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腐れ尻フェチ、ドMロリコン

 だが、



「ごめ・・・なさ・・・私・・・一虎さんに・・・隠し・・・て」



 顔を覆って今度こそ泣き出してしまう赫夜。そして一虎は彼女の断片的な言葉からあるやりとりを思い出す。



『隠して、って・・・昼間反咲くんと言ってた、二人だけの秘密?』



 しかし、



「ふわああああああ」

「あああああええっとなんだっけあのこれはあああああ!?」



 今だけ子供の状態に戻ったような赫夜の嗚咽が大きくなり、少女の左頬にある罅割れが深くなる。さらに、その光景を隠そうとした赫夜の両手に、罅が伝染。亀裂を奔らせ始めた両手から、陶器の欠片のような肌の破片が落ちる。壊れた肌の下には、〔人間〕にはあり得ない黒い肌が覗く。

その様は、赫夜が〔今にも壊れてしまいそう〕だと言う印象を一虎の中に強く残した。

 しかし、



「見な、見ないで下さううううううう」

「あ、あの、えっと・・・?」



 その印象が残ったところで、混乱を解決することにはならず、一虎は言われた通り視線を外す他ない。



『ど、どうしたら?』



 そして泳いだ一虎の視線が、彼にそれを気づかせた。



「!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 天井付近。人影。蒼い瞳に、サイドテールをおろした長い黒髪。

 つまり、



「天出雲、さん?」



 逆さ吊り状態でブルーのパジャマ姿の天出雲深夜が、こちらをジトっとした三白眼で凝視しているのを。

 しかし、



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「え?あの~?」



 深夜が何も答えなかったので、気まずさだけが一虎と少女の間に発生。

 さらには、



「ふ、う、えええええええええええううううううううううううう」

「か、赫夜!?だ、大丈夫だから泣かないで!?ね!?」



 赫夜の嗚咽がひどくなって状況は混乱の一途を辿る。だが、やっとのことで深夜が動いた。するりと体を反転させると、軽やかな身のこなしでベランダへと着地。2人の前に立った少女の〔裏論武装〕たる〔白い(ハイヒール)〕、〔ヒール12〕から淡い白光の粒子が漏れた。

 そして、



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・弱い、迷惑。一虎が」



 深夜が、赫夜に対してそう言った。静かな調子の声だったが、それはどうやら赫夜に届いたらしく、



「ふ、う・・・迷・・・惑・・・イッ・・・コ・・・さんが」



 赫夜は昼間のように口を引き結んで涙を堪え、赤い瞳に溜まったそれを制服の袖で拭う。感情の抑制に伴い、罅割れの進行が止まり、白い肌が少しずつ再生する。それを見とめた深夜が、小さく続けた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・赫夜、強い」



 蒼い瞳が、そう言うと同時。



「あ・・・」



 一虎は、初めて深夜が微笑を浮かべているのを見た。常に険しい表情を崩さなかった彼女のそれは、年相応の、しかし柔らかい蒼の優しさを月下に誇った。思わず見惚れてしまった一虎に少女が振り返ったときには、それは幻だったかのように消えている。だが、少年の心臓はそれが確かな事実だったことを示すように早鐘を打ち続ける。そんな少年に怪訝な蒼色を向け、しかしそれを問うことはせずに、深夜が続けた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう、寝る時間」



 言うと、深夜は赫夜に手を差し伸べて立ち上がらせ、呆けている一虎に構うこともなく、一人でベランダから上階へと飛んだ。そして再び逆さ吊り状態で顔を見せ、赫夜を持ち上げようというのか、手を伸ばす。どうやら深夜は部屋を抜け出した赫夜を迎えに来たのだと、やっと一虎も合点する。

 しかし、



「あ・・・えと・・・」



 目元が赤くなった赫夜が躊躇う様子を見せ、一虎と逆さの深夜の間で視線を往復させる。

 だがこれ以上、まだ感情の扱いに慣れていないらしい赫夜から何かを聞き出す気は、一虎にはなかった。

 だから、



「えっと、じゃあ、また明日」



 その言葉に笑みを付けて、一虎は赫夜に行くように促した。その言葉は、彼女の意志を聞いておいて、今はこれ以上何も話さなくてもいいと告げている。そして、また明日という、再会と未来を示す言葉だった。

 対し、赫夜も一瞬戸惑った様子を見せてから、



「あの・・・また、明日」



 少しの弱さと、少しの気恥ずかしさと、少しの嬉しさを湛えた微笑を浮かべ、小さく手を振ってから一虎に背を向けた。赫夜が手を伸ばし、深夜がそれを捕まえる。

そして、持ち上げようとした瞬間。

 ヒュウ。間抜けな音で風が吹き、



「あ・・・」



 少年の間抜けな喉が音を吐き、



「あ!?」



 一虎は風で捲れた赫夜のスカート、そこにあった、何物にも覆われていない、白い(シリ)を目の当たりにした。

 次いで一虎が、『そうか下着つけてないって下のほうもかあ~』などと思っているうちに、



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・腐れ尻フェチ、ドMロリコン」



 少年は、わざわざ降りてきた、昼間自らの尻も見られた深夜から、不名誉な称号と、筋肉の薄い膝裏を狙った地味に痛いローキックをもらった。


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