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創作怪談:これから広まるかもしれない怖い作り話【復路】  作者: 井越歩夢


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57/68

其の五十讃「三十年越しの空」

これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない

いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。


全部で壱百八話。どれも短い物語です。


しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、

時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、

時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。


そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。

これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。


この話、本当なんです。



このお話は、私が「霊感少女・風間さん」というニックネームをつけられていた

三〇年ほど前の話になります。


私は実際、その“空”を見ていませんでしたが、

その日の昼休み、クラスの男子生徒たちがこの話で持ちきりだったことを

よく覚えています。


そして三〇年の時を経て、元・霊感少女の私が、

当時のクラスの男子生徒(今は元男子生徒ですね)から

こんな話を聞くとは思ってもいませんでした。


それは、こんなお話です。


◇◆◇


今から三〇年ほど前。季節は夏、多分七月だったと思います。

その日の体育の授業が終わる頃、ほんの数分の間に起きた出来事だと聞いています。


男子は校庭、女子は体育館で授業。

私は体育館にいたため、実際の空は見ていませんでしたが、外から男子たちの


「おいおいあれなんだよ!」

「ちょっと、なんかすげー!」

「映画かよ!」


という驚きとも歓声ともつかない声が聞こえてきました。


彼らが見ていたのは、あまりにも急激すぎる天候の変化。

薄曇りだった空が、わずか1〜2分の間に黒く分厚い雲に覆われ、

昼間なのに夜のように暗くなったのだそうです。


その雲は流れてきたのではなく、

その場でモクモクと膨れ上がるように成長し、空を覆い尽くしていった――

その様子はまるで映画のワンシーンのようだったといいます。


その雰囲気に飲まれるように男子たちが騒然と立ち尽くしていると、

次の瞬間、ポタ、ポタタタ、ズワァァァァァァァ!!と

突然の天気は大雨に変わり、彼らは先生の指示を待つことなく校舎へ避難したそうです。


「大魔王が現れる演出みたいで、かっこよかった!」


「いや、雲の中からファルコンが飛んでくるシーンそのままだろ!」


「ファルコンって何だよ!?」


「ネバーエンディングストーリーのあれだよ!」


その場では、そんな会話が飛び交っていたといいます。


そして昼休み。

男子たちの話題はその空のこと一色。

私にも「あの空、何だったと思う?」と聞かれましたが、

実際に見ていないので答えようがありません。


そのとき、私はふと気づきました。


――この話題に全く加わらない男子が二人いる。


それが少し気になりましたが、特に声をかけることもなく、

昼休みの時間はそのまま過ぎていきました。


◇◆◇


あれから三〇年後。

スーパーで買い物中、当時の同級生A君とばったり再会しました。

彼は、あの空の話に全く加わらなかった二人のうちの一人です。


同窓会以来、五年ぶりの再会で近況を話していたところ、

この時になって私は思いもよらない話題を振られました。


「風間さん、中学の時の“すごい雲”の話、覚えてる?」


「あー!うん。私は見てないけど、男子が騒いでたのは覚えてるよ。」


「……あのときさ。俺、見ちゃったんだよ。俺だけじゃない。そばにいたIも見てた。」


「見てたって……何を?」


次の瞬間、A君の言葉で私は、三〇年前A君とI君の二人が

この話題に加わらなかった理由を初めて知り、背筋がゾゾゾとしました。


「あの雲の中から、巨大な赤い目が、ジーッとこっちを睨んでたんだよ。」


◇◆◇


教室中が盛り上がる中、A君とI君だけが沈黙していた理由。

――彼らは“見てはいけないもの”を見ていた。


「霊感少女・風間さんは、あの雲、なんだと思った?」


「……A君、私、霊感なんてないし、もう霊感少女って年でも――」


45歳になった今、まさか”霊感少女”と呼ばれるとは思わず、私は思わず笑ってしまいました。

A君も、どうやら私の言わんとすることに気付いたようで、なにやら苦笑いを浮かべていました。


結局、巨大な赤い目について深く話すことはなく別れましたが――

そんな話を聞いてしまうと、やはり気になります。


帰り道、私は思いました。「この件、少し調べてみよう」と。


さて、みなさん。


この話、本当だと思いますか?

A君とI君しか見ていない事なので何ともですが、

私はこの話、雲のところまでは本当だと思っています――。



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