Chapter 004_ファントム・ジ・オペラ①
「ままー!!!」
デジャヴぅ…
「はぁっ・・・」
空から降ってきた無邪気な声に
目を伏せながらため息をついた劇場の主は
『パッチンッ!』
小さな仕草で指を擦った。
すると…
「わふぅ!」
理のままに愛する娘を重力の鎖から解き放ち
そして…
「まま〜 ∩@^_^@∩」
…と。力王【セト】の効果範囲から手を伸ばす娘が
瞳の高さまでユックリと降りてきたタイミングを見計らい
「・・・ユキア。飛空船から飛び降りちゃメって、何度言えば分かるの?」
と、お説教を始めたのだった
「う〜…だってぇ…」
「だって。じゃ、ありません。」
「ま、ままだって…ひ、飛空船から飛んでっちゃったもん!ユキだって飛びぉ…」
「・・・・・・は、母はオベロンと提督に断ってから飛んだわ。でも、貴女は空舞妖精たちの制止を振りきって飛び降りたんでしょ?」
「………え、ぇと…」
「ほら、みなさい。皆んなに迷惑をかけているじゃない。もうすぐ大人になるっていうのに。仕方のない子ね・・・」
「えへへぇ〜…」
…そんな母娘の横で
「ベルナールさん。気を付けてくださいね…」
「忘れ物ない?おにーちゃん…」
「せーぜー気張りなさい!」
3姉妹はそれぞれの言葉で彼を励ましながら
「あ、ありがとね、皆んな。い、行ってくるよ…」
預かっていたリュックと剣を手渡した
「よっ…と…」
リュックに肩を通し剣を佩いたベルナールが
フォニアに向き直り
「そ、それで…魔女様?飛空船にはどうやって…」
遠慮がちに尋ねると
「・・・う」
母親の胸に頭を突っ込んで甘える末娘のフワフワな耳を
撫でていたフォニアは
娘を抱いたまま彼に向き直り
「えぇと、迎えが・・・」
…言い終える前に
「母様ー!」
聴こえたその声に
「「「っ!!!」」」
真っ先に反応したのは3姉妹だった。
そして、
『『『ひしっ!』』』
「うをっ!?」
なぜか?
ベルナールにしがみついた。
そして間をおかず
「母様!!」
フォニアの前に靭やかに着地したのは
銀の長髪を揺蕩わせ、白金色の瞳をギラつかせた…
「エ、エル…フ!?」
瞳以外は何処からどう見てもエルフな
長身の青年であった
「むっ…」
ベルナールの声に気付いた青年は『キッ』と向き直り
「キサマ!」
と叫びながら詰め寄り
「何者だっ!?」
先程まで持っていなかったハズなのに!?
細身の槍を突き付けた!!
「うをっ!?」
目の前に現れた鋭い穂先にベルナールはたじろいだ…
「「お兄様!」」
「うをおっ!?」
…と、同時にリチアとミーリアによって
後ろに大きく引っ張られ、更に
『バチンッ!』
閃光と火花。金属音と破裂音を伴いながら
「兄様!妹に刃を向けるとは何事ですか!?」
…と、
青年の穂を弾き、煙を上げる…先端が溶け落ちた…剣を
青年に突き付けるセルディアが
ベルナールの前に立ちはだかった
「ベルナールさんは私達の…だ、大事なひとですっ!」
「ふえっ!?お、おね…お、おにーちゃんは宿の従業員だし、お母様の患者様でもあるよ!」
「お父様にもお母様にも何度も言われているのに…またやったわね、恥知らず!せーぜー怒られるがいいわ!!」
3姉妹の言葉に
『キッ!』
と、鋭い視線を向けた青年だったが…
「・・・アリシュオン。」
その、小さな声に
「!」
顔を引きつらせ、全身を強張らせ、冷や汗まで流し…
「・・・つい、この間。注意したばっかりなのに・・・もう、忘れちゃった?」
…あくまで。
いつも通りの笑顔で…
「…i」
「・・・母は悲しいわ」
胸に頭を埋めて震える娘を抱いたまま
小さな体から這い出した水銀色の蛇… 竜【ヒュドラ】に
『バリバリ』と、アークが迸る
青年の槍の穂先をそのまま飲み込ませ
「・・・悪い子ね。」
青年の頭上には力王【セト】が
「っ…」
背後には熾天使【ウリエル】が…
『ブシュルルルゥ』
…そして。
主の下へ這い戻った蛇が吐き出した槍を受け取った
【夜の魔女】は
「・・・しばらく【ララ】は預かります。いいわね・・・」
果て無き夜の瞳に…
「は、はい…」
無力な星屑を沈め
「・・・持ち場に戻りなさい。」
「…はい。」
タイミングよく、青年の背後に降りてきた小型艇に
乗っていた厳しい軍服姿の髭の御仁に
「・・・艦長殿。」
「はっ!」
「・・・愚息がご迷惑をおかけしました。」
「い、いえ。そんな…ア、アリュシオンどn…」
「厳格な裁きを・・・最低でもマスト吊り下げと、その後の謹慎を願います」
「え゙…いぇ。ソレは…」
「・・・お願いしますね?」
小さな女の子が軍人に凄む姿は”可愛らしい”ものですら
あったかも知れないが…
「ぎ、御意に。魔女様…」
蛇と星と天使の影に隠されて成りを潜め。
そして…
『パッチンッ!』
軽い指の音と共に
「ぐほっ!?」
青年を小型艇まで吹き飛ばし。
『ドスンッ』
と、乱暴な音を立てた青年の事を気にも留めず、
腕を斜め下に伸ばして
「・・・さぁ、おいで」
『ルゥ〜///』
みるみる小さくなった蛇を指に這わせ
『…!』
星を帽子の先に乗せ
「…」
深く頭を下げた天使を見送り
「・・・まったく。困った子ね・・・」
と、
ため息交じりに呟いた




