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Chapter 001_新たな旅路

林檎です。


新章!はじまるよっ!!

「・・・ただいま。」


それは、

強く冷たい風が夏の日差しを遮る

秋の初めの日のことだった…



「「「お母様!?」」」

「「「「「魔女様!!」」」」」


3姉妹の母親であるフォニアは変わらず姉妹の様子を見に来ていたが、夜遅く来ることが多く

今日のように午前中…それも、宿泊客が冒険に出かけるような朝方にやって来ることなど

今まで一度もなかった



「ん。・・・ごめんね、みんな。今日はあまり時間がないの・・・」


そう言って、

玄関先に集まり始めた冒険者達を制しながら



「ベルナール君は?」


娘と、その先のカウンターの上で大きな魔法本を開き、宿泊客の外出履歴を記録していた司書妖精…スタカッティシモちゃんっぽいの…に尋ねた。

すると、



「お兄ちゃん!?」

「あいつは今…」

「厨房で配膳を手伝ってもらっています!」


「…呼び出す?」


ミーリア、セルディア、リチア、それとスタカッティシモちゃんっぽいのが答えると



「・・・」


フォニアは一瞬、唇に指をおいてから…



「・・・治癒に関することだから、みんなは、ついてきちゃメよ。」


そう言って、その場にいた全員を黙らせてから



「・・・誰か、彼の仕事を代わってあげて」


姉妹に向けた言葉に



「は、はい!私が…」


スグに手を挙げたリチアに微笑みかけてから



「・・・騒がしくてごめんね。また、今度ね・・・」


そう言って、駆け足のリチアを引き連れて

食堂に入っていったのだった…


………

……





















「…へ?オ、オレが…ですか?」


治癒の事で話がある…

夜の魔女フォニアに呼び出されたベルナールはドキドキしながら彼女の後に続いて離れに入り。そして、

まったく予想していなかった話を聞かされた…



「・・・ん。無理させちゃってごめんね。でも、コレが最適解だと思うから・・・」


話の内容はコウだ



「・・・今日の夕方。国際プロジェクトである【未踏領域調査艦隊】がルボワにやって来るわ。ベルナール君には、この船で雑用として・・・げ、現場に出ることは無いわ。あくまで船内での雑用として・・・働いてもらい。私の治癒術を受けた”貸し”を、返してもらうために・・・」


未踏領域調査艦隊?

雑用として働く?

魔女様の治癒術を受けたコトは確かだけど…


…貸しを返してもらいたい?



「・・・」


…確かに急な話である。

今日も、きっと明日も宿で働くと思っていたベルナールが困惑するのも当然だ。



「・・・順番に説明するね。まず、国際プロジェクト【未踏領域調査艦隊】について・・・」


魔女フォニアは話すペースを少し落として語り始めた



【未踏領域調査艦隊】

この艦隊は、アドゥステトニア大陸に現存する7か国2地域の中でも、実に7か国が協力して企画・計画・実行された国際プロジェクトである。



「・・・私達アドゥステトニアのヒトが知っているのは大きなリブラリアのごく一部よ。この大地の向こうには、まだ見ぬ土地・ヒト・歴史が沢山ある。ソレを知りたいと・・・綴りたいと思うのは、まぁ、当然の欲求ね・・・」


リブラリアという”世界”は広大だ。

アドゥステトニア大陸は…近年、技術の進歩が目覚ましいが…中世レベルの文明なのだから”未知”があっても不思議じゃない。


一方でリブラリアは筆記文化が盛んであるため、歴史を調べたり、遺跡を調査するのが大好きだ。

しかし、異世界太陽系第3惑星地球と同様に、この世界の大部分は海に覆われており、さらに”ヒトの身に余る”魔物が大量に生息している。

くわえてアドゥステトニア大陸のヒトビトは海を”聖域”扱いしているため、航海を忌避する意識が高い。


このため海洋技術がまったく進んでいないし、

今後も期待できないのが実情だ。

しかし、ここにきて…



「・・・大変だったけど、一昨年になってようやく火竜と同等の砲撃を有し、私の(第4階位の)火魔法にも”ギリギリ”一発までなら、耐えらる戦艦を開発できたの。この船なら未踏領域でも何とかなるだろうってコトになって。企画が通っちゃった・・・と、いうワケ。」


「空」は聖域じゃないからセーフだよね!?

