〔立証〕する!
ドッガシャアアアア!
明りの点いていない、薄暗い貸倉庫の内側で、何か大きな物体がくずおれる強い音が反響した。同時にその側では、一人の少年が無様に尻餅をついた。
「ハア、ハア、ハア」
少年、反咲柳児は、頬を伝って顎先へと流れ落ちる汗とべとつく黒髪を、黒革のグローブたる〔操十糸〕で拭い、払う。熱くなった身体を冷やそうと、必死に早朝の冷えた空気を吸い込む。闇の中で、少年の鼓動は早い。
しかし、
「休憩、終わり」
少年の紫水晶の瞳に宿る意志の光は、安っぽい貸倉庫の闇など比べ物にならぬほど深く澄んでいる。ふらつきながらでも、立ち上がることを少年はやめない。
〔目的のためならどんな手段も厭わない〕。
時に危うさを孕む〔異論派〕の少年は、目の前にくずおれている、未だ満足に操りきれないそれを睨む。前日一回戦に勝利した〔模擬論戦〕、その疲労もあって少年の両手は震える。だが 少年は、気持ちで身体を持ち上げる。
もっと力を、その一心で。
瞬間、
「・・・?」
ガガガガガ、という音を立てて、閉めきられていた貸倉庫のシャッターが開いた。足元からじわじわと差し込んでくる、四角く切り取られた薄い月光。青白い逆光に目を細めた柳児は、しかし反射的に〔糸〕を繰って先ほどくずおれた物体にシートを被せて隠す。そして少年は、顔を伏せた一つのシルエットを逆光の中に見つけた。
それは、
「竹、叢・・・?」
左腰に竹を模した刀を下げた少年の名を、柳児は呼んだ。同時に、『ああ、もう三日経ったのか』と内心で合点する。それは柳児が竹叢一虎に与えた、進退を決める執行猶予であり、〔模擬論戦〕が開始されてからの日数とも一致する。
だが、
「・・・お前、どうして」
『俺がここにいると知っている?』
柳児のその疑問に、一虎は、
「僕は・・・〔立証〕する!」
そう叫ぶと同時に黄色く光りだした竹光を抜刀、柳児へと突進した。




