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黒幕

 軽く肩を持ち上げてコリをほぐしたスキンヘッドに黒スーツの偉丈夫、裏野高校・校長・汚野は、口回りを覆う髭を撫でながら、机にココアを置いた人物に言った。



「結局日が暮れてしもうたのぅ」



 円形の室内。執務机を中心に180度窓というレイアウト。その中心に置かれた執務椅子に座った汚野の黒のサングラスには暮れなずむ夕日が差し込み、オレンジの光彩を放っている。だが汚野の口調には、今現在この場所に、地上300mの高さに位置した漆黒の中央管理塔、その最上階にある校長室にてコーヒーを啜るもう一人の人物を責める色合いはない。代わりというように、汚野は置かれた柔らかい色のココアを一口啜ると、疲れと諦めを含んだ溜息を漏らす。

 すると、



「予想では、もう少しかかると思ったのですけれどね」



 汚野の隣に並び、コーヒーを飲む男が、そう言った。茜色に黒のスーツを染めた男、夕日を浴びる鎌足は、舌が伝える心地よい苦みにか、はたまた事の顛末にか、どちらに向けたのかわからない笑みを浮かべた。男の楽しげな様子に、汚野は強面を少し顰めて言った。



「のう、鎌ちゃん?」

「はい?」

「鎌ちゃんの流儀はワシもわかっとるつもりじゃし、今回の件もまた不問になったけどのう。もうちょっと加減出来んかい?」

「加減、ですか?」



 汚野に聞き返しながら、鎌足は夕日の窓辺へと歩を進めた。

「可哀そうに、鞍馬ちゃん、一杯一杯じゃったで?元々資産家のお坊ちゃんじゃし、ありゃあ温室育ちには堪えるわ。それに、今年からうちの新任担当官になったアイツ、美作言うたか?顔真っ赤にして帰ってったじゃろ?ありゃあ面倒なことしよるで?じゃけえ・・・」



 汚野がそこまで言うと同時、窓辺で脚を止めた鎌足が言った。



「いけませんね、それでは」

「・・・やっぱダメ?じゃあせめてワシには事前に内容を・・・今回の場合なら、〔非敵性の裏生物を操って敵性の裏生物である論害に見せかけ、新入生にデモンストレーションをする〕って言うてくれん?ダメ?」

「ええ。汚野校長は大根役者ですからね。〔次世代(ネクスト)〕に少しでも勘付かせてはダメなんですよ。そうなってしまっては今回のような、〔死は身近にある〕という恐怖体験に意味がなくなる。せっかく生徒が何物にも代えがたい実体験を経て手に入れた〔現実世界〕への正確な認識は、裏野に来た彼らにとって必要なものですから」



 言って鎌足は、いや、〔先の事件全てを操っていた黒幕〕は、階下を見下ろす。男が階下に何かを見つけたらしいと、彼の笑みの深まりから汚野は気づく。ゆっくりと巨躯を持ち上げ、汚野は鎌足と夕日を挟んで階下を見た。鎌足の見ている人影に気づき、溜息混じりに汚野は言う。



「その代わり、ワシらは敵だらけじゃのう?」

「かつて〔正論派の不良(チンピラ・ジャスティス)〕などと言われた武闘派アウトローのアナタが今さら何を?それに、裏野にいれば生徒と言えど〔論害〕との戦闘は避けられない。そんな状況下で〔裏論〕を学ぶならば、戦闘力は不可欠で、今日のような経験は生存力に繋がる」

「・・・まあ、確かにそれがうちの売り、死傷者数の少なさに結びついてはおるがのう」



 鎌足と汚野はそう交わして、遥か下方の街並みを眺める。

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