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━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・

女帝:彼女の事は俺に任せろ!が、これ?

下僕:もし…あの子に何かあったら私は…

〼田:申し訳ございません…

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・


希望ちゃんは高熱を出して倒れていた。

現在希望ちゃんはAbashiri内の医療施設に運ばれ精密検査を受けている。

担当医師の鉄入くんの話しでは原因は不明との事だが、睡眠不足もその要因の一つのようだ。


睡眠不足…

それはやっぱりニーベルングのせいだよね…


━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・

白船:夜中の3時に一人でモンスター狩りをしてる御隠居さんを見たことがあるもん…

山ガール:それで止めなかったの?

白船:…ごめん…すごく楽しそうだったから…

樹液:〼田さんだけを責められないよ。私たちも配慮が足りなかったんだし…

紅茶:…早く元気になってくれたら良いね。

〼田:…。

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・


懸念した外部からの要因だが、それは警備担当の鉄入くんが絶対にありえないと断言していた。

Abashiriにやってくる人間といえば地球教の関係者だけだが、立ち入る際には何らかの病気に感染していないか、また何かのアレルギーを誘発するような物質が衣服に付着していないかなど、それこそ隅から隅まで厳しいチェックを通らなければならない。

そんな訳で故意に危害を加えるような物騒なものは持ち込めないし、仮にチェックを通過できたとしても、そこら中に設置されている監視カメラをかいくぐっての犯行や、湖の小島以外立ち寄ることが許されない彼らに希望ちゃんのコテージまで移動する事は不可能に近い。


さすがにコテージ内には監視カメラはないので希望ちゃんが倒れた際の状況は分からないが、いろいろな事が立て続けに起きたせいで少し神経質になり過ぎたかな…


希望ちゃんはこれまで病気らしい病気をした事がないそうで、面倒を見ていた鉄入くんたちも皆ショックを受けていた。

絶えず監視をする事でストレスを与えてしまうのではないか…そういった配慮からコテージに常駐する事の無かった鉄入くんたちだが、今回の一件でそれも見直される事となった。

これで今後希望ちゃんに何かあっても安心だけど、ゲームをする時間は減っちゃうだろうから、それはそれで荒れそうだね…


とりあえず希望ちゃんは、しばらく入院して様子を見ることが決定した。

大袈裟なのではとも思うが、希望ちゃんもこの世界の大切な人間。

例えSランクの入所者とはいえ、手厚い保護を受ける対象に違いはない。


━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・

暴君:御隠居さんが戻るまではゲームの進行はお休みにしよう。

下僕:そうですね。いま世界はいろいろ面倒な方向に動き出そうとしています。今はそちらに注意した方が良いかも知れません。

〼田:…そうですね。

お父さん:アルフヘイムや第五火星に地球教の関係者と思われる人物がしきりにやって来るのもそのせいですか…

女帝:宇宙軍もそうらしいよ。兵士の中にも信者がいるから機密漏洩が無きゃ良いけどね…

下僕:皆さんはしばらくの間、地球教の関係者と直に接触するのは出来るだけ避けて下さい。政府や地球教とは私が窓口となって対応します。何か分かり次第またここで報告しますので、それまではあまり彼らを刺激しないようお願いします。