ついでに飛空船の武装を開発したぃ…い、いやいや、対・魔物用ですよ!?魔物用!

火竜と同等!?魔女様パネェっす!!


…と、いうわけで

開発責任者である錬金術師【烏】…魔女フォニアと同一人物…に白羽の矢が立ち、彼女が率いるアトリエ【巣籠(すごもり)】で開発が進められ、ついに今年。各国王都でのお披露目式を経て

アドゥステトニア大陸の文明社会が

未踏領域への第一歩を踏み出したのだった…



「そ、それで。ソレとオレが受けた治癒との関係は…」


未踏領域調査艦隊はアドゥステトニア大陸総意の

夢…浪漫…ではあるが…


ハッキリ言って

初心者冒険者の街の宿屋でアルバイトをしているベルナールにとっては雲の上の話である。



「う・・・そ、そうだったね。ちょっと、脱線しちゃったね・・・」


『ふにょん』と、柔らかい胸を押えて深呼吸…

気持ちを入れ替えたフォニアは



「・・・でね。ベルナール君には艦隊に乗り込んでもらって、雑用として働いてほしいの。」

「・・・理由は、はじめに言った通り。私の治癒術を受けた”貸し”・・・ま。見返りとして。かな・・・」


”あの時”のベルナールに月天使の癒しが必要だったのは間違いないが、

フォニアにベルナールの治癒を頼んだのは3姉妹でありベルナール自身ではない。



「見返り。ですか…」


もちろん、ベルナールだって感謝している。


今の自分があるのはフォニアと、そして姉妹のおかげだと自覚している。「イヤ」というわけでは無い。

そんなワケでは無いのだが…



「・・・一方的に決めちゃって、ごめんね。娘達の頼みだから、ホントはタダで診てあげたいんだけど・・・身内以外に治癒術を施したら報酬を貰わなければならないって、決められてるの。これは魔法仕掛けの誓約だから、違反できないの・・・」


夜の魔女フォニアはそう言って、本当にすまなそうに

長い睫毛を伏せた



「あ、あの…」


そんなフォニアにベルナールは声をかけた



「お、お金で払う事は…」


“あの事件”を経験したベルナールは冒険者稼業にやや臆病になっていた。


たとえソレが、雑用…船内の仕事だとしても

今より魔物に近づくのは間違いない。

それも、未知の魔物に。だ…



「…ほ、ほら!オレも冒険者として活動してきたし、アルバイトのお給料も貰っているので多少は蓄えが…」


行きたくない…ベルナールの本音はソレであったが、

ベルナールの所持金を聞くまでもなく



「・・・足りないわ。」

「で、ですよね…」


治癒術は奇跡を起こす究極の医療だ。

しかも相手は紙上最高位の治癒術師…綴られし【月天使】様そのヒトである。


一介の”4級冒険者+宿屋のアルバイト”であるベルナールが払えるハズも無かった。



「・・・ごめんね。」

「そ、そんな!」

「ホントは、もっと早く・・・他の選択肢も考えてあげたかったんだけど。余裕がなくって・・・」


フォニアは、娘世代である”彼ら”には自由で沢山の選択肢が在るべきだと思っていた。


だから…






「あ、謝らないでください魔女様!…い、行きます!力仕事でもトイレ掃除でも、なんでもします!む、むしろ…お、大きなチャンスを下さい、ありがとうございます!!」


彼の。そんな言葉に



「・・・ん。ごめ・・・ん、んーん。が、がんばって!」


そんな返事をする(ほか)

なかった…

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