其の四十零「真っ白だったビンテージのシャツ」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
古着ブームが来ているという話を耳にしたのは、ここ2年くらい前からと思っています。
そんな中、霊が憑いた古着の話を耳にし、去年それをもとにした創作怪談を一話書きました。
購入したビンテージの古着に呪いが――という話です。
このお話を読んだという読者様(30代男性)から、こんなお便りをいただきました。
それは、私の創作怪談とはまた少し違った“何かの憑いた古着”のお話でした。
(許可を頂き、お便りをそのまま掲載しています)
◇◆◇
風間先生
初めまして。いつも背筋をゾゾゾとさせながら読ませていただいています。
前作の其の七十壱「古衣怨影」を読ませていただき、
僕の古着に関係する体験談を先生にお話ししたく、お便りしました。
これは僕も何かの憑いた服を手にしたかもしれない、という話です。
先日、古着屋で白いビンテージシャツを見つけました。
真っ白な見た目と布の質感が妙に気に入って、目が離せなくなり購入したのですが、
いざそれを着て出かけるには何だかもったいなくて部屋の壁に飾ることにしました。
次の日。このシャツに“変化”が起きました。
最初は、光の加減で影が落ちているだけだと思ったんですが、
シャツの胸元に、鉛筆で薄く引いたような細い線が浮かんでいました。
買う時に気付かなかったのかなと不思議に思いながら仕事に出かけたその日、
帰宅して部屋の電気をつけた瞬間、「背筋がゾゾゾ」と固まりました。
シャツの胸元に、幾何学模様の柄が浮かんでいたんです。
それは何かの動物の顔のような絵柄で、ぎろりとこちらを睨んでいるように見えました。
僕は視線をそらすことも出来ず、しばらくその場から動けませんでした。
それは、日に日に広がっていき、白いビンテージシャツが
今では何とも言えない動物の絵柄に埋め尽くされた、柄シャツになってしまいました。
このことは、友人たちにも話していません。
それは、誰かに話して嘘だろと笑われるとかではなく、
これを話すことで、自分以外の誰かが見ることで、
何か恐ろしいことが始まるような気がしてるからです。
そんな中、先生の作品「古衣怨影」を読み、
もしかするとこのシャツは、何かが憑いているのではないかと僕は考えています。
このシャツ、近いうちにお寺で見てもらうつもりです。
もしこの出来事が、先生の創作怪談のネタにしていただければと思いお便りしました。
毎日創作大変と思いますが、楽しみにしています。
これからも頑張ってください。
◇◆◇
なんというか……
所々に、まだ怖さへの余裕があるように見えるお便りな気もします。
本当に怖かったら「背筋がゾゾゾ」なんて書いていられないでしょう。
それはそれとして
このお便りをいただいて、私は自身の創作怪談と照らし合わせ
その違いについて考えてみました。
私の創作怪談「古衣怨影」はビンテージのジャケットに怨念が憑いていた話。
彼の体験談は白いビンテージのシャツに浮かび上がる何かの動物の柄。
どちらも何かいわくつきの一品という点は同じですが、大きな違いは――
「創作と体験」
彼は近いうちにシャツを寺に見せに行くと書いていましたが
その後がとても気になります。
彼の白いビンテージのシャツには、一体どんないわくがあるのか。
私は彼からの、その後のお便りを心待ちにしています。
ちなみにこのお便り、届いたのは先月です――




