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月夜で一番輝く女

「・・・聞いたこと、あるような・・・あ、そういえば昼間に反咲くんが言ってたような?」



 自信無さげに言う一虎を、楽しげな赫夜の微笑が迎える。



「そうです。〔時環帯制限〕。私の力を抑え、負担を軽減する3つの制限項目のうちの1つです」

「あ、でも内容までは・・・」



 申し訳なさそうに言う一虎に、優しく微笑む赫夜が続ける。



「一虎さんを見ていればそれはわかります。簡単に言うと〔時環帯〕というのは、読んで字のごとく、ある特定の〔時間〕と〔環境〕を指す言葉なんです。例えば今は朝昼夕夜で大別すれば〔夜〕という〔時間〕。次に〔環境〕ですが、これは現在の空の状況に限定して大別し、晴天・曇天・雨天などと分けた場合、晴天にあたります。さらに今晩は綺麗なお月様も出ていますね?」

「う、うん」

「と、なると、この〔時間〕と〔環境〕が揃った状況。つまり現在の〔時環帯〕を、一虎さんならなんと呼びますか?」



 滑らかに話す赫夜の問いに、一虎は考えることなく答えた。



「〔月夜〕、だね」



 すると赫夜が笑みを深め、両手を胸元で絡めて言った。



「正解ですっ。そして私には普段、能力を抑えるために幾つもの制限がかけられています。〔時環帯〕もその制限項目の一つに組み込まれているんですが、今、〔時環帯〕による制限は解除されています。ということは?」

「ええっと・・・つまり・・・」



 一虎はあまり回転の良くない頭をフル回転させ、なんとか結論を導く。



「つまり、特定の〔時間〕と〔環境〕でないと、赫夜は本来の能力を制限された状態にあって、でもその〔時環帯〕制限が解除される〔時間〕と〔環境〕があって、でも今は赫夜の能力制限の1つ、〔時環帯〕制限は外れてる・・・そう、か。赫夜が制限を解除される〔時環帯〕は・・・」

「そう、〔月夜〕というわけです」

「ほへえええええ。なんかややこしいなあ」



 一虎がなんとか理解し、右手で知恵熱の溜まった頭を撫でる。赫夜がクスクスと笑い、言った。



「でも意外と身近な話なんですよ?〔人間〕にも、それぞれに得手不得手な〔時環帯〕があるじゃないですか。朝が弱いとか、寒いのは平気とか」

「あ、そっか。そういう風に考えればいいのか」

「ええ。そうなると私は、〔月夜〕で一番輝く女、ということになりますね?」



 赫夜の悪戯っぽい笑みに、一虎は顔が赤くなるのを止めらなかった。誤魔化すように「アハハ」と笑う一虎に、赫夜は続けて伺う色の瞳を向けた。



「あの、今度は私が質問しても?」

「え、うん」

「その、えっとですね・・・」



 さっきまで饒舌だったというのに、打って変わって言い淀んだ赫夜は、何度か一虎と手元を視線で往復する。しかししばらく一虎が待つと、少女は意を決して聞いた。



「・・・私、ちゃんと〔人間(ひと)〕に見えますか?」

「え・・・?」



 思わぬ質問に、一虎は呆けた声を漏らす。



「え、っと・・・?」



 しかし考えを巡らせる一虎が作った一瞬の間を、どうやら目の前にいる少女は別の意味にとった。眉をハの字にして、赫夜がまくしたてる。


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