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創作怪談:これから広まるかもしれない怖い作り話【復路】  作者: 井越歩夢


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其の弐十壱「ネクサス文書」

これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない

いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。


全部で壱百八話。どれも短い物語です。


しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、

時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、

時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。


そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。

これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。


この話、本当なんです。



インターネット上である「暗号文」が注目されていたという話。


その暗号文は、ネット上で「話題の難暗号文」と検索すれば誰でも見られるオープンなものなのだが、一目見るだけでもその複雑さから、解読マニアの一部からは「これ本当に解けるのか?正解はあるのか?」という意見も出ているらしい。


著名な暗号研究者の間でも、数学的に解読が極めて困難な構造を持つものだという発言があり、そのことが解読マニアたちの魂に火をつけることになったのも、この暗号が注目されることとなる一因となった。


掲示板、動画サイト、SNSでもこの暗号は急速に広まり、様々な憶測がネットを騒がせていた。


「表層ネットに置かれた深層ネットへの入り口だ!」


「ある秘密組織がこの暗号を解ける人間をスカウトするために置いている!」


「これは新世界秩序憲章だ!」


「これは陰謀の臭いがプンプンしますねぇ~♪」


――などと。


◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇


この暗号文が世間の話題になって五カ月。


この暗号文は“ネクサス文書(The Nexus Codex)”と呼ばれ始め、ネットでもこの名称で検索されるようになり、最近では解読マニアの間だけでなく、ゲーム感覚でこの暗号文の解読に挑戦しようとする一般人も増えていた。


そんな中、とあるブログに残されたとても短い一文が、注目を集めることになった。


「この暗号文は1か月前に、3人の挑戦者に解読された。」


この一文は、解読マニアたちだけでなく一般人、都市伝説オカルトマニア、陰謀論者たちに衝撃を与えることになったのだが――

解読されたという一文だけで、この暗号文が何を示しているかは一切書かれておらず、解読されたというこの一文の真意は不確かさを残すことになった。


◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇


しかし、その後にSNS上に「ネクサス文書を解読した3名の名前」と、彼ら3人の行方が現在わからなくなっているという投稿がされると、再び様々な憶測がネットを騒がせ、ついに地上波でも取り上げられるようになった。


「ネクサス文書には深層ネットへの入り口が記されていて本当の答えはそこにある!」


「ネクサス文書はある秘密組織がこの暗号を解ける人間をスカウトするためのもので、行方不明の3人は組織にスカウトされて姿を消した!!」


「ネクサス文書は新しい世界秩序を示した108の憲章だ!」


「ネクサス文書、これは陰謀の臭いがプンプンしますねぇ~♪」


――などと。


◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇


そして1年後、あれほど世間を騒がせた暗号文、ネクサス文書の話題はぷっつりと聞かなくなった。


インターネット上にあった暗号文が削除されたことで、ゲーム感覚で挑戦していた大多数である一般人が急速に興味をなくしたことで“稼げるコンテンツ”ではなくなり、掲示板、動画、SNSなどで全く話題に上がらなくなったのだ。


ただ、著名な暗号研究者や解読マニア、これをきっかけに暗号解読に興味を持った者たちは、消される前に様々な方法で残していたその全文を解読しようと、今もそれと向き合い、思考の沼を溺れるかのごとく漂っているという。


――3人の行方不明者のことを忘れて。


この話、本当なんです。


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