其の弐十六「ご当地マスコットたちの夜会」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
この話を聞いたとき、これを怪談と言っても……怖い話と言ってもよいのかと。
そんな感想を持ったのですが、怖いのが苦手な怖い話好きである私には丁度いい怖さかなと思い、
この「これから広まるかもしれない怖い作り話」の中で書くことにしました。
なので今回、このお話の読後に「全然怖くないじゃない」と思われた方は、その感想に何一つ間違いはありません。
私もこれを聞いたとき、そしてこれを書いているとき、口角を上げながら怖い話を書いているという
どこかちぐはぐな心持ちの中でしたので(笑)
ここからがその「怖い?話」です。
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これは旅行好きの友達を持つ、Aさん(女性)から聞いた話。
Aさんの友人Bさんは、大の旅行好き。
最近知った「行ったことのある都道府県の地図を塗りつぶしていくスマートフォンのアプリ」を使っており、アプリの地図を全部塗りつぶす全国制覇を目標に旅を楽しんでいるという話でした。
そしてこの地図の塗りつぶしと同じように、Bさんが旅の楽しみにしているのが、
各県で購入するご当地マスコット等の小さな人形を47都道府県分を集めることでした。
部屋に並べて飾ったそれを見ながら、旅の思い出に浸る就寝前のひと時が、Bさんにとって癒しの時間になっているのだとか。
そんな中、Bさんはある体験をしました。
この旅を始めて間もないある夜のこと、夜中にふと目を覚ましたBさんは、部屋の中に聞こえる「微かなざわめき」に気付きました。よく聞かないとわからないほどの微かなざわめきなのですが……
何だろう。Bさんが注意深く耳を澄ませていると――
「北海道はでっかいどうって言うべさ。空気もうまいし、景色も広くて気持ちええんだわ。夏は涼しくて冬は雪まつりもあるし、来たら絶対ほれ込むっしょ。」
「青森さ来れば、山も海もめぇもんだらけだべ。りんごも魚もうんめぇし、ねぷたの熱気は胸さ響ぐじゃ。ここぁ一度来たら忘れられね土地だ。」
「東京ってぇのはよ、古いもんと新しいもんがごちゃっと混ざって粋な街よ。どこ歩いても刺激があって、暮らしてても飽きがこねぇのさ。」
「名古屋は住みよくてええとこだがね。味噌カツも手羽先もうみゃあし、街は便利で車移動もしやすい。来たらきっと気に入るでよ。」
「長崎は景色がよかとよ。坂道ばってん夜景はほんにきれか。ちゃんぽんもうまかし、異国情緒もあって歩きよるだけで心が弾むとさ。」
――ご当地自慢?そんなざわめく囁き声が、部屋の中でひそひそと聞こえるのです。
Bさんは、ベッドの中からそーっと周囲を見回すと、どうやら声は、
集めたご当地グッズを飾っている棚の方から、ざわざわ、ひそひそ、ざわひそ、と聞こえてきます。
集めたグッズの棚から……ご当地自慢?
Bさんは怖いと思いながらも、そのざわめき声がどこか楽しそうに聞こえ、そのまましばらくそれを聞いているうちに、また眠っていたそうです。
次の朝、目を覚ましたBさんは、真っ先にご当地マスコットを飾っている棚を確認しました。
そこでBさんは驚きます。
そこには北海道、青森、東京、愛知、長崎で購入した5つのマスコット人形が――
「あのとき私はもしかすると、マスコット人形たちの“ご当地自慢”を聞いていたのかも。」
そんな話をBさんから聞いたAさん。
その後、マスコット人形が増えるたびに、そのざわめきは賑やかになっていると話すBさんは、どこか楽しそうだった、というお話です。
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皆さんはどう思われましたか。怖かったですか。ちょっとかわいいと思いましたか。
私は、この話、ちょっとかわいいなぁと、思わずニッコリ口角を上げていました。
ご当地自慢も、それぞれ地域の方言なのも、興味深く感じます。
この先、Bさんの部屋に47個の人形が並んだらどうなるでしょう。
その時が来たらまた、この話の続きを聞きたいなと思っています。
この話、本当なんです――




