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61.ムサシの剣
鍛冶屋『ノルド』に入ると、店内には誰もいなかった。奥の鍛冶場から、作業の音が聞こえたので、
「お願いしまーす。」
と、何回となく大声で呼びかけた後、ようやく主らしきドワーフが現れた。
「なんじゃ、騒がしい。帰れ、帰れ。」
ぶっきらぼうに帰されそうになったので、
「こ、これを見てくれ。」
俺はあらかじめスケッチしておいた巨大じょうろの絵を渡した。
「なんじゃこりゃ。こんなものワシが作るわけなかろう。」
「そこをなんとか!」
俺が、どうにかこうにか主を引き留めていると、ユーコが店に陳列してあった古びた剣のほうに歩いて行き、
「これ、ムサシの剣。間違いない。」
と、言い出した。
「ムサシが鞘を投げて、私がそれをくわえて来る遊びをいっぱいした。これ、私の歯型、間違いない。」
そう言って、鞘を抜いて、正眼に構えた。
その姿はどこか妖気を帯びているような気がして、俺はゾクッとした。




