Chapter 010_空中庭園
「は、畑があるんですか!?…乗り物なのに?」
飛空船には錬金術師【烏】が生み出した究極の錬金道具
無限魔造装置【アマテラス】
が搭載されている。
アマテラスは名前の通り無限に魔力を作り出す装置であり
燃料不要で魔力を生み出し続ける。
「ふふふ!イイわね、イイわね!その反応!!」
「オレも最初は驚いたもんなぁ〜」
戦艦の砲弾も巡空艦のミサイルも修理用の部品や道具すら
アマテラスの魔力から生み出せる。
蛇口を捻れば空中で新鮮な水…H2O…を、ほぼ無限に手に入れるコトもできる。
長期間に渡って補給ができない可能性が高い”未踏領域”への冒険において
コレがどれ程大きな強みか、想像に難くないだろう。
「…因みに【養鶏場】もあるぜ。」
「ふぁっ!?よっ、養鶏…に、鶏!?」
「おうよ、ニワトリ!」
しかし、魔術をもってしても生み出せない…にも関わらず生物には必須の…物が存在した。
それは【食糧】である。
「さ、さすが。魔女様の船だね…」
魔女様によると、調和魔法で食糧を生み出すコトは…不可能ではないが…”見た目だけ”で栄養価も低く、美味しくない。しかも、(動物にしても、植物にしても)収穫できるまで時間がかかってしまう。
最終的に、
魔女様と弟子達が辿り着いたのが
「既にある作物を改良したり効率的に育てる為の魔法を編んだり、魔道具を開発するのが最適解」
という答えだった。
このため飛空船には大量の備蓄食料に加えて”畑”や”養鶏場”といった施設が設置された。
コレらの施設は“生物は保管できない”というストレージバッグの制約を回避して生鮮食品を生み出すコトができるため乗員の健康維持に大きく貢献できる…
見た目と印象以上に重要な施設なのだ。
「「「だよな(ね)〜」」」
誰のアイデアかは、推して測るべし…
………
……
…
「・・・んふふ。もうすぐ咲きそう?」
ところ変わって、
旗艦である戦艦オベロンにある秘密の区画…
妖精たちの憩いの場【花園】
「…お母。さま…」
「お母様!?」
「ほんとだ!お母様だー!!」
【花園】は人工妖精達とって、とてもとても…生きるのに必須の…重要な施設である。
通常は地上の…飛空船の空港に併設されているコトが多い花園であるが
長期任務に赴く”ファントム・ジ・オペラに従事するアニマ”のために用意された。
妖精のための空間であるため、その存在は秘匿されており
知っているのは上層部のごく僅か。「船内のドコのあるのか?」まで知っているのは
造船にかかわった技術者のごくごく一部。
魔女様特性の認識阻害魔法によって入り口を見つけるのはほぼ不可能。
妖精以外が入室するには魔女様か”魔女様の1番弟子”のどちらかの同行が必要。
「・・・んふふ。みんな、こんにちは。無理してない?ご機嫌麗しゅう御座いますか?」
神話級に秘匿された場所である【花園】はアニマ達にとって
”憩いの場”であり、”家”である。
定期的に休暇をとらなければならない宙舞妖精や不定期に趣味に没頭する司書妖精の為に
休息用のベッドや雑談室…お化粧室にクローゼット。小さな図書館に喫茶コーナー。
花壇や、小さな池まである。
「…キュウリの。お花。もうすぐ。咲くの…」
「はい!元気です!」
「ご機嫌麗しゅう御座いますお母様!」
「わぁ〜い!」
客室乗務員として生み出された宙舞妖精や
情報処理のスペシャリストとして生を受けた司書妖精
ヒトとコミュニケーションを取る前提で造られたアニマではあるが、
そうは言っても、人間が”そう”であるように会話や
付き合いの中で…たとえソレが好意的なモノであったとしても…ストレスを感じる。
アニマは肉体的にはヒトより頑丈であり、少ない食料や魔力で動くコトができるが、精神的には人間より脆い側面もある。
「んふふふ!・・・実るのが楽しみね!」
「元気そうでよかったわ。」
「ふふふ。綺麗なカーテシーで素敵よ。」
「大きくなっても甘えん坊なんだから・・・」
【花園】はその為の…妖精達が心と体を休ませる為のケア施設である。
贅沢な待遇に見えるかもしれない。
しかし、その代わりに
彼女達はヒトの都合で生み出され働いているのだ…
「…うん。楽し。み…///」
「ねーねーお母様、何しに来たの!?…う?休憩?」
「私達と一緒だ!」
「一緒だ!!」
始めから軍用として生を受けた艦船の飛行妖精達と違い
宙舞妖精や司書妖精は民間用…民間機や地上で運用する前提で創られたアニマを流用しているに過ぎない。
長時間ずっと、ヒトの側に居続ける状況は想定されていない。
何が起こるか分からない未踏領域に足を踏み入れるなど、
本人たちは考えたことも無かった。
しかし、怒号飛び交う司令室で職務を全うしなければならない。
船員の世話を見てやらなければならない。
生と死の間に身を置かなければならない。
ストレスでいっぱいになった時、彼女たちの心と体に何が起こるか…
…創造主が臨床実験を”絶対に”許さなかったため、
それはだれにも分からない…
「・・・んふふふ!もちろん、いいわよ。それじゃ、畑のそばにテーブルセットを持ってこようか。」
「「「さんせー!」」」
「…う。ん…///」
それでも彼女たちは、誰ひとり異を唱えず…どころか、
母から”お願いされた”と大喜びして兵器に乗り込んだ
自分達の働きが母の実力の証明だと信じて。
母のページが更に積み重なると夢見て。
お母様が喜んでくれると。想って…
「・・・みんな。今日までどんなお仕事をしたのかな?教えてくれる?」
「「「うん!」」」
「…う。ん…」




