黒衣×黒衣 第一話:二つの黒衣と、勝者のための一杯
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第二章「財政の罠」無事に完結いたしました!
今回は、売国奴を倒して大儲けした山下議長が、同じ王都の路地裏にある『黒衣のバーテンダー』蓮の店へとふらりと遊びに行く、お楽しみ公式コラボ番外編です。二人の「黒衣の大人」が交わす、贅沢な夜の時間をどうぞお楽しみください!
売国奴のカネーミ財務大臣を完全論破し、歴史的な大減税を成功させた山下 速夫
国を大繁栄させ、自分の秘密口座にもがっぽり裏金が入った彼は、上機嫌で王都の深夜の街を歩いていた。
「フハハ、今夜は美味い酒が飲みたい気分だな。……おや?」
山下がふと目を留めたのは、普段は誰も通らないような静かな路地裏だった。
そこには、国から武器の所持すら禁じられた『国家最高聖域』の看板と、ひっそりと明かりが灯る一本のドアがあった。
カラン、とベルを鳴らして山下が入ると、そこは現実世界の銀座を思い出させるような、静かで最高に美しいバーの空間だった。
カウンターの向こう側には、仕立ての良い黒いタキシード――「黒衣」を着たバーテンダーの蓮が、静かにグラスを磨いていた。
「いらっしゃいませ。……おや、今夜は一段と凄まじい『覇気』をまとったお客様ですね」
蓮は優雅に一礼した。魔王や公爵を見てきた蓮の目には、山下がただの若者ではなく、国を裏から操る「本物の怪物」であることが一目で分かった。
山下はカウンターの真ん中にドカッと座ると、不敵な笑みを浮かべた。
「ほう、いい店じゃないか。マスター、俺は今日、国を一つ救って、ついでに大儲けしてきたところでな。最高に美味い、強い酒をくれ」
蓮は何も驚かなかった。
ただ静かにボトルを手に取る。
「かしこまりました。では、見事な勝利を収めて大金を掴んだあなたに、現代の特別なカクテルをお作りしましょう」
蓮が用意したのは、高級なラム酒、ライム果汁、そしてほんの少しの砂糖。
それらを愛用のシェーカーに注ぐと、カシャ、カシャ、カシャと、小気味よい音が店内に響き渡る。
その無駄のない完璧な動きに、山下は思わず目を見張った。
冷たく冷やされたグラスに注がれたのは、淡い白色に輝く、洗練された一杯だった。
「『ダイキリ』でございます。カリブ海の鉱山で働く労働者たちが、一日の大仕事を終えたあとに愛飲した、まさに『勝者のための一杯』です」
山下はグラスを傾け、ゆっくりと喉に流し込んだ。
その瞬間、山下は「……ほう」と、深くため息をついた。
口の中に広がるのは、ラムの芳醇な甘みと、ライムのキリッとした強烈な酸味。
そして、喉の奥からカッと燃えるような熱いアルコールが一気に突き抜けていく。
「美味いな、マスター。これほど雑味のない、完璧な酒は初めてだ。……お前、ただの異世界人じゃないな?」
蓮は静かに微笑み、自身の黒いタキシードの襟に手を当てた。
「ただの、街のバーテンダーでございます。……お客様も、そのスーツ(黒衣)の下に、ずいぶんと重い泥を被ってこられたようですね」
「ハハハ! 言うねぇ、マスター!」
山下は心底嬉しそうに大笑いした。
政治の泥を被る山下の黒衣と、最高のおもてなしをする蓮の黒衣。
二人の「黒衣の大人」が、王都の夜の底で、静かに交錯した瞬間だった。




