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Chapter 003_空飛ぶ劇場

飛空船の生みの親である


錬金術師【烏】…夜の魔女…フォニア


は”自ら開発した”飛空船の軍事転用を固く禁じた。

兵器は勿論、追加機能や外装に至るまで、

攻撃に利用できたり敵意を抱かせるデザイン

(例えば、砲塔がなくても重力魔法を利用すれば砲弾を射出できるし、船底にトゲのような突起を付ければ地上の相手を傷付けられるが、フォニアはその可能性を初手で潰している)の一切を禁止した。

(因みに、飛空船から爆弾を落とせば爆撃できる…と、思うかもしれないが基本的にソレはできない。なぜなら飛空船の周囲に張られた重力魔法によって、物体が地上まで落下しない為である。)


為政者の思いがどうあれ、

(母に忠実な)飛行妖精に頼らずに飛ぶことが出来ない現状。

飛空船の平和利用は”約束”されていた。



しかし、国際会議で議決された国際プロジェクトの

目的地は【未踏領域】…ヒトの手も目も筆も及ばぬ

「綴られざる白紙の地」である。

“冒険者”という職業があってなお、2,000年以上踏破されない理由がある。


3大大陸一筆書きの途中で

【靂龍ララエヤンクク】や【凍龍メーテル】

を目の当たりにしてきた夜の魔女その人がそのコトを一番よく知っていた。


理想だけでは超えられないページの境目があるというコトを…




















…強い秋風が吹いた


「・・・来たわね。」



それ”ら”は茜の陽を反射して。空の彼方の点から

やがて、一群の星々として現れた。


まるで魔法のように…



「お、おい」

「アレ…」


夕空に現れた”面積を持つ”群星(むれぼし)

ひとり、またひとりと気付く者が現れた。



「何だろう?」

「星?でも、まだ明るいし…」

「…それに、ちょっと動いてるように…ち、近付いて来ているように見えるわよ?」


草原を抜けて街へ帰ろうとしていた冒険者だけでなく

街の市民たちも気付いただろう



「もしかして…ひ、飛空船!?」

「まさか!?いち、にー、さん…」

「ろ、6隻!?!?」


飛空船が綴られし世界の空を汚して、はや、13年。

アドゥステトニア大陸の多くのヒトがその存在を認識していた。

しかし、開発者の強い意向と物理的制約によって

軍事利用も、大量生産も難しく。台数は限られていた。


また、造船技術が進んでいないリブラリアに巨大な軍艦などあろうはずもなく

軍事行動の一環である”艦隊運用”という概念もなかった。



そんな、「たまにしか見かけない飛空船」が

夕日が映える空に6隻も現れたらどうなるか…



「うそ…だろ………」

「なに…な、なにがはじまるの!?」


航路上にあった他の都市と同じく、

未踏領域調査艦隊は多くの瞳を奪いながら悠然と空を

塗り潰した。



「すごっ…」

「と、とりあえず…」

「…綴っておくか………」


ソレは、リブラリアのヒトビトが抱く

「綴りたい」という好奇心の具現であった



「これ…お母様が造ったのですよね…?」

「・・・ハンマーを奮ったのは技師のみんな。設計図を描いたのは錬金術師のみんな。お金を出したのは各国民のみんな。私はただ、ちょっと、お手伝いしたダケよ・・・」

「…やっぱり。お母様は凄いです…」

「・・・///。」


「おっきいね…」

「・・・先頭を飛ぶのが旗艦・・・あ。旗艦っていうのは、艦隊を代表する船ってことなんだけど・・・旗艦でもある戦艦【オベロン】。全長320m。乗員は空舞(スッチー)妖精も含め、3,000人ちょっと・・・」

「さ、さんぜんっ!?そんなに…」


「・・・オベロンに続く小さいのが駆逐艦の【ウンブリエル】と【エアリエル】」

「くちく…?」

「・・・駆逐艦。小さいぶん、素早い船なの。主な仕事は斥候と遊撃。戦闘時は強襲や撹乱かな・・・」

「戦闘…や、やっぱり、戦うことになるんですかね…?」

「・・・もちろん”無い”方がいいけど。備えは、必要だから・・・」


飛空船の運航には妖精が不可欠である。


操舵士や通信士。見張り役には

視力・聴覚・反射神経に優れ体力もある”獣人”が最適であった。


機械部の調整と、もしもの時は修理を担当するエンジニアは

ほとんどがドワーフだ。


特殊な技能を持っていたり…あるいは優れた冒険者として…

乗船しているハーフエルフもいる。


そして”艦隊として”規律ある行動を取るために集められたのは

各国・各領主が所有する騎士団員だ。



「・・・エアリエルとウンブリエルに挟まれた2隻は非戦闘艦・・・小さい方が調査艦の【パルティータ】。大きい方が補給艦・・・ベルナール君が乗船する・・・【デスデモーナ】よ。」

「…」


更に、未知の魔物との戦闘が想定されている為、

サバイバル術に優れたベテラン冒険者も多数乗船している。


調査の為に各分野の専門家…研究者…も乗り込んでいる。


もしもの為の治癒術師と薬草師もいる。


乗員の生活の世話とスケジュール管理。力仕事も手伝うし、

時には話し相手にもなってくれる

スッチーこと【空舞妖精】も多数動員されている。



「・・・で。一番後ろの2隻が巡空艦の【ミランダ】と【ロザリンド】。この2隻が、艦隊の戦闘と防御の要ね・・・」

「「「「…」」」」


種族も立場も所属も違う…しかし、同じ目的と強い意志を持った乗員9,000名と

妖精1,500体を集める詩を歌い…



「・・・ベルナール君。」

「は、はい!」


…白紙だった空を魔法仕掛けの(インク)で塗り潰したのが



「・・・ようこそ。未踏領域調査艦隊【ファントム・ジ・オペラ】へ」


小さな姿の偉大な魔女



「歓迎します・・・」


こむぎ農家の娘

フォニア・クニャージ・ツェルノヤール・ピュシカ


その人である。

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