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・



ヘッドマウントディスプレイを外した宗一郎は、机に置かれた写真立てを手にとった。


そこには笑顔で写る若き日の父親と幼い頃の自分と妹…

ソール恒星系にある小さな一企業にすぎなかったユグドラシルを、一代でここまでにした父。

家庭を顧みず会社を大きくする事だけに邁進し、母の死に目にも立ち会おうとさえしなかった父。


そんな仕事人間だった父が変わったのは、この世界にそれまでいなかった冒険者たちが現れてから…

姿かたちや話す言葉は同じでも、どこか自分たちとは違う人間。

こちらからの問いかけや接触にいっさいの関心を示さず、まるで自分たちが見えていないかのような不思議な人間。


父はそんな彼ら冒険者を地球人と呼んでいた。

当時はそれがいったいどういう意味なのか、何を根拠にそう呼ぶのか分からなかった。

でも父は、彼ら冒険者は最初の地球からやって来た人間だと、それがこことは違う別の世界だと、この世界で最初に気づいた人間だった。

でもそれは自分が偽りの存在だと気づかされる事にもなった訳だ。


父は頭がおかしくなった。

当時は皆そう思っていた。


社長職を自分に譲り一線を退いた父は冒険者の研究に没頭し、いまでは失われつつある古い技術の研究までするようになった。

それは、エンジニア一家に生まれながら、その才能は経営者としてのそれであり、開発や研究にはいっさいの興味を示さなかった父が初めて見せた姿だった。


そして起こったこの世界の人間の大量失踪事件…父もまた、彼らに協力した一人だった。

そして、この世界に置き去りにされた一人だった。

彼らに資金を与えコロニーを建造し、自分も最初の地球へ旅立つ事を熱望していた父は、いったいそこに何を望んでいたのだろう…

この世界に取り残された父は、いったいどんな気持ちで生きて来たのだろう…


「宗一郎様。少しはお食事も取ってください。」

宗一郎の秘書を務めるネイがサンドイッチと紅茶を運んできた。

確かに…そういえば、最後にまともな食事をしたのはいつだったかな?

机の上にはカップラーメンの容器が積み上げられている。

もちろんネイは毎回食事の支度をしてくれる。

それなのに自分は部屋に閉じこもってゲームをするか、モニターや書類とにらめっこ…

これではまるで自分も更生施設にいるようだ。


「食べ終わったら、次はお風呂に入って下さいね。その間に掃除をしますから。」

モチャモチャと手の込んだサンドイッチを頬張る宗一郎をしり目に、ネイは書類の整理を始める。

自分の部屋くらい自分で掃除します!

いつもそう言っているのに、まるでお母さんのようなネイに結局は甘えてしまう。


偉そうにしていても、自分もまだまだお子様だね。

さてと!

熱い紅茶を一気に飲み干し、シャワーに向かおうと立ち上がった瞬間、彼の携帯端末が鳴り出した。


それは8年ぶりに掛かってきた父からのデンワ…



「久しぶりだね…元気そうで何よりだ。」

携帯端末の通信を部屋のモニターに接続し、そこに映し出された男の顔をまじまじと見つめる。


「……貴方は誰ですか?」


モニターに映し出された男は、まるで彫刻のように生気のない顔の口もとだけに笑みを浮かべ頭をかく。

「そうだった。この顔を見せるのは初めてだったね。」

それは、いつも何かに失敗すると必ずする父の癖…

「…どうして…そんな事をする必要があったんです?」

「生まれ変わるためさ。人は肉の身体に包まれていては本当の意味での進化はなし得ない。それでは箱を迎え入れるのに相応しくない。だから、この機械の身体に私の魂を移し替えたのさ。箱が与えた技術によって作り出したこの身体に。」


おそらく、今も残る父の身体は脳や中枢神経のみ…いや、そこにさえ手を加えているであろうその身体は、もう全身義体のサイボーグというよりアンドロイドに近いのかも知れない。


「…そうまでして何を手に入れるのですか?」

「…真実だよ。この世界に何の意味があるのか…私たちが生まれた意味は何なのか…それは最初の地球へ行けば、箱を手に入れさえすればきっと分かる。その為に箱に選ばれた彼が必要なんだ…」


「マスターは…白瀬さんは、そんな特別な…あの人は、普通の…」

宗一郎の背中に隠れるようにして立っていたネイが、震える声でそう話す。


そう。彼は普通の人間。

自分たちと同じように怒ったり笑ったり、特別なものなど何もない普通の人間。

だけど人を想って涙を流し、人の為に行動できる優しい友人。

だから支えてやりたい。

まっすぐ折れずに進めるように。

だから守ってやりたい。

いつも明るく笑えるように。

それが、仲間ってもんだろうしね!


