第四話:戦争を止める黒衣
数週間後。
王都で、歴史的な外交会議が開催された。
王国。
グランディア帝国。
周辺諸国。
神殿。
商業ギルド。
農業ギルド。
騎士団。
そして多くの民衆。
すべての視線が、一人の男に集まっていた。
帝国皇帝グラディウス。
「余は、王国との間に永続的な平和を築くことを決意した!」
拡声魔法が王都中に響き渡る。
民衆から大歓声が上がった。
「平和万歳!」
「戦争がなくなる!」
皇帝は満足そうに頷いた。
その隣には国王アレクシス。
そして――
賢人議会議長、山下速夫。
式典が終わった後。
皇帝は山下に近づいた。
「山下議長」
「はい」
「余は、お前を気に入った」
「それは光栄です」
「お前は余を戦争から退かせた」
「いえ」
山下はニヤリと笑った。
「皇帝陛下は、戦争をやめたのではありません」
「何?」
「より儲かる道を選ばれただけです」
皇帝が一瞬黙る。
そして――
「ハハハハ!」
豪快に笑った。
「面白い男だ!」
山下も笑う。
「政治なんて、そんなもんですよ」
二人は握手を交わした。
だが――
その光景を遠くから見ていた人物がいた。
聖女エレナだった。
「……また山下さんが、国を救っちゃった」
彼女は小さく呟いた。
そして、少しだけ眉を寄せる。
「でも……」
エレナは首を傾げた。
「結局、誰が一番得をしたんでしょう?」
山下は振り返らなかった。
ただ、口元だけが少し上がっていた。
「ククク……」
エレナが目を細める。
「やっぱり、山下さんですよね」
「何のことだ?」
「知りません」
エレナは呆れたように笑った。
戦争は止まった。
だが――
山下の「根回し」は、まだ終わっていなかった。




