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創作怪談:これから広まるかもしれない怖い作り話【復路】  作者: 井越歩夢


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其の弐十ナナ「献血バスのおじさん」

これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない

いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。


全部で壱百八話。どれも短い物語です。


しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、

時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、

時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。


そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。

これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。


この話、本当なんです。



これは、私がよくお邪魔しているハンバーガー屋さんで聞いた話。


ちょっとドライブしたいときに丁度いい距離にあるこのお店に、初めて入ったときの感想は「こんなに大きなハンバーガー、どう食べればいいの?」でした。

この時に、手に持たずにナイフとフォークを使って食べるハンバーガーがあることを覚えましたね。


それはそれとして


このお話は、このお店の店長さんから聞いたものをもとに「怪談」としてまとめた創作、怖い作り話です。


◇◆◇


これはこのお店の店長さん(以降Sさんとします)が中学生の時のお話。


彼が友人と二人で地元の夏祭り会場を歩いていると、


「ちょっとお前たち」


そう呼ぶ男性の声が背後から聞こえました。

ふり返るとそこには、白のシャツにデニムパンツのどこにでもいそうな「おじさん」が立っています。

いい大人に突然呼び止められたSさんたちが、何事?とキョトンとしていると、おじさんはこう続けます。


「お前たち若者は、人の役に立つことをしなければならん!」


そう言って、二人に自分についてくるよう促しました。


何のことだかわからないながらも、二人はおじさんに付いていくと、そこには一台のバスが止まっていました。


バスには「日本赤十字社〇〇県赤十字血液センター」と書かれており、二人はそれが「献血バス」だということに気付きます。


おじさんは二人の方を向いて親指を立て、「行ってこい」と言います。

中学生のSさんと友人はもちろん、献血バスに乗ったことはありません。そしてなぜおじさんに「バスに乗れ」と言われているのかも、まったく意図がわかりません。


けれど、何故か二人は「献血バスの中ってどうなっているのだろう」という興味が湧いたのか、おじさんに言われるままバスの止まっている献血会場の受付へと歩いていきました。


◇◆◇


受付はバスの外で行われており、二人は椅子に座ります。

初めてなので登録から始まるのですが、その時、二人は受付の担当者さんに「ん?」という顔をされました。Sさんも友人も、何かな?と思い担当さんの言葉を待っていると――


「君たち、まだ中学生なんだね。16歳以下だと献血は出来ないんですよ」


この時、Sさんと友人は中学生で14歳。ただ、二人は14歳にしては長身で、高校生に見えてもおかしくありませんでした。


ここでまた、え、そうなの?と驚き顔と同時に、何か無性に恥ずかしい気分になった二人は、自分たちをここに連れて来た「おじさん」のいる背後へと、ばっとふり返ったのですが――


そこに、あの「おじさん」は、いませんでした。


「あれ?どこ行った、あのおじさん?」


「おじさん?」


受付の担当さんは、その「おじさん」という言葉を聞き逃すことなく、Sさんたちからここに来た経緯を聞きます。それを聞くと、担当さんは「あ〜、なるほど」と何かを察するような複雑な表情を浮かべ、ホッと息を吐きました。


「二人とも背が高いから高校生だと思われたんだろうね。16歳を過ぎたらまた来てくれるとうれしいな。」


高校生に間違えられたのではという担当さんの言葉に、なるほどと納得するところもありながら、Sさんは彼の浮かべた「何かを察するような、複雑な表情」がどこか気になり、こう聞きます。


「あのおじさん、何なんですか?」


Sさんの質問に担当者さんは、少し間を置き考えて、小声でこう教えてくれます。


「時々若い子に“人の役に立つことをしなければならん!”と声をかけて献血バスに連れてくる“おじさんの幽霊”が出るんだよ――」


◇◆◇


「献血バスや献血ルームで働いている人の中では結構有名な話らしくて、おじさんの幽霊って聞いたときは、風間さんの話じゃないけど“背筋がゾゾゾ”でしたよー。」


当時を懐かしむように話しながら、ころころと笑っている店長のSさんですが、話を聞かされた私の方はというと、背筋がゾゾゾでした。


私は、「おじさんが『何だ、お前たち中学生だったのかー!がっはっは』というオチかな」と思っていたのですが、まさか「おじさんの幽霊が若い人を献血バスに連れていっている」とか、想像していませんでしたから。


その上、献血バスや献血ルームで働く方の中で結構有名な話というのも、興味深いです。

ここしばらく献血に行っていないので、久しぶりに行って「こんな噂を聞きましたが」と聞いてみようと思います。


◇◆◇


さて、みなさん。このお話の冒頭、私はこんなことを書いています。


「このお話は、このお店の店長さんから聞いたものをもとに『怪談』としてまとめた創作、怖い作り話です。」


このお話、どこが本当でどこが創作か、お分かりになりましたか?


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