鎌足縁と〔英雄探偵〕
「なるほど、つまりこういうことですか。新任の担当官殿は、私に何か後ろめたいことがある、何か許されざる所業を成しているという疑念をお持ちだ。さらには先日私にやりこめられたのが、美作さんは個人的に気に入らない。つまりどうしても私に一矢報いたかった。だが現代社会において全てに優先される〔次世代〕、そんな彼らが集まる要所である〔学校〕の担当官、つまり〔政府団〕の〔幹部候補〕にあたるアナタと言えど、〔全段〕たる私の動向を制するほどの戦力、〔警察〕や〔軍〕を動かす権限はない。だから彼ら、3大武装組織の1つである〔企業群〕の保有戦力、〔傭兵〕を雇ったと。確かに、〔企業群〕は金で動く。美作担当官個人でも彼らの首を縦に振らせるほどの〔資金〕があれば、私を監視させ、あわよくば何か不利な事実の1つでも掴んで私の首根っこを押さえることが出来るかもしれない、というわけですね。上へ〔傭兵〕を裏野に居座らせる口実としては、私がアイン先生を教師として迎えた裏由と同じく、生徒数の増加に伴った戦力補強とでも言えばいい。ええ、悪くない一手です。さすが〔幹部候補〕、他の官職とは一味違いますねえ?ですが、これは個人的な疑問なんですが、〔傭兵〕を雇ったその〔資金〕は、一体どこから出たのでしょうね?」
鎌足の繰り出した〔言撃〕に、美作・裏野担当官は息を呑み、完全に怯んだ。美作のその様子に、どうやら鎌足の言う通りなのだろうと一虎を含めた新入生達は気づく。さらにはすでに3度目になる鎌足の〔言撃〕を何の準備もなくモロに喰らった間抜けな〔幹部候補〕を、気の毒に思う。威圧感のあった〔企業群〕の戦力たる〔傭兵〕達、ヘラヘラ笑いを浮かべていた鋼坂も面食らって動きを止めている。
そして、
「さ、皆さん。行きましょうか。美作担当官の用は終わったみたいですし。あ、そうそう皆さん。ちょっと連絡したい方がいるので、その間説明は中断で、つまり雑談タイムです」
鎌足は相変わらず作ったような笑顔でそういうと、腰の情報統合端末をいじって眼前に半透明で薄黒いプレート上の3次元ディスプレイを展開、相手を選んでコールしながら、生徒の先導を再開した。
「か、鎌足!?」
「テメェ!?」
やっと我に返った映像の美作担当官と長袖ツインテールの鋼坂少尉が、コケにされたことに腹を立てて声を荒らげる。
しかし、
「もしもし?初めまして。裏野高校全学年主任、鎌足と申します。本日は天出雲深夜さんのお父さんとしてではなく、個人的に探偵たるアナタにお仕事のご依頼をと・・・おやおや、いきなりですねえ。ええ・・・ほほう・・・やあ、さすがです。良くわかりました。つまりは〔世界革命〕の決着者たる〔英雄探偵〕も、普通に娘大好きお父さんなんですねえ?」
3次元ディスプレイ越しに笑う鎌足を含め、もはや一虎達新入生さえ、誰一人彼らに振り返ることはなかった。




