其の弐十参「愉快霊:遊び心の向こう側」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
皆さんは、幽霊と聞いて何を想像しますか?
囁き声を掛けられる?じっとりと呪われる?
じっと見られている?おいでおいでと呼ばれる?
私がパッと思い浮かべたのは、寂しそうに立っている、でした。
それはそれとして――
私は「これから広まるかもしれない怖い作り話」執筆のネタ集めに、様々な怖い話を見聞きしています。
そんな中で最近聞いた話の中にあった、これは!と、とても私の興味を引くことになった一言について今日はお話しようと思います。
怪談と言うより、この一言についての私の想像?なので、「怖い」を抜きにして気楽に読んでいただけると思います。(普段も「怖さ控えめ」のお話を創作している……つもりです(笑))
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一言に幽霊と言っても、様々なものがあります。
その場所に付いた存在。人を認識せず、ただ同じ行動を繰り返す「残留霊」。
事故現場や自宅など、特定の場所に縛られた「地縛霊」。
行き場を失い、ふらふらと漂う「浮遊霊」。
生きている人の強い感情が抜け出して霊的作用を起こす存在、「生霊」。
人を守る、導くなどの“善性”を持つ「守護霊」。
そして……人を害する意図はなく、好奇心や遊び心で現れる幽霊――「愉快霊」。
この愉快霊というのは、一般的な幽霊の分類にないものなので、このお話を書いている今、私が考えた新種?です(笑)
「ただ人を驚かせて、その様子を笑って見ている幽霊」という言葉を聞いたとき、何それ面白い……というか、ちょっと迷惑っぽくないですか?と、思わず笑ってしまい、それが印象に残ってアイデアメモにこう書いていました。
「ドッキリ幽霊:とりつくことも呪うこともない、ただ人のおどろく様子を笑って見ているだけの幽霊」
例えば、人気の少ない真夜中の道。電柱の陰からそろりと顔を出して、道行く人の驚く様子を楽しむ黒スーツの幽霊とか。
例えば、子供たちと一緒に遊んだ後、遊んでいた人数が一人少ないことに気付かせて怖がる様子を、ケッケラと笑って見ている子供の幽霊とか。
私の思考が様々な愉快霊を勝手に作っていき、ニコニコしながら想像を遊ばせていると、ふとそこに降りてくる想像上の幽霊の姿がありました。
それは白い和服、長い黒髪。The・日本幽霊という姿で――
「でもね、愉快霊はある一線を越えると、とっても怖い幽霊なのですよ。風間咲良さん――」
――はい?
私は思わず、後ろを振り返りました。もちろん誰もいるわけがありません。
私は仕事部屋で一人、愉快霊について考えていただけなのですから。
なのですが……想像上の白い和服の幽霊の声は、想像の中ではなく――後ろから囁いていたような?
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私は背筋がゾゾゾとしながらも、気のせいだと自分に言い聞かせ、それでも囁きの言葉を、声に出すことなくなぞってみました。
「愉快霊はある一線を越えると、とっても怖い幽霊なのですよ。」
ある一線。そのある一線とは?
もしかするとそれは、愉快霊の想像を膨らませすぎると、怖いことが起きますよという警告なのでしょうか。あの白い和服の幽霊はそれを私に告げるため、私の思考に降りて来たのでしょうか?
とりあえず、私はここで愉快霊のことを考えるのを一旦やめました。そのとき――
「クスクスクスクス……」
どこかから、そんな笑い声が聞こえてきたような気がしたのは……
この話、本当なんです。




