其の壱十七「とある駅前の守護霊」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
これは私、風間咲良が旅先で聞いた話です。
夕食後、外に出かけた私は、街の駅前におしゃれなBarを見つけ、そこに入りました。
雰囲気のいい本格Bar。それほど広くないところが、ちょうどいい広さと感じる店内のカウンターには若い女性が一人と、カウンター内にマスターと店員さん?の二人。
お酒の入ったところで、マスターにWebライターをしながら創作怪談を書いていることを話すと、隣に座っていた若い女性(Nさんとします)から興味を持たれたのか、少し食い気味にたくさんの質問をされました(笑)
私はそんな彼女から一つ、この街の駅前に伝わる都市伝説?怪談?を聞かせてもらえました。
この街の駅前には、女性の守護霊がいるというのです。
◇◆◇
その守護霊(仮に守護霊Kさんとします)は、今からかなり昔に駅前の市民公園で起きた通り魔事件に巻き込まれ、自分の娘を庇い、刺されて亡くなった方なのだといいます。
たくさんの被害者が出たこの事件。けが人は多かったのですが、亡くなったのはKさん一人だけ。
娘を守って亡くなったKさんの勇気ある行動の話は、今も静かに語り継がれている――のですが、この事件の後から駅前では度々、心霊現象が起こるようになります。
駅前で度々起こる心霊現象。それには一つの法則がありました。
それは、大なり小なり駅前で事件を起こそうとする者の前に、心霊現象が必ず起こるという法則。
心霊現象に驚き、恐怖のため犯行前にその場から立ち去っていくという事例。
事件が起きたとしても被害者が出ることなく、犯人が恐怖に顔をゆがませて一目散に逃げていくという事例が、この街の駅前では度々起きているというのです。
それから駅前では「Kさんが駅前の守護霊になって駅前の治安を守ってくれているんだ」という噂がまことしやかに囁かれるようになり、有志により小さな慰霊碑が立てられたのだとか。
◇◆◇
駅前の守護霊。Nさんの話をとても興味深く聞いていた私は、彼女にこう聞きました。
「Nさんは、その守護霊さん、Kさんの起こした霊現象を見たことがありますか?」
その質問にNさんは、私はありませんが、私の勤め先の室長は見たことがあるらしいと話してくれました。聞くとNさんは、駅前の〇〇〇カウンセリング室に勤めるカウンセラーさんとのこと――
〇〇〇カウンセリング室?それはどこか聞き覚えのある名前でした。
記憶をたどると……そうだ、以前友人に聞いた「旅行先で深夜に明かりの点いたカウンセリング室があった」という話。そこのカウンセラーさんは深夜に幽霊たちの悩みを聞いている噂があるとか――
そんな人が見たことがあるらしいというなら……
もしかするとこの噂、本当かもしれません――




