其の七十四「ある駅からかけた電話にまつわる噂」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
このお話は、友人から聞いた“ある駅”にまつわる噂話です。
友人から聞いた噂話なので、本当なのかウソなのかはわかりません。
伝言ゲームのように、人伝てに繰り返されるうちに誇張された噂なのかもしれませんが……
正直、この話を聞いたとき、私は「想像力」をシャットダウンしました。
なので、ここから先を読まれる方は、
あらかじめ想像力をどこか遠くに置いておくか、私と同じようにシャットダウンして、
ただ文字を追うことだけに集中していただく方がいいかもしれません。
◇◆◇
携帯電話を使って、ある駅(場所名は控えます)から電話をかけると、
受けた側は通話の中から“気色悪く、不気味で、不可解な音”を必ず聞くという。
その音を擬音で表現すると――
「キィィィィィィィィィィッ……ガガガガガガガンッ……ドゥゥゥゥゥゥゥン……ッパァァァァァァン……ッ!!」
こんなふうに聞こえてくるらしい。
電話をかけた側には、この音は聞こえない。
しかし、受けた側には、この“気色悪く不気味で不可解な音”が必ず聞こえるのだという。
気持ち悪い、というのは確かだが、何の音かはわからない。
だが、想像力が豊かな人は、ある場面を思い浮かべてしまう。
それは――駅構内での人身事故。
まるでその音は、たった今「電車に人が飛び込んだ瞬間の音」にも聞こえるという。
しかし、そのとき駅では何も起きていない。
普段通りのざわめきの中、電車はゆっくり停車し、乗降口が開いている。
では、この駅からかけた通話に混じる音はいったい何なのだろうか?
出所は定かではないが、昔、この駅で実際に人身事故があったらしい。
そのときの音が、今も“ここからかけた電話”の中に入り込んでいるのかもしれない――
そんな噂。
信じるかどうかはあなたにおまかせしますが、
この話、本当らしいんです。
◇◆◇
友人がこの話をしてくれたとき、私は擬音のところで想像力の電源を切りました。
人と電車の接触事故の悲惨な情景が浮かびそうになった私の思考を、
即座に察知してのことです。
背筋がゾゾゾとする間もなく、シャットダウンです。
「ねえ、今後絶対に、駅から電話しないでね」
というお願いも添えて。
みなさんも、駅から電話をかけたとき、
相手から「変な音が聞こえた」と言われたら――
その駅は、このお話の“ある駅”なのかもしれません。
信じるかどうかはあなたにおまかせしますが、
この話、本当らしいんです。




