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第一話:隣国からの宣戦布告

第四章:【帝国の罠編】開幕です!


「戦争を止めるには、どうすればいい?」


「戦争を始めたら、誰が儲かって、誰が損をするのか」


「戦争より、商売したほうが得だ」


元県議会議長・山下速夫


綺麗な正義を掲げるわけでもありません。


悪を完全になくそうとするわけでもありません。


ただ、人間の欲を見つめ、その欲がぶつからない場所へと、巧みに道を作っていく。


そして山下は、いつものように――。


「ククク……」


と笑うのです。


それでは――。


黒衣の議長が挑む、異世界初の「外交戦」。


どうぞ最後までお楽しみください。

  王国に、一本の極秘文書が届いた。


 送り主は、東の大国――グランディア帝国。


 王国よりも遥かに広大な領土を持ち、強大な軍隊と豊富な資源を誇る軍事国家である。


 賢人議会では、緊急会議が開かれていた。


「帝国軍が国境付近に集結しているだと?」


「兵力は我が国の三倍とも言われているぞ!」


「まさか、本当に戦争になるのか……」


 議場がざわめく。


 その中央。


 議長席に座る山下速夫は、届いたばかりの文書を眺めていた。


 そこには、帝国皇帝からの要求が記されている。


――国境沿いの水源地および大街道の使用権を帝国へ譲渡せよ。


 拒否した場合。


 帝国は王国に対して軍事行動を開始する。


「……なるほど」


 山下は紙を机に置いた。


 そして――


「ククク……」


 小さく笑った。


 議員たちが一斉に山下を見る。


「議長。何がおかしいのです!」


「いや」


 山下は葉巻に火をつけた。


「戦争を仕掛ける奴ってのは、だいたい最初に『戦争をしたい』とは言わん」


「では、何と言うのです?」


「『国益のためだ』と言うんだよ」


 山下は要求書を指で叩いた。


「水源地と街道の使用権。つまり、こいつらが本当に欲しいのは土地じゃない」


「……では?」


「金だ」


 議場が静まる。


「帝国にも金が必要なんだろう。軍隊を維持するには金がいる。国境に兵を集めるにも金がいる」


 山下は机の上に置かれた資料をめくった。


「帝国の今年の収穫量。落ちている」


「え?」


「しかも鉄鉱石の輸出量も減っている」


 山下の目が鋭くなる。


「戦争を始めたいんじゃない」


 一拍置いて、


「戦争を始めるしかないと思わせられているんだ」


 その瞬間、議場の扉が開いた。


 国王アレクシスが入ってきた。


「山下議長。どうすればいい?」


 山下は立ち上がった。


「王様」


「何だ?」


「戦争はしません」


 議場がどよめく。


「しかし、帝国が攻めてきたら……」


「その前に、帝国に戦争をする理由をなくしてやります」


「どうやって?」


 山下はニヤリと笑った。


「まず、帝国の商人を呼びましょう」


 議員たちが顔を見合わせる。


 山下は葉巻の煙をゆっくり吐いた。


「戦争を止めるにはな――」


 そして、低く言った。


「兵士より先に、商人と話すんだよ」


 王国と帝国。


 二つの国の間で、誰も知らない「裏の外交戦」が始まった。


 もちろん山下にとって、それは戦争ではない。


 ――新しい根回しの仕事だった。


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