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創作怪談:これから広まるかもしれない怖い作り話【復路】  作者: 井越歩夢


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其の四十壱「空白の輪」

これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない

いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。


全部で壱百八話。どれも短い物語です。


しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、

時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、

時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。


そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。

これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。


この話、本当なんです。



日本には様々なお祭りがあります。もちろん私の地元でも少なくとも年に5回。

その中には、古くからの伝統的なもの、地域振興を目的に新たに企画されたものなど様々。


私も昔は……それを楽しみにして、友人と一緒に会場に足を運んでいましたが

アラフィフの今となっては、よほど気が向けば足を運ぶといったくらいになってしまいました。


それはそれとして。


今日お話しするのは、私の友人から聞いた、ある地域で行われる「夏祭り」について。

これを聞いた私の感想は、「あるかもしれないし、ないかもしれない」でした。


◇◆◇


このお話は私の友人の友人、仮にY子さんとします。

彼女が20代の頃。今から20年ほど前に、とある地域で行われる夏祭りに行ったときの出来事です。


その祭りというのは、全国でも名の知れた大規模な“盆踊り”で有名で、彼女は以前からそれを見に行きたいと思っており、その年、Y子さんと友人(E子さんとします)の二人で車で2時間ほどはなれたその町の祭りを初めて見に行きました。


全国でも名の知れているだけあって、町全体が祭りの飾りつけも華やかに、そして人の賑わいも想像以上なことからY子さんとE子さんは、迷子になりそうと笑い合いっていたそうです。

そんな中、お目当ての盆踊りが始まるまで二人は町を巡り祭りを楽しんでいました。


そして時は過ぎ、日も暮れ、祭りの盆踊り会場に人が集まり始めます。

Y子さんたちも会場に移動して、それが始まるのを楽しみに待っていました。


太鼓櫓の周りに、整然と踊り手の方々が二重の輪を作っていきます。内側に20人、外側に40人。

この時Y子さんは大規模という話を聞いていたわりに、人数は少なめなのだなと思ったそうです。


そして、踊りが始まるとY子さん、E子さんはその見事な様子に思わず声を失いました。

60人の踊り手が、息の合った揃いの所作で一糸乱れることなく、太鼓のリズムに合わせて揺れている。

あまりにも見事な様子に、声もなくそれに見入る二人、そしてその場の観客の皆も同じくで

その場は、盆踊りの歌と太鼓の音とだけが夜空に響いているのでした。


踊りは5曲で終わり、太鼓櫓と踊りの輪を囲む観客から大きな拍手が起こる中、

携帯電話やデジタルカメラで写真を撮る人の様子を見て、Y子さんもその様子を写真に収め、

祭りの終了を知らせる放送と共に、帰路へとついたのでした。


◇◆◇


それから数日後。休日に集まったY子さんとE子さんは、

祭りに行った時の写真を見ている中で、ある違和感に気付きました。


“踊りの輪が大きすぎる”


太鼓櫓の周りには2重の踊りの輪ができていたのですが、明らかにもう1つ、

一番内側に10人ほどの踊りの輪ができそうな“間”があったのです。


そして、その間にはどこかうっすらと白い影のようなものが映っています。

その影はまるで“曲と太鼓の音に合わせて踊っている”ようにも見えたといいます。


もしかして、心霊写真?そう思った2人は、再び車を2時間ほど運転し、

その町の神社へと足を運びました。

Y子さんたちがそこの神主さんに写真を見せると、神主さんはニッコリと笑って

こんなことを話してくれたそうです。


「この祭りの盆踊りでは、一番太鼓櫓に近い輪を“ご先祖様の踊る場所”として空けているのですよ。」


Y子さんとE子さんは、神主さんから、“古くからこの街の盆踊りは盆に帰ってきたご先祖様と一緒に踊りを楽しむ行事”と伝わっている話をされ、「写真に写っているのは、踊りに参加したご先祖様の霊でしょう。悪霊とかではありませんから、心配はないですよ」と言われたそうです。


そんな話をY子さんは、背筋をゾゾゾとさせるとも、胸をホッと撫で下ろすとも言えない複雑な気持ちで聞いていました。


何にしても、悪いものが写真に入り込んでお祓いが必要ということにならなくてよかったね、

という話ですが、やはり気付いてしまうと怖いもので、Y子さんはその写真を神社に納めることにしたという話です。


◇◆◇


なるほど。

私は友人からこの話を聞いて、「あるかもしれないし、ないかもしれない」という感想でした。


というのは「盆は先祖の霊が帰ってくる日」なのだから、

先祖の霊が盆踊りの輪に入るというのは「あるかもしれない」


ないかもしれないと思うのは、「古くから伝わる行事」ということで、

そう見えてしまう心理的効果なのでは?とも考えられるから。


でも、Y子さんとE子さんはこの「古くからこの街の盆踊りは盆に帰ってきたご先祖様と一緒に踊りを楽しむ行事」という話を知らないまま、祭りに参加しているわけで……


この話、本当かもしれません。


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