其の六「霊感の強すぎる友人」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
これは創作怪談を書いている中、「そういえば昔こんなことがあったな」と思い出した出来事です。
二〇代の頃、私には強すぎる霊感を持った友人がいました。
友人というには少し違うかもしれない。頻繁に会うわけではなく、ある時期になると毎週のようにある場所で出会うことになる、趣味友のような……仮にH子さんとします。
彼女とは、毎年冬になるとスキー場で顔を合わせ、H子さん、H子さんの友人A子さん、私の友人N子と私の四人でゲレンデをのんびり滑るというスノーボード仲間。中でもH子さんは飛びぬけて上手く、ゲレンデを滑走する姿は周囲が注目するほど華麗でした。
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知り合って何年か過ぎた頃、多分三シーズン目。私が21歳の冬だったと思います。
スキー場での昼食中、H子さんの友人A子さんからこんなことを聞きました。
「H子って、むちゃくちゃ霊感強いんだよ。」
「そんなに強くないってっ」
それに間髪入れないタイミングで私の友人N子も言います。
「咲良も、高校時代“霊感少女”っていわれていたねー」
「私は、怖い話が好きなだけで霊感は全然ないよー!」
そんな会話から、私たちのテーブルでは謀らずも「冬の怪談話」が始まったのでした。
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高校時代の夏休み。
同じ部活で仲の良いH子さんとA子さん、他男子3人を含む5人で、地元で「ここは必ず出る!」と言われている心霊スポットに肝試しに行くことになります。
その頃から自分に霊感があり、それがとても強いことを自他ともに知られていたH子さん。
彼女がいれば、そこに何がいるか分かるし、本当に危ない時は知らせてくれるから大丈夫と、皆がそう思っていました。
H子さんは気が進まないながらも、その日の夜、5人での肝試しに参加することになるのですが……
結果、「その心霊スポット、必ず出ると言われていたのに何一つ怖いことは起こらなかった」のでした。
必ず出ると言われている場所だっただけに、H子さんを除く参加者四人はどこか残念そうな顔をしていました。
ですが、その中の一人だけ。男子3人の一人、Bくんは、残念とはどこか違う表情でチラリとH子さんに視線を送っていました。
次の日、男子の「宿題共同作戦だ」の一声で、5人は図書館に集合しました。
夏休みの宿題を短期集中で協力して済まそうという作戦らしいです(笑)
5人集まれば雑談にも花が咲いてしまうもので、短期集中で宿題を済ませようという作戦のはずが、その進み具合は長期戦が予想されそうなもの。
そんな中、H子さんが少し席を外したとき、肝試しの時どこか違う表情をしていたBくんがH子さんの後を追い、こんなことを言いました。
「H子さん。見えてた?」
「うーん……たくさんいるけど、見えないなぁと思ってた……」
そう言うH子さんに、Bくんは耳打ちするように小声でこう言います。
「やっぱりかー。実はさ、俺、見えてたんだ。幽霊。むちゃくちゃ沢山いた。」
H子さんはこの時、Bくんが実は霊感がある人で、それをずっと隠していたことを初めて聞きました。
そしてBくんは続けてこう言います。
「みんな、物陰に隠れて怯えるような目をしてH子さんを見ていた――」
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「H子の強い霊感に恐れをなして、幽霊が物陰に隠れて震えていた!というお話でした!」
A子さんは最後、明るい声でそう話を締めくくりました。
H子さんはその様子に、どこか照れているようにも見えます。
その様子から私は、この話に「怖い話とは別の続き」があったのかなと思ったのですが、そこは詮索することなく(笑)「そんなことがあったんだねー」と目を丸くしていました。
それまでもH子さんは、幽霊を見ることはあっても、幽霊が近付いてくるという体験は無かったといいます。そしてA子さんのこの話を聞く限り、H子さんは相当強い霊感を持っていて、それは幽霊も恐れおののくほどのものなのだなと――
このあと、私の友人N子は、私の霊感少女エピソードを披露していましたが、それはまた別のお話ということで(笑)
約20年前。あの頃20代、今40代の私の思い出の一つ。
創作怪談を書いている中で、「そういえば昔こんなことがあったな」と思い出した出来事です。
みなさん。
この話は、私の思い出話――本当の話です。




