いのだ。
そうだ。
プウは、大変だったとき、諦めなかった。
諦めなかったから、ユウ様も救えた。
そうだ。
頑張り続けるのだ。
すぐに結果が出なくても、頑張ることが大切だ。
頑張らないと、絶対に結果が出ないからだ。
後になって頑張ってても、絶対に救えなかったと思う。
そうだ。
諦めないで、頑張り続けるのだ。
それが大事だって知ったのだ。




