其の弐十吾「推定予言者!?少し先の未来が見える友人」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
皆さんの周りには、「妙に勘のいい人」っていませんか?
私の友人の中に一人、そういう人がいます。
そんな彼女(以降井沢さんとします)はどういう訳か分かりませんが、まるで数分先の未来が見えているかの如く――不思議なほど“危険に対して勘の働く人”なのです。
これは、実際に私が彼女と一緒に出掛けた時に起きた“本当の話”です。
◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇
私、風間咲良が二〇代の頃。
私と同じく車が大好きな井沢さん、Mさん、私の三人で、一泊旅行へと群馬県に向かっているときにそれは起きました。
井沢さんの運転する車の助手席に私、後部座席にMさんが乗って中央自動車道を走っているとき、追い越し車線を猛スピードで走る“黒い外車のツーリングワゴン”に追い抜かれました。
季節は二月下旬。時にはまだ、路面凍結の危険がありそうな時期です。
「あんなスピードで大丈夫なのかな。」
後部座席のMさんがそう言うと、ハンドルを握る井沢さんはコクコクと頷き言いました。
「あの車、この先にある大きな左カーブのところでひっくり返ってるね……」
「えー!ほんとに?」
そんな会話を車内で交わし、私たちは進んで行ったのですが――
10分ほど走ったところで、路面の色が黒っぽく見えたのに気付いたのか井沢さんは、スピードを緩めハザードランプのスイッチを押しました。
そこは緩いながらも長い左カーブの入り口。山の陰になっており黒っぽい路面の色から井沢さんは凍結の危険を感じたのかなと思っていた私だったのですが、カーブの中盤に入るころそこには――
私たちを猛スピードで追い抜いていったあの黒い外車のツーリングワゴンが、ボンネット右側を大きく潰し、ひっくり返っていました。
井沢さんの言ったとおり、先にある大きな左カーブのところでひっくり返っていたのです。
走行車線に飛び出している部品の破片などはなく、私たちは事故車の左側を通り抜け進んで行きました。
その時の井沢さんは“ほらね”と、口では語らず目でものを言っているかのように私には見えました。
そこでふと、私は以前井沢さんと出掛けた時のことを思い出しました。
名古屋市の港区に向かって片側3車線の国道を走っているとき、井沢さんはふと、何かに気付いたかのように車のスピードを少し落として右隣にいた白いセダンを前に行かせました。
「あのセダン、このあと接触事故を起こすね。」
このときポツリとこんな事を言った井沢さん。
するとその数分後、白いセダンは隣にワンボックスの営業車がいるにもかかわらず、左側へ車線変更をしようとし、ガン、ガンと営業車に車体を何度もぶつけるところを私たちは見ることになりました。
そのままあのセダンと並んでいたら、ぶつけられていたのは私たちだった――
「沢ちゃん、もしかして未来が見えてた?」
「うーん、そうなりそうな絵が見えた感じかな。」
そう言って井沢さんは、何事もなかったかのように事故をした2台の車を避けて車を進めていきました。
あの時に、何だか似てる――そう思った私は、今もまた何もなかったかのように車を運転する井沢さんの横顔を見て、少しだけ背筋がゾゾゾとする気分でした。
◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇
二〇代の頃は週末三人でよく会っていましたが、今は会う機会もなかなかなく、みんなどうしているかなと若い頃を時々思い出します。
その中でも、井沢さんの「危険に対して妙に勘がいい」出来事は、鮮明に覚えています。
何となくそうなりそうな絵が見えた感じ。
数分後であれそれは、ある意味“未来予知”になるのでしょうか。
本当に予言は当たるものなのかと懐疑的に思いながらも、それはそれと楽しんでいた私ですが、彼女のこの“プチ予言?”に関しては、今でも本物のような気がしています。
なにはともあれ……井沢さんの運転で出かけるときは、絶対事故に遭わないという安心感はあれど、どこか不思議に感じる。そんな思い出です。
この話、本当の出来事なんです――




