其の壱百弐「門出の風」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
卒業式の季節になると、毎年思い出し、誰かに話したくなる思い出があります。
それは、小学校・中学校・高校すべての卒業式の天気のこと。
雲一つない晴天であることは、どの日も同じでした。
そしてもう一つ同じだったのは、「どの日もとても風が強かった」ということです。
さて、ここで最近私がさまざまな怪談を聞く中で気になった話と、
この私の体験とを重ね合わせ、思考を巡らせてみた勝手な解釈をお話します。
◇◆◇
神様の住む場所(神社や神域)にいるとき、突然天候が変わったら、
それは「今からそこに現れますよ」という神様の演出なのだとか。
例えば、急に風向きが変わり、厚い雲が割れ、強い陽の光が差し込んでくる――というように。
そしてその逆もまた。
怪異の住む場所(心霊スポットや忌み地)にいるとき、突然天候が変わったら、
それは「今からそこに出るから」という怪異の演出なのだとか。
例えば、急に風が強くなり、厚い雲が陽の光を遮り、昼なのに夜のように暗くなる――というように。
◇◆◇
この話を聞いたとき、真っ先に思い浮かんだのが卒業式のことでした。
私が学校という学びの場所を卒業する日。どの日も、晴天で風が強かった。
これをこの怪談と重ねるとすれば、どんな意味がそこにあるのだろう。
興味を持った私は、それを調べてみることにしました。
神様の祝福の風・境界を示す風・人生の転換点の象徴。
学校に宿る何かが毎年動く合図・卒業生を見送る存在の気配。
さまざまな話が目に入り、それをまとめるのであれば――
卒業式の日に毎年「晴天なのに強風」が続くのは、節目を見届ける“存在”の“演出”。
門出を祝う風が吹いていたのだと、私は解釈することにしました。
調べる中で、怖い暗示を目にすることになったらどうしようと思っていたので、
正直ほっとしました。
ですが――成人式の日。
朝から天気は悪く、黒い雲がどんどん厚くなり、そして強烈な風が吹き荒れたあの日は……
この話は、私の体験した本当の出来事です。




