第四話:トンチンカンな財政論
王国の最高意思決定機関「賢人議会」の議場は、重苦しい緊迫感に包まれていた。
演壇に立った財務大臣のカネーミは、山下によってインフラの売国ルートを「ワンヘルス法案」で塞がれたことに焦り、髪を振り乱して山下を睨みつけていた。
「山下議長! あなたが可決させようとしている法律は、国の財政を破綻させる逆賊の法案だ! 今すぐプライマリーバランスを黒字化し、増税しなければ、この国の未来はないのです!」
カネーミは得意の経済理論を並べ、山下を完全に論破しようと声を張り上げた。
だが、議長席に座る山下 速夫は、あくびを噛み殺しながら、不敵な笑みを浮かべて木槌をトントンと叩いた。
「カネーミ大臣。お前さんのその『黒字化論』、中身はただの売国ロジック(詐欺)だな」
「な、何だと! 私は国のために……!」
「嘘をつくな」
山下が合図を送ると、議場にいる全議員のデスクの上に、数日前の深夜、カネーミが隣国の商社と密会していた裏帳簿のデータが一斉に配られた。
そこには、隣国からカネーミの個人口座に振り込まれた、巨額の裏金の数字がはっきりと刻まれている。
「お前が『プライマリーバランスの黒字化』に異常にこだわる本当の理由を、俺が教えてやろうか?」
山下は立ち上がり、冷徹な目でカネーミを見下ろした。
「お前はわざと増税を繰り返して国内のギルドを不況に追い込み、国債(国の借金)を無理やり減らすことで、この国の価値を暴落させようとした。国が干からびてインフラの価値が下がれば、隣国の商社が安値で丸ごと買収しやすくなるからだ。お前は国の財政再建のためではなく、隣国にこの国を綺麗に売り飛ばすために、その経済理論を悪用したんだよ」
山下の完璧すぎる「経済の正論」による一撃。 議場は水を打ったように静まり返り、次の瞬間、議員たちから
「カネーミは売国奴だったのか!」
「俺たちを騙していたのか!」
と、凄まじい怒号が沸き起こった。
自分の絶対に破られないはずだった「無敵の盾(経済理論)」を粉々に叩き割られたカネーミは、顔を真っ青に、いや、通り越して真っ白に硬直させた。
「あ、あ、私は、プライマリーバランスを……黒字、に……」
何か言い訳をしようとするが、あまりのショックと恐怖に、カネーミの頭の回路は完全にパンクした。
カネーミはそのまま、白目を剥いてガクガクと震えだし、演壇の上でドサリと仰向けに卒倒(気絶)してしまった。
「お笑いコントにもならんな。おい、衛兵。その売国奴を牢獄へ連れていけ」
山下の冷ややかな声とともに、気絶したカネーミはトカゲの尻尾のように引きずられて退場していった。
魔法中継を見ていた国民、そして議場全体から、ぐうの音も出ずに自滅した自称経済学者へ、激しい軽蔑と冷めた視線が注がれていた。
カネーミの絶対の武器を、あいつ自身の土俵で完璧に粉砕した山下。
最高にインテリで痛快な「完全論破」により、最大の壁は、あっけなく崩れ去ったのだった。




