64. 占い師アベリア
占い師の名前はアベリアと言った。彼女の前に座ると、まずは手相を見始めた。
(こっちの世界も手相見があるのか。)
占い師はウンウン言いながら、一通り見たのち、
「あなたは今、人を信じられなくなっていますね。」
「ま、まあ」
(信じられないのは人じゃなくて神様だけどね。)
「仕事を辞めようかどうか悩んでおられる。」
「いや、悩んでないけど?」
「いやいや、私には分かります。あなたは今、仕事を辞めようかどうか悩んでいます。」
「はあ。」
「それではこうしなさい。あなたの大切な子供が、今のあなたと同じ状況にいたら、あなたはどう助言しますか?」
「自分の子供が?」
「そうです。あなたは息子さんに対して、『そんな仕事は辞めろ』といいますか? それとも、『もう少し頑張ってみろ』といいますか?」
「なるほど。」
確かに自分のこととなると、他の人の迷惑とかわ考えて、辞めようと思ってもなかなか決心がなつかないが。
しかし、実際にいるかどうかはともかく、息子がブラック企業に働いているとなれば、将来を考えずに辞めさせるだろう。
「分かりましたか? 今、あなたが息子さんに対して言おうと選んだほうが、あなたが今後進むべき道です。」
「わ、分かりました。師匠!ぜひ、私の師匠になって下さい。」
占い師も自分の未来は預言できないのか、俺の急な申し出に戸惑っているようだった。