宗一郎はネイの手を強く握っていた。

でもそれは彼女の為ではなく自分の為に。

怖くて折れそうになる自分の心を支えて貰う為の子供のような行動。

でも、ネイも強く握り返してくれた。


「今日は何のご用でしょう?」

「久しぶりに息子の顔が見たかった…では、信じて貰えないかな?」

「…。」

「だけどそれは本当だ。今のお前の顔を、お前たちの覚悟を見てみたかった。これは私たちからの宣戦布告だ。どうせお前のことだから、私たちを止めようとするだろう。しかし、今度こそ人は箱の全てを手に入れ、さらなる高次元の存在へと進化するのだ。」

「…人はどう足掻こうと人以上にはなれませんよ。でも変われます。どんなに駄目な自分でも、子供のように情けない自分でも、変われると本気で信じて進んでいけば、答えは自然と見えてくる。人間なんて案外そんなものです。何かにすがって得るものが本当の進化なんて私は思いません。」


宗一郎の言葉を聞いた武夫はため息をつき、呆れたように笑みを浮かべる。

「今さらお互いの価値観について議論するつもりは無いよ。今日はあくまでも挨拶代わりだ。また近いうちに直接会う事になるだろう。梓にもよろしくな。」


通信の切れた暗い画面に宗一郎の顔がうつる。

父の持つ影響力を考えれば、その気になった父を止めるのは難しい。

Abashiriの一件からも父や地球教の幹部には、こちらの情報は知られている。

やれやれ…これでは迂闊に動けんな…


そこまで考えた時、背中で震えるネイを感じた。

そういえば父を見るのは初めてだったね…

宗一郎は振り返ると自分の手の震えを誤魔化すようにネイを強く抱き締めた。

今や人間は彼女たち新しい人類に生かされているだけの小さな存在だ。

それなのに、そんなことすら忘れて自分勝手に行動するのは、子供のワガママと同じだよね…


『ヤバいって!!』

ガタガタと震え出したネイは、白目をむいて宗一郎を突き飛ばすと、身体についた汚れを祓うかのように身に付けていたエプロンを投げ捨て服を叩く。

『ドブのようにすごく臭い!』


あんまりだ…



久しぶりに食べるひとりぼっちの夕食は、やっぱり寂しいものですな…

鉄入くんたちとのおしゃべりも楽しいは楽しいですが、男同士というのがまたなんとも…

でも久しぶりに出された食後のコーヒーは、希望ちゃんがニガイから嫌いといつも紅茶なので、ちょっぴり嬉しいかもですね!


少し濃い目のコーヒーにミルクを垂らし混ぜずに飲むという小さなこだわりを見せつつ、久しぶりのコーヒーを堪能していると、携帯端末が鳴り出した。


それは登録にない知らない番号…


「お話があります。」

それは希望ちゃんの担当医の鉄入くんからのものだった。

俺は取るものも取らず急いでクルマに飛び乗ると、医療施設に向けクルマを飛ばした。


到着した薄暗い施設内には倒れた観賞植物やイスが散乱し、何者かが暴れた形跡が見て取れる。

しかし、この施設に何人も居るはずの警備や施設職員の鉄入くんたちの姿がない…

俺は床に落ちていた空の消火器を手に取ると、壁づたいに希望ちゃんの病室を目指した。


非常灯が灯る通路にも、割れた照明の欠片や書類が散乱し、壁には鉄入くんの物と思われるオイルがこびりついている。

通路を進むと一つだけ明かりのついた部屋を発見し、俺はゆっくりとドアを開けた…


「お待ちして…!」

『キャーーーー!!』


おもいっきり消火器を振り下ろしたので、担当医の鉄入くんの頭は大分凹んでしまいました…「あんまりです」→「ごめんよ」


「これはいったいどうしたんです?希望ちゃんは無事なんですか?」

「落ちて下さい…ちゃんと説明しますから…」


鉄入くんは床に落ちていたレントゲンフィルムを拾い上げながらそう話す。


俺が床に倒れていたイスを起こし腰掛けると、鉄入くんはゆっくりと、でもしっかりとした口調で説明を始めた。


何故こうなったのか…

みんなは何処にいったのか…

希望ちゃんは、今どうしているのか…


静まり返る部屋に、鉄入くんの機械のような事務的な声だけが響くなか…俺は…ただ床だけを見つめていた…




大変遅くなりました(=ω=;)

スマホは…セロテープで頑張っております!

機種変は7が出てからで良いんじゃね?というアドバイスを同僚から言われたので…

このまま行く!

ダメならSE!でも7も気になる!


電車の中で女子高生にスマホを二度見された5の十でした…( ̄∀ ̄;)

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