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Galactic Coordinate 〜地球はどこでしょう?〜  作者: 十 円
ビフレストのその先へ
25/51

025

「こちらアルファ。敵影なし。どうぞ。」

「こちらブラボー。異常なし。どうぞ。」

「こちらチャーリー!あかん!どうぞ!」


「はい!C宙域に急行して!」

第五火星の衛星のひとつ第五フォボスに作られた地下基地に立て籠もった我々は、ラグナロク艦隊の猛攻に悪戦苦闘しております。


ラグナロク艦隊は宇宙煙幕内には進行せず、外側からの砲撃やミサイル攻撃を繰り返している。

煙幕のおかげで観測出来ない我々も、アンドロイドを中心とした目視大作戦を決行!

もちろん俺も交代で出ておりますよ!

今度は本当に、ケーブル一本で宇宙空間を漂う恐怖の作戦となっております。


しかし!こちらも、やられてばかりではありません!

ラグナロク艦隊からは見えないこの宇宙煙幕から、出たり入ったりの一撃離脱を繰り返し、徐々に相手を痛めつける狡い作戦も同時進行しております。

突然現れては、撃つだけ撃って逃げて行く我々に、ラグナロク艦隊はまるでモグラ叩きでもするかのように翻弄されるばかり!


こちらの戦力18,000隻の戦艦は、全て修理と補給を終えている。

でも彼女たちはそうはいかない。

第五フォボスのドックを使い効率良く回復出来るこちらと違い、ラグナロク艦隊は全て直接回復アイテムを使うしかないのだ。


より多くの時間とアイテムを使用させ、物資的消耗と彼女たちの心を折る。

それがこちらの目的だけど、そんな事は向こうだってお見通し。

宇宙煙幕が消えるのを待っていれば自滅するだけ。

だから必ずその前に仕掛けてくる。


彼女たちの目の前で、彼女たちのギルドマスターがさらわれて、その上さらった相手に良いようにコテンパンにされたら、彼女たちの冒険者としてのプライドはズタズタだ。

だから引けない。

引けばこの世界での冒険者の価値は、その程度となめられる。

彼女たちは元ゲームのサポートキャラクターだけど、この世界の亜人と同じ。

亜人の地位向上の為にも頑張って貰わないと。


「司令も少しお休み下さい。」

休息を終えたフレイヤ艦長のペロが、夕食か朝食かも覚えていない食事を持って来てくれた。

そういえば食事どころか、睡眠さえ取っていない。

現在交代で休憩を回している。

人間より丈夫に出来ている彼らでも、休息は必要だし、その方が効率的だ。

特に目視大作戦で活躍中のアンドロイドの子たちには、自ら買って出てくれたとはいえ手厚いケアが必要だ。

アンドロイドの子たちは休息を必要としないが、代わりにメンテと調整を行っている。

アンドロイドは、いつもみんなの為に無理をしてしまう。

だからこんな時くらい、ゆっくり休ませてあげたい。


「みんなの休憩は?」

「あとは司令と同じグループで最後です。」

「そう。…でも眠くないんだよね…」


「これでも飲んで早く寝てくれ。」

ペロと同じグループで休憩していたトール艦長の件が何かを投げて来た。

酒かと思って受け取れば、それは睡眠導入剤。

「司令が早く寝てくれないと、他の連中が休憩に入ろうとしない。」

確かにそうかもね…みんな気を使いすぎ。

しかし…薬のお世話になる日が来るとは…


では、お言葉に甘えて。


ペロが持って来てくれた食事をたいらげ、席を立つ。

「彼女たちに動きがあったら、すぐに起こしてね!」

そう言った俺にペロは笑顔で、件は固く握った拳を見せて答えてくれた。

あの大きな拳で殴られたら、起きるどころかそのまま永眠してしまいそう。


通路には寝起きでまだ眠そうなサポートキャラクターが、大きなあくびをしながら行き交っている。

俺もひとつ大きな伸びをして自室へ向かう。


あの子たちも少しは休息が取れていれば良いのだけれど。



不動明王ブリッジのメインモニターには、各艦隊司令官の顔が並んでいる。

不眠不休。

どの顔もそれを物語っているが、まだ目は死んでいない。


自由・平等・友愛。

エインヘリアルの連中が掲げる革命とは、そんな所だろう。

しかしそんなものは所詮、指導者の奇麗事。

民衆がそんな概念など正しく理解出来るはずもない。

理屈は分かっても、理解出来るかは別の事だから。


もっと良い飯を食わせろ。

もっと良い生活をさせろ。


本音を言えばそんな所だ。

誰だってそうだろ?


生まれた場所・育った環境・生きた時代。

それによって状況は変わる。

でも立ち位置が変わったらどうだ?

支配される側からする側へ。

虐待される側からする側へ。

同じ事をしないと言い切れるか?


水は低きに流れ、人の心もまた…

だってその方が楽だろ?


