其の七十Ⅵ「口裂け女の怪異的補正」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
私は怖い話が大好きです。
でも、怖い映画や心霊スポットはとても苦手です。
この「これから広まるかもしれない怖い作り話」を書き始めてからは、
多少ですが怖い映画を見るようになりましたが、やっぱり怖いものは怖いです。
ただ、怖い話を創作するという目線で怖い映画を見ていると、
“怖さの演出”という視点でとても勉強になるなと思うことがあり、
怖いものは怖いと言いつつも、以前よりは……
少しだけ耐性がついたかなと思っています。
それはそれとして。
今日は、怖い作り話というより、
様々な怖い話、怖い映画、都市伝説の怪異を見聞きする中で、
私・風間咲良が興味深く思ったことをお話したいと思います。
◇◆◇
あまりに怖すぎたことで、後から弱点を付け加えられた怪異がいる。
私はこの話を聞いたとき、「ん?」と首を傾げました。
弱点が“後付け設定”された?
それほど怖い怪異が?
しかし説明を聞けば、なるほどと納得し、
怖い話を書く者としてとても勉強になる話でした。
例として挙げられたのは、私の出身地が発祥と言われる「口裂け女」です。
彼女は1979年に日本で爆発的に広まった都市伝説の女性の怪異。
マスクで口元を隠した女性が夜道で子どもに「私、きれい?」と問いかけ、
「きれい」と答えるとマスクを外し、耳まで裂けた口を見せる――。
逃げても無駄。
彼女は100メートルを3〜6秒で走るという超人的な俊足。
当時の子どもたちが逃げ切れるはずがありません。
まさに「出会った瞬間に詰み」です。
そのあまりの怖さに、都市伝説は“逃げ道”として弱点を後付けしました。
最も有名なのは「ポマードと唱える」。
生前の整形手術で担当医が使っていた整髪料の匂いがポマードに似ており、
その匂いを思い出すとパニックを起こして逃げる、という話。
また岐阜・愛知周辺では、飴を渡すと喜んで帰る、
あるいは気を取られて追ってこないという地域限定の伝承もあります。
これらはすべて、
「子どもが怖がりすぎないように作られた後付け設定」
なのだとか。
つまり、元々の口裂け女は
“出会ったら詰みの最強怪異” だったのです。
◇◆◇
私はこの話を最近知りました。
確かに、弱点がなければ当時の子どもたちは外に出られなかったでしょう。
ただ、少し可哀想だなと思うのは口裂け女です。
あまりに怖すぎたため、たくさんの弱点を後付けされ、
怪異としての最強性を削られてしまったのですから。
でもまあ、ゲームでも強すぎるキャラには調整が入るように、
都市伝説という物語の中でも同じことが起きたのでしょう。
怖い話も“怖すぎる”と調整される。
そう考えると、私も怖い話を創作するときは、
後付け設定が必要にならない程度の“ちょうどいい怖さ”を意識しようかなと、
そんなことを思いました。
◇◆◇
今回の話は私の創作ではなく、
怖い話を作るために様々な書物や動画、オカルト番組を見て知ったこと。
そしてそれを知った上での私の感想です。
とても怖い怪異を生み出したのは「人」。
そして、怖すぎて収拾がつかなくなった怪異に弱点を付け足したのも「人」。
……人間の想像力って、ある意味とても怖いですね。
この話、本当にそうだと思います。




