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三段論法

 一虎は彼の出現に体が強張るのを感じたが、幸い男がこちらを見ることはなかった。一虎の安堵に気づく様子もなく、彼は続けて言った。



「さて、なぜ全学年主任たる私がここにいるのか?皆さんの中にはその疑問を抱いている方もいらっしゃることでしょう。ですが疑問の答えはシンプルです」



 鎌足はそこで一度言葉を切って、つまり、と前置いて続けた。



「本日から約2か月。我が校では、一般的な高等学校で行われる授業の代わりに、君達の〔裏論使い〕としての戦闘力を推し量るイベント、〔模擬論戦(プレゼン・ディベート)〕を催します」

「〔模擬(プレゼン)論戦(ディベート)〕?」



 ざわめいた教室と小さく呟いた一虎に答えるように、鎌足が続ける。



「裏野が危険な場所だと言うのは、もう皆さん思い知ったでしょう。ですが、我が校では、あの程度の危機は日常茶飯事。ですが、アナタ方を守るべき〔教師陣(ティーチャーズ)〕の数は限られています。では、誰が君達の命を守るのでしょうか?」



 質問に、教室中が静まる。

 瞬間、



「は~いっ!」

「え!?」



 一虎の隣で、赫夜が勢いよく手を上げた。その様に、驚いて目を丸くした一虎へ。



「はい、では、赫夜さんの使い手の竹叢くん」

「は?え?は、ひゃい!?」



 前方の鎌足が楽しげに首を傾げてそう言った。思わず裏声でテンパった一虎は、必死に思考を紡ぎながら答える。



「え、っと、〔教師陣(ティーチャーズ)〕の数が足りなくて、でも〔裏論〕を勉強するには戦闘は避けられない。ということは、誰が僕らを守るのかというと、ええっと・・・」



 しどろもどろの一虎に、隣の赫夜が「ガンバレイッコ!」と無責任な応援の声を上げる。困った顔でその声に振り向いた瞬間、一虎の鈍い頭脳が閃いた。

 つまり、



「自分で、自分の身を守る?僕なら、赫夜で。〔ジン核〕を搭載した自衛兵器、〔裏論武装〕で?」



 言葉に、鎌足が笑みを深めて答える。



「正解です」

『よかった~』



 内心で安堵の呟きと溜息を漏らした一虎は、しかし次の瞬間に表情を凍りつかせた。

 なぜなら、



『じ、自分で自分の身を守る!?あの〔論害〕から!?』



 一虎の脳裏には、入学式を襲撃してきた骨と機械の竜の姿が浮かんでいた。あんなものを相手に戦える自信など少年にはなく、テンパって泳ぐ視線が捉えた教室内の生徒は、同じく不安気な表情を浮かべた者が多かった。

 しかし、それを察したらしい鎌足が楽しげに言った。



「もちろん君達1人1人では、確実に死にます」



 次いで、



「ですが、集団ならば死傷率は下がる。だから君達には、〔裏論〕を行使する戦闘集団である3人組、〔三段論法(さんだんろんぽう)〕を組んでいただきます」

『〔三段、論法〕・・・』



 内心で繰り返した一虎と生徒達へ、男は続ける。


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