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ここで僕ですとおおおおおおおおお!?

 それは、会話が成立したことに勇気を得て、



「・・・あの、さ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

「天出雲さんは、どうして裏野に来たの?」



 と、一虎が、彼女の核心に迫ろうとした時だった。



「一虎!一虎!それちょうだい!」



 口許にミートソースを付けた赫夜が、一虎の食べていたカツ丼のトンカツをねだったのがキッカケだった。一虎はその時は特に何を思うでもなく、「一個だけだよ?」「一虎なだけに!?」とくだらないやりとりをしながらカツを赫夜のミートパスタの側に置こうとした。

 しかし、



「あ~ん」

「ええ?」



 赫夜はそれを小さな丸い手で拒んで、ミートソースで汚れた口を雛鳥のように大きく開いた。そのあまりに無防備で無垢な仕草に思わず一虎は笑みを零し、彼女の口に小さめのカツを一切れ入れてやった。満足げにそれを咀嚼してから、赫夜は自分を微笑で見つめる二人の顔を交互にキョロキョロ見つめる。そして少し考えるような表情を浮かべた後、一虎の反対側に振り返って、自分を見つめていた蒼い瞳の少女に、パスタの絡んだフォークを向けた。



「フカヨン!あ~ん!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 最初、赫夜の行動に面食らった深夜は目をパチパチと瞬かせ、眠そうにも見える蒼の三白眼を赫夜と一虎へ交互に向けた。かたや、素直に応じてあげたいという気持ちと、かたや、一虎に見られているという気恥ずかしさが少女の中で拮抗する。ほんの僅か、陶器のように無機質な白さを持つ深夜の頬に桜色がかかる。

 だが、



「あ、あ~ん」



 最後には赫夜への気持ちが羞恥心に勝った。箸をおいた深夜は小さくそう言って口を開けると、赫夜の差し出すフォークを咥えた。口許を押さえてそっぽを向く深夜に、『子供に優しい』という印象を加える一虎。桜色の頬の下、口許に付いたミートソースを今注意してあげるべきか、もう少し後までとっておいて笑いに代えるか、少年はクスリと笑って迷う。

 そして、



「はいっ!」

「ん?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」



 赫夜が深夜の置いた箸を、彼女へ渡す。これまでの流れを考慮した深夜が裏解の色を蒼い瞳に宿し、それを受け取る。一品ごとに綺麗に小分けされた弁当、どうやら手製らしいそれの中から、深夜は新鮮な野菜とカニカマボコのロールされた生春巻きを摘まんで赫夜に向ける。

 しかし、



「違うよフカヨン!食べるのは赫夜じゃないよ!?」



 春巻きを摘まんだ箸を赫夜に拒否され、深夜が戸惑う。

 そして、



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ?」



 という深夜の疑問に、振り返った赫夜は言った。



「一虎!あ~んしなきゃ!」

「・・・え?」

『・・・ここで僕ですとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』


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