アイン・シュバルツ、18歳
「皆さんにまず、〔模擬論戦〕で〔裏論使い〕としての戦闘力をアピールして頂きます。そして自らの属する最少の戦闘集団、〔三段論法〕を確定して頂く。それに伴い、クラスと寮部屋の再編が行われる。七つの専門的な〔裏論〕分野である、〔裏自由七科〕を〔生きて学ぶため〕に必要な準備というわけですね」
『そういう、ことか』
「お分かり頂けたところで、話しを戻しますが、先にも言ったようにこのクラスは〔三段論法〕の結成に伴い、再編されます。命を預ける仲間とは、同じクラスのほうが有事の際に都合が良いからです。つまりこのクラスは一時的なものです。ですが、担任教師は必要だ。そして君達の担任の先生は、まだこの学校に不慣れで、君達と同様に案内人を必要としている。ですから全学年主任である私がここにいる、というわけですね」
そして男、笑みを浮かべた鎌足は腕を上げて教室の入り口を指し示す。同時にゴツッ、ゴツッ、という重量感のあるブーツの足音が教室に入ってくる。
「では、もったいぶらずに自己紹介をしていただきましょう。彼女が君たちの仮担任教師・・・」
靴音は教壇の前まで進む。〔全身を縛る鎖〕をジャラジャラと鳴らし、それと一体型になった暗緑色の〔拘束衣〕の裾と、ウェーブのかかった肩の長さの金髪が揺れる。鎖と共に黒いベルトで締めつけられた胸元の上、黒いゴム質のマスクに覆われた口許から、くぐもった声を放つ。
曰く、
「囚人番号F01―603。性別・女、年齢・18。国籍・所属、機密事項。〔日本政府団〕より与えられた仮名は、アイン・シュバルツ。以上だ」
まるで軍人を思わせる固い口調の女。アインと名乗る一虎達の仮担任教師は、シャープなフレームのメガネ越しに見える、ぼんやりと虚空を見ていた翡翠色の瞳を閉じて黙す。言葉に含まれていた様々な情報とその問題点が、仮7組の生徒全員を硬直させる。
すると、まるで凍りついた空気を楽しむように、鎌足が笑み混じりに言った。
「もう少し私から紹介しておくと、彼女は3年前に他校の管轄内で起きた未曾有のテロ未遂事件、〔次世代〕、つまり君達の少し先輩達の命を狙った大量殺人計画の首謀者として、懲役1567年の禁固刑に処されています。3年の務所暮らしのせいでちょっと荒すんだ根暗さんですが、日本語はペラペラですし、〔拘束〕が外れれば君たちが束になっても嬲り殺しに出来るほど強いです。それに、〔本当の信頼関係を築き、お互いがそれを求めた時に限り〕、〔拘束〕が外れるように設定しています。年齢も近いことですし、ぜひ皆さん遠慮せず、アイン先生を頼り、どんどん〔拘束衣〕を外して活躍させてあげてくださいね?」
ニコニコしながら凄まじい衝撃を放つ、鎌足得意の〔言撃〕に、一虎を含めたクラスの全員が思った。
『死んだね。おお、死んだね』
と。
そして、
「ああそうそう!午後には仮8組との合同授業で、〔拘束衣〕を外したアイン先生と仲良くなれるレクリエーョンもやりますよ?皆さん、是非に楽しんで下さいね?」
鎌足がさも楽しげにそう言った。
つまり、
『やっぱり、死んだね!』
仮7組生徒の〔結論〕はやはり変わらなかった。