あの人は、それが嫌なんだ。

自分もそうだから。

だから変えたいんだ。

このつまらない世界も、一番嫌いな弱い自分も。


なら私たちはどう動くか…

私たちはギルド〈ラグナロク〉の冒険者。

それはあの人が、私たちにくれた大切な居場所。

そしてあの人が帰るべき場所だ。

私たちにとってギルドは誇りであり宝物。

その我が家ともいうべき大切な場所を汚すものは、如何なる理由があろうとも排除しなければならない。

ギルドを守り発展させる事が、あの人に出来るせめてもの恩返しだから。


だけど…

私たちは冒険者である前に、あの人の道具だ。

全てはあの人の為に。

この力も、この命も…

あの人の夢も望みも叶えてみせるのが、私たち道具としてのプライドだ。


その為には何でもしよう。


「聞いてるの?」

愛染明王艦長の咲耶が膨れた顔を見せる。

「…ごめん。」

「まったくもう!」

咲耶率いるラグナロク第三艦隊は現在第五ダイモスの調査を行っている。

「予想通り無人だった。」

エインヘリアルは、あのマスドライバーでの攻撃を遠隔操作だけで行っていた訳だ。

「それで行けそうか?」

「何とか…でも封印の解除にもう少し時間が掛かりそう。」


第五ダイモスは宇宙軍が管理しており、そこには宇宙軍の様々な無人施設が存在する。

民間人はおろか冒険者でさえ立ち入る事が出来なかったこの衛星には、宇宙軍から発行されるクエストでのみ訪れる事が出来た。

発掘された鉱物などの回収がほとんどだが、その中に奇妙なクエストが存在した。

それが〈核兵器の保守点検〉

実際には冒険者が行うのではなく、宇宙軍兵士の護衛が任務だったけど。

でもそれは設定上の存在で、使用された事も、する必要も無かったもの。


でも、そこには確かに存在し、使用が出来る。


なら全て使ってしまおう。

直接核兵器を第五火星に打ち込めば、全てが終わる。

その為に用意していたのだろうから。

しかしただ使ったのでは面白くない。

そこで私たちは別の使用法を思いついた。


第五ダイモスを第五火星に落とす。


回収した戦艦のエンジンと、全ての核を使用しての核パルス推進を併用すれば、第五ダイモスの軌道を変える事も出来る。

第五ダイモスを落とす事も、寸前で破壊する事も可能なら、アルフヘイムでも同じ事が出来る。

アルフヘイムを失うのは痛手だが、私たちが守りたいのはギルドであり、その箱じゃない。


この世界に教えよう。

あの人の願いを叶える為なら、私たちはこの世界とも戦う覚悟がある事を。


「ただ一つ気がかりな事があるんだよね。」

「…?」

「核が一つ、足りないの…エインヘリアルの連中が封印を解いて持ち出したのかも知れないけどね。」

「…マスターがそこまでするとは思えんが、注意はしておこう。咲耶は引き続き準備を急いでくれ。」

「了解であります!」


さて。

エインヘリアルに気づかれないよう、精々派手に暴れるとしよう。

今度はあなたの番ですよ。

私たちを止めてみて下さい。マスター。



連日の徹夜で疲れていたのもあり、薬を飲んでベッドに横になった途端でした。

もう寝たというより、気を失ったという感じかな?

しかし、このタイミングですか…

ここに来るのもなんだか久しぶりだね。


真っ白な空間に黒い箱が浮かんでいる。

箱の上には、腕を組み仁王立ちしたネフィリムが待ち構えている。


〈よう来たのぉー!〉


立腹立腹ご立腹です。


〈はい!正座!!!〉

これ以上怒らせても良い事なんてある訳ないので、言われた通り黙って箱の前に正座する。

〈お前にひとつ確認したい事がある!〉

「何でございましょう?」

〈お前は私との約束を覚えているか?〉

「…とおっしゃいますと?」

〈ははっ…お前が初めてここに来た時、言って聞かせたはずだが、やはり覚えていないか…〉

「…申し訳ありません。」

〈……………って言ったよね。〉

「…えっ?」

《何もすんなって言ったよね!!》


ああ〜そうね…なんか言ってたよね…

ドカドカと黒い箱を踏み鳴らし、お怒りダンスを踊りまくるネフィリムに何と言い訳したものか…

でもあれは一方的に言われただけで、約束した覚えはない!←と言ったら殺される!

それはネフィリムの両手にはめられたマペット人形が持つ包丁を見ても明らかだ。


正座から土下座へ。

流れるように滑らかに。

その一連の動作には、一切の無駄もない。

渾身の土下座である。

額を床に擦り付け、指の先まで神経を集中させる。


しかし。

ネフィリムの怒りは鎮まらない。

鎮まるどころか益々ヒートアップし、幼い少女が口にするには、余りにもドキドキするような罵声を浴びせかけてくる。


お前はう○ちだ!←ありがとうございます。

う○ちに群がる金蝿だ!←何と勿体無い。

踏み潰してくれる!←恐悦至極に存じます。


可愛い女の子からの罵声など、極上のご褒美でしかない。

顔は紅潮し、身体が震える。

何を言ってもまったく堪えず、それどころか益々気分が高揚していく俺を見て、ネフィリムの声は泣き声に変わる。


で!


