初メテノ友達
「・・・話はわかった。だが、俺の要求が覆ることはないし、実力行使も辞さない」
柳児は無下にそう言うと、紫の瞳にかかった黒の長髪を払って一虎を見据える。自分が本気をぶつけたように、柳児からも本気の意志をぶつけられて、一虎の身体が緊張する。
しかし、柳児の心が見ているのは、全く別の人物だった。
だがな、と前置いて、柳児が問うた。
「俺がこう言うことは、ここにいる誰よりもお前が知っていたはずだ。それをわかっていて、どうしてここにコイツらを連れてきた?どうして俺と竹叢を戦わせたんだ?」
柳児の厳しい目は、再び赫夜の方を振り返り、
「答えろ!桧王!」
その名を呼んでいた。すると赫夜の影から、恐る恐るといった形容がよく似合う様で、小柄な〔形人〕、右腕の治った桧王が顔を出した。
柳児は怯えた様子の桧王を睨み、問うた。
「この場所は、お前しか知らない。この時間に、俺が〔荒王〕の操作訓練をしてることもな。なぜだ?なぜ竹叢と赫夜を、分かり合えないとわかってる俺たちを引き合わせた?」
「柳児様、ワタクシハ・・・」
「ち、違うんだ!僕が桧王から無裏やり・・・!」
「答えろ!」
柳児の本気の怒気に、桧王を庇おうとした一虎は口を噤む。わずかな沈黙が生まれる。
そして、
「ワタクシハ・・・」
桧王が、
「ワタクシハ、嬉シカッタノデゴザイマス」
そう言った。
スリットの中の赤い単眼を柳児に向け、静かに言った。
「ワタクシハ、〔ジン核〕ノ意志ヲ表出サレタ〔形人〕デゴザイマス・・・柳児様ガ、ソンナワタクシヲ〔人間〕ノヨウニ思ッテ下サッテイル。ソレハ、ワカッテイマス。デスガ、ヤハリワタクシハ、〔人間〕デハアリマセン」
「桧、王・・・お前・・・」
「デスガ・・・」
桧王が、傍らに立つ少女、赫夜を見上げた。
「ワタクシハ、〔同類〕ノ友人ヲ見ツケテシマッタ。出会ッテシマッタノデス」
桧王の眼差しに、赫夜は嬉しそうに微笑して左手を伸ばす。その手を握った桧王が再び視線を動かし、今度は一虎を見る。
「ダカラワタクシハ、赫夜様ニ。ソノ使イ手タル、一虎様ニ。ココニ、留マッテ頂キタカッタノデス」
「お前・・・」
零れるような柳児の呟きに、だから桧王は続けた。
「ソノタメニ、ワタクシハ一虎様ト赫夜様カラオ話ヲ伺イ、全テガ上手クイク〔計画〕ヲ立案シマシタ」
「全てが上手くいく〔計画〕、だと?」
柳児の問いに、桧王が頷く。
「ソレヲ達成スルニハ、柳児様ノ力ガ必要デス。ソシテ何ヨリ、柳児様ト一虎様、オ二人ガ互イノ本気ノ意志ヲ信頼出来ナケレバ、成功ハ不可能デス。デスガ・・・」
桧王が柳児と一虎を見据え、言った。
「ワタクシハ、意志ヲブツケアイ、オ互イノ本気ヲ知ッタオ2人ナラバ、ソレヲ成シ遂ゲラレルト確信シテオリマス」
言葉に、一虎と柳児がお互いを見やる。一虎は柳児の、目的のためなら手段を選ばない気概を。柳児は一虎の意志、〔普通〕の自分から変わりたいと願い、ただがむしゃらに挑む不屈の根性を、交わす眼差しの中で確認する。
だから、
「・・・言ってみろ」
柳児が、桧王に〔計画〕の説明を促した。
その内容を聞いて、柳児はハッキリと言った。
「無裏だな」
言葉に狼狽える3人を前にして、黒髪の長身は、さらに言った。
それは、
「この〔計画〕、俺が完璧にしてやるよ」
片方の頬を吊り上げた、挑戦的な笑みを浮かべたものだった。




