其の五十〇「ある事件の犯人が語る」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
今回の創作怪談は、ある事件の犯人が語った言葉が大炎上したのだが
数日後、それはピタッと鎮火した、という話。
Webライターをしながら、
大好きな怖い話を自分でも書き始め、
最近は怪異を扱った小説も書き始めた私・風間咲良は、
自分の書く作品の中に共通のテーマを“隠して”います。
ここでは語りませんが、
今回の怖い話は、ある意味そのテーマを象徴しているのかもしれません。
それでは始めます。「ある事件の犯人が語る」
それはこんなお話。
◇◆◇
これは、ある殺人事件の犯人(21歳男性)が取り調べ中に語った言葉。
「火星人と金星人から聞いた話を、昨日会った幽霊おじさんから聞いた。その通り地球を救う儀式をした」
犯行動機として語られたものですが、なんのことだか全く意味がわかりません。
しかし、逮捕直後の彼からはこのような発言はなく、受け答えもはっきりとしていたのに、
弁護士との面会後から急に意味不明な言動を繰り返すようになったのです。
この発言はメディアを通じて広まり、
世間は「精神衰弱を装って責任能力の有無に持ち込もうとしている」と受け取り、
大炎上しました。
……が、数日後。炎上は何事もなかったかのようにスッと鎮火しました。
理由は、後日の取り調べの際、犯人がこう言ったから……
いや、こうしか言えなくなったからです。
「lkjhgfdさぽいいうyyttっれえwqmんbvcxz」
彼は意味のある言葉として成立しない音を延々と繰り返し、
視線はどこを見ているかわからず、頭は止まることなくフラフラ動き、
肩はストンと落ちて、全身が脱力しているように見えたといいます。
「mんbvcxざsdfghjkぉいうytれwq」
こうした状態から、もう取り調べという状況ではなく取り調べは中断され、
精神衰弱による責任能力の有無を通り越し、
犯人は留置所から精神科病院へ移送されました。
その後、犯人が正気を取り戻すことなく、病院から出ることはありませんでした。
噂を聞いた人々は、「火星語か金星語で話してるんじゃない?」
などと冷ややかに語っていました。
精神鑑定を狙ったとみられてもおかしくない発言をした犯人は、
数日後、本当に狂ってしまった――という結末。
余談ですが、この犯人を担当した弁護士も、
同じように精神科病院へ運ばれ、その後そこから出ることはなかったそうです。
◇◆◇
さて、犯人は――そして弁護士は――
何を見たのでしょうか。
悪事を働けば逃れられないのは当然として、
それを宇宙人や幽霊のせいにするなんて、おかしな話です。
さぞ、宇宙人も幽霊も迷惑でしょう。
それはそれとして
もし本当に宇宙人や幽霊が存在するとしたら。
もし、この犯人が、弁護士が、
本物の何かを怒らせてしまったのだとしたら。
もしかすると、犯人も弁護士も、宇宙人か幽霊から、
とても怖い“お仕置き” を受けたのかもしれません。
という、創作です。
何となく、私の描く作品に隠された共通のテーマについて
感じていただけたでしょうか?
さて、この話が本当かどうかと聞かれれば、即「創作です」と答えますが……
果たして、どうでしょうね。




