其の六十Ⅱ「みーつけた」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
この物語、「これから広まるかもしれない怖い作り話」を書いている中で、
時々、学生時代のクラスメイトや親しい友人から聞いた怖い体験談を
思い出すことがあります。
学生時代、怖い話を聞いたり怪談本を読むのが大好きだった私。
この頃の私は、なぜか周囲から「霊感がある」という印象を持たれており、
クラスメイトから様々な怖い体験について相談されることがありました。
そしていつしか私は「霊感少女・風間さん」と呼ばれるように……
「(ヾノ・∀・`)ナイナイ、私、霊感なんてありません」
と私は笑っていましたが、様々な怪談本や、
オカルトファンの“聖書”とも言われる月刊誌の愛読者だったことが、
私に「幽霊や怪奇現象に詳しい」というイメージをつけていた……らしいです。
それはそれとして。
このお話は、その頃、クラスメイトの男子(名前はT君とします)から聞いたお話です。
最近、愛犬と散歩していたT君と偶然顔を合わせたことでこのことを思い出し、
彼に許可を取ったので、今回はこのお話を語らせていただきます。
◇◆◇
その日の夜、T君はあるテレビ番組を見ていました。
様々な怪談を実写ドラマ化する番組で、この日は「耳なし芳一」の放送回。
耳なし芳一は、小泉八雲の『怪談』に収められた代表的な怪談。
壇ノ浦の戦いを語る琵琶の名手・芳一は、その腕前を平家の亡霊に気に入られ、
夜な夜な墓場へ呼び出されます。
寺の僧たちは危険を察し、芳一の全身に経文を書いて霊から守ろうとしますが、
耳にだけそれを書き忘れてしまいます。
やがて亡霊が現れ、姿の見えない芳一を“耳だけが残った存在”と勘違いし、
証として耳をもぎ取ってしまいます。
芳一は命こそ助かったものの、以後「耳なし芳一」と呼ばれるようになり、
怪談として語り継がれることになりました、というお話です。
T君はそれを見ながら、ふと眠気をもよおし、
放送の終盤近くでうつらうつらとしてしまいます。
そのとき――どこか遠くの方から、こんな呼び声が聞こえてきました。
「ほーいちー……ほーいちー……」
T君は「俺、ほーいちじゃないし」と思ったそうですが、次の瞬間。
「みーつけた」
そう、耳元で囁かれたのを感じたのです。
T君はビクッ!!と驚き、眠気も吹き飛び、
冷や汗と跳ね上がった鼓動をドクドクと感じながらテレビ画面を見ると、
ちょうどドラマの中で幽霊が芳一を探し、
耳だけを見つけてニヤリと笑いながら「みーつけた」と言う場面。
なんだ、テレビの音声か。T君はそう思い、一度は安心したのですが――
あの「みーつけた」は、テレビからではなく、明らかに“耳元で囁かれた感じ”がした。
T君が聞いたのは、テレビのセリフだったのか。
それとも、怪談ドラマに引き寄せられた“何か”が耳元で囁いたのか……
◇◆◇
T君にこの話を書かせてほしいと話したとき、彼はこのことをすっかり忘れていました。
でも私は、当時この話を聞いたときとても背筋がゾゾゾとするのと同時に
とても興味深く感じたことで、学生時代から何年も経った今でも
記憶に残っている話の一つになっています。
T君が聞いた「みーつけた」は、テレビの音声だったのか、それとも――
この話は、私が彼から聞いた“本当の話”です。
それと、付け加えまして――
この怪談ドラマ、私も興味はありましたが、
演出があまりにも怖くて、放送一回目の数分で見るのをやめたことを覚えています。
私は怖い話を聞くのは好きなのですが、
怖い映画や番組、心霊スポットなど“目に見える怖いもの”は大の苦手ですから……




