其の参拾九「友人から聞いたお祓いの話」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
ホラー系の映画やドラマ、演劇、ゲームなど
幽霊、怨霊、悪魔などを扱う作品を制作する前に、
出演者、スタッフがお祓いに行くという話はよく聞くことだと思います。
私も、様々な怪談を聞く中でそういう話は何度も聞いてきました。
そして、お祓いをしなかったために様々な怪奇現象に見舞われた作品の話も。
それについて、今まで私の見解は「お話の話でしょ」でしたが、
あまりに身近なところで、そんな事件があったという話を聞くと
そうも言っていられない。そして、私もうかうかしてはいられない。
この話は、趣味で動画配信をしている若い友人から聞いた出来事です。
◇◆◇
この話をしてくれたのは、とある動画配信サービスで
「心霊系動画」を投稿しているグループに所属している友人(S君)。
(チャンネル名は控えさせていただきます)
心霊スポット好きな5人は、お酒の席で心霊動画の配信を自分たちもやりたいねという話になり、
それは「やりたいね」から「やってみよう!」に変わり、やがて「やろう!」となって
現在、月に一回みんなで心霊スポットに行って撮影をするようになったということでした。
そのとき、彼らの中で「心霊系をやるなら、始める前にお祓いに行かないと」という話になり、
地元の神社でお祓いをしてもらうことにしたのですが……
その当日、S君だけ仕事の都合でお祓いに参加できませんでした。
やむなくその日は4人でお祓いに行き、S君は日を改めて後日に行くこととなりました。
ただ、その後日というのは初撮影の3日後。
ひとりだけお祓いが済んでいないことに不安はありつつも、
S君の「よっぽど大丈夫だろう」という言葉に後押しされるように
撮影は予定通り決行されることになりました。
彼らの最初の撮影は、とある城跡。
「え?ここが!?意外としか言えない心霊スポット〇〇城跡」と題したもので、
5人で現地へ行き、昼の撮影、夜の撮影。撮れた動画をS君が編集し30分の動画にまとめます。
2日後、5人で内容をチェックした時は大盛り上がりで、
投稿後の反応を楽しみにしつつ解散したのですが……
この日の帰り、S君は事故に遭いました。
事故といっても帰りの移動中に階段でつまずいて転倒し、
その時の手のつき方が悪かったため、手首の骨を骨折したというものでした。
全治3週間。手首の骨折としては軽傷だったのですが、
彼らは「S君だけお祓いが済んでいなかったからじゃないか?」と考え、
その日の予定だった動画の投稿を、S君がお祓いを終えるまで延ばすことにしたのだとか――
◇◆◇
S君は「偶然だろう」と言っていましたが、こうも絶妙なタイミングで怪我をすると、
周囲はその原因を「お祓いがまだだったからだ」につなげてしまうことでしょう。
私もそのグループに所属していたら、同じように考えると思います。
それはそれとして
S君は予定通り撮影から3日後にお祓いに行き、その後動画は投稿されました。
その動画は、「え?ここが心霊スポットなの?」という意外性がウケたのか、
最初の動画にしては予想以上の視聴回数となり、彼らは大喜びだったそうです。
以降、彼らは趣味として月に一本
「意外な場所が心霊スポットだったシリーズ」として動画を投稿しており、
動画で得た収益は、撮影地の市区町村へ寄付しているそうです。
◇◆◇
さて、この話を聞いた私がなぜ「うかうかしてはいられない」と感じたのか。
それは私が「この創作怪談を書くにあたり、お祓いをしていないから」です。
映画やドラマの撮影、演劇の舞台、ゲームの制作など
私の身近から遠いところで起きた話の中であれば、それは怖い話として聞き流せますが、
S君は私の友人(歳は20歳ほど離れていますが……)です。
あまりに身近なところでそういうことがあると、
大したことはなかったとはいえ、気になってしまうじゃないですか。
なので私も近々、お寺にお祓いに行こうと考えています。
これを書いている時点でまだお祓いを済ませていない私が
こう言うのもどうかと思いますが、
心霊系、オカルト系に関わる何かを始めるときは事前にお祓いをしておくことを、おすすめします。
これがS君から聞いた、お話。
この話、本当なんです――