「君ならこうなる前に、この世界を何とか出来たんじゃないの?」

〈…私は神さまじゃない。だから私にこの世界は救えない。私に出来るのは、ただ与える事だけ…私の想いを伝える事だけ。〉


黒い箱から降りたネフィリムは、俺の隣に座っている。

何もない空間を見つめながら、二人で体育座り。

静かに流れるこんな時間も、たまには良いものだ。


君はここで何を見てきたの?

ずっとひとりで、いつまでも変わろうとしないこの世界を見て、何を想ってきたの?

それでいつも届かない叫びを上げて、泣いていたの?


君は優しいから。

ずっとひとりで頑張ってきたんだろ?

止めたくて、救いたくて、それでも変わらない、変わろうとしない人間たちに関わって来たんだろ?


俺はさ…君みたいに優しくないから、みんなを救おうとか守ろうとか思えんの。

でもね。目の前で泣いている人がいたら、笑わせて上げたいの。

それくらいなら俺にも出来ると思うんよ。

だから…


「ありがとう。俺なら大丈夫だから。」

〈うるせぇ…〉

ネフィリムの頭に手を置いて軽く撫でると、ネフィリムは目を両手でごしごしして、赤い目でこちらを睨む。

ネフィリムには、全部分かっちゃうんだもんね。


〈みんな貴方の為に、いろいろ動いている。〉

「…光栄だね。」

〈でも、それも無駄になるかも知れない。〉

「…というと?」


〈もうすぐ何もかも終わるから…貴方たちが宇宙マンボウと呼んでいる生物が、こちらに向かって来てるの。…それも3体。〉


「3体か…そりゃあ大変だ。」

〈…驚かないの?〉

「驚いてるよ。でも、何とかするよ。」

〈何とかなる訳ないよ…だから、貴方だけでも逃げて。〉

「君もか……ネフィリムは諦めちゃうの?」

〈…。〉

「ネフィリムはこの世界をどうしたい?」

〈…守りたい。…でも…〉

「俺には頼りになる仲間がたくさんいる。冒険者をなめるなよ!」

〈…助けてくれるの?〉

「もちろん!」

〈…でも…〉

「でもじゃない。君は俺たち冒険者にどうして欲しいのか、それだけを言えば良いの!」


〈…この世界を助けて!〉


「お任せあれ!」

どこか遠くで音がする。

さて、行きますか!しかし…宇宙マンボウが3体か…どうしようね…


〈死んじゃヤダよ。〉


立ち上がり歩き始めた俺の後ろで、ワンピースの裾をぎゅっと握り、大粒の涙を流すネフィリムが小さな声でそう言った。

こんな時、何て言えば良いのか分からずに、悩んだ挙句結局笑って頭を撫でた。


「また来るよ。」


ちゃんと声に出せたかな?

薄れゆく意識の中でネフィリムの寂しそうな笑顔だけが見えた気がする。



“電話で〜すぅ!”

“電話で〜すぅ!”

“電話で〜すぅ!”


俺の携帯端末から、あまり人には聞かせたくない着信音が鳴っている。

さて…どうしたものか…

宇宙マンボウが3体か…

うちのギルドはいつもアニバーサリーイベントは、最強ギルド決定戦しかやって来なかった。

同時期に始まる宇宙マンボウ討伐戦まで回せるアイテムが無かったから。

だから参加してもアイテムを使用せず、いつも様子見だけ。


だからあまり詳しくないが、知っているのはいつもギリギリだった事。

専用アイテムを使いまくる上位ランカーたちや、多くのプレイヤーが参加してもやっと1体、須弥山到達前に倒せていた。

そんな宇宙マンボウが3体…


須弥山の金剛杵で1体は必ず倒せるのは知っているが、それはゲームの時の話。

今のこの世界で同じ効果が得られるのかは、やってみなけりゃ分からない。

それに、それで倒せたとしてもあと1体…


ベッドに横になったまま、ボーッと天井を見上げる。

もしかしたら上手くいくかも…

そんな事が出来るなんて聞いた事もないし、試したやつもいないだろう。

でももし上手くいけば、時間が稼げる。


そんな事を考えていると、轟音と共にひしゃげたドアが目の前を飛んでいく。

「起きろよ!!!」

ドアを蹴破り部屋に飛び込んで来た件が、ものすごい形相で近づいて来る。

狼狽える俺を担ぎ上げると、ものすごい速さで司令室へ向け走り出す。


ラグナロクが動き出した。

第五ダイモスで大規模は爆発が発生し、その軌道を大きく変え、このままでは第五火星に落下する。


走りながらそう話す件の顔は青ざめていた。

やれやれ…

それどころじゃないのに…


宇宙マンボウに第五ダイモス。

誰か助けてくれ…




遅くなりました…

次は…今月中には何とか…ねっ

がんばります✧٩(ˊωˋ*)و✧


でもまだ何も考えていない十でした。

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