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2人だけの秘密

「ハイ」

「あ、はい」



 一虎と桧王がそれに従い、深夜と赫夜が見守る中で、柳児は、



「・・・」



 沈黙。

 沈黙。

 長い、沈黙。

 だから、



「反咲くん?」

「・・・」

「え~っと・・・」



 沈黙に耐えきれなくなった一虎が声をかけるも、柳児は答えない。どうしたものかと一虎が背後の深夜と目を合わせ、また一方的に逸らされた、その時、



「なんで、こんなことを!?」



 柳児が突然そう叫び、今までの倦怠な印象の彼と同一人物とは思えぬ速度で立ち上がる。

 そして、



「桧王!親父に通信回線をつなげ!それと天出雲の母親にもだ!」



 少年は長い黒髪を振り乱してそう叫んだ。



「あの・・・反咲くん?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・母さんに?」



 一虎と深夜には柳児が激昂する理由がわからない。だが彼の怒りが、元々の〔ジン核〕所有者と、それを一虎に合わせて〔再武装化〕した職人、天出雲大和と反咲流に向かったことだけは明らかだった。

 しかし、



「ふざけやがってゴミが!一体どういうつもりだ!?このゴミガキや桧王には、ちゃんと〔意志〕があるんだぞ!?相手が〔ジン核〕だからって、人工的な魂だからって、こんなことしていいと思ってんのか!?」



 なぜ柳児が先にも増した怒気と剣幕で叫んでいるのか、一虎にはわからない。何か重要な事実を彼が見つけたとしか、わからない。止めるべきなのかすらもわからず、一虎はギシリと拳を握る柳児を見守るしかない。

 だから、



「赫夜が頼んだの」



 怒り狂う柳児の言葉を、彼の腰にガバッと抱き着いた赫夜が止めた時、一虎はさらに混乱した。そして柳児にとっても、それは予想外の答えだったのか、



「お前、が・・・?」



 驚きが怒りを塗り替え、さらに柳児は沸き上がった困惑に感情を上塗りされて幼女に問うた。



「だが、なぜこんな?〔再武装化〕だけでもお前自身の〔意志〕の源である〔ジン核〕に負担がかかる。なのに、その上で同じくらいの負担がある〔化身化〕の付与までして。それをカバーするために幾ら〔制限〕を増やしたところで、負担の軽減にも限度があるんだぞ?」



 言って、柳児が赫夜の左頬、罅割れたそこを黒いグローブに覆われた右手で撫でる。少年の口の端が苦渋に歪み、赤い単眼(モノアイ)も苦悩を示すように明滅する。



「この罅・・・〔化身化〕にも無裏が現れて、不完全なものになってる証拠だ。それなのに、最初からわかりきった〔結論〕が待ってるのに、お前は・・・」



 柳児の口から〔答え〕が出る寸前に、赫夜は、



「〔いい女〕には、秘密があるの。そして〔いい男〕は、それを言い触らしたりしない。よね?」



 たった一言で、制した。

 気圧され、なぜか傷ついたように円盤を載せた頭を垂れる柳児に幼女は言う。



「ありがと」

「・・・何が、だよ?」



 不貞腐れたような口調の柳児に、赫夜は笑う。



「赫夜のために、もう2回も怒ってくれたから!あ、そっか!リュージにはヒノキオがいるから、そうやって、〔アタシ達のために〕怒ってくれるの!?」

「・・・そういう余計なことは、言わなくていいんだよ。それがたとえ事実でもな」

「そっか!うん!わかった!」



 柳児は笑顔で頷く赫夜に右手を伸ばし、ぐしゃりと白い髪をかき回す。その仕草は乱暴だったが、先ほどと違って行為に嫌悪は見られない。そして一虎は気づいた。柳児が薄く浮かべた微笑。それと似た表情をついさっき見たことを。



『大和さんも、同じような顔で、笑ってた』



そして怪訝な一虎と深夜を振り返った柳児は「悪いが」と前置きし、幼女と同時に言った。



「「このことは、2人だけの秘密」」



 一虎はその秘密が、絶薙(たえなぎ)大和にあの微笑を浮かべさせたのかもしれないと感じた。


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