例外存在
「そんでこの〔論派〕って奴は、〔裏力〕にも当然影響する。〔裏力〕が〔論派〕っていう色に染まる感じだ。で、自分の〔論派〕に則した〔裏力〕ほど他の〔論派〕が混じっていない状態になる」
「それが、〔裏力〕の〔純度〕ってこと?」
「ハイ。己ノ感性ニ素直ニ従ッテ〔発散〕サレル〔裏力〕ホド、〔純度〕ハ高クナリマス。逆ニ、他ノ〔論派〕ノ影響ヲ受ケ、迷イヤ躊躇ガアルホド〔純度〕ハ低下シマス」
「ほへえええええ~。あ、だから必然的に、1つの〔論派〕に限定して抽出する〔ジン核〕は〔裏力〕の〔純度〕が高くなるから高出力で、色んな〔論派〕の〔裏力〕を混ぜこぜで抽出する〔ハン核〕は不純物が多いから出力が低くなるのか・・・」
一虎は、改めて表示された4つのディスプレイを見る。少年が納得の頷きを1つしたところで、桧王が言った。
「話ヲ戻シテモ?」
「あ、うん。お願いします」
「ハイ。マズ、表示ヲ見テオワカリノヨウニ、ソモソモ一般的ナ〔裏論武装〕ニ使ワレル〔ジン核〕ヤ、施設ヤ家電ナドニ使用サレル〔ハン核〕ニハ、ワタクシノヨウニ〔裏力〕ヲ自己生成スル機能ハアリマセン。培養液内デ成長サセレバ、ソレモ可能ニナリマスガ、ソコマデスルコトハ稀デス」
「そう、なの?」
「ハイ。ナゼナラソレガ可能トナルサイズ、完全ナ状態マデ核ヲ成長サセズトモ、〔裏力〕ノ抽出ト、〔変換式〕ニ則ッタ〔裏論〕ノ展開ガ出来ルタメデス」
「でも、それだと〔ジン核〕や〔ハン核〕は、未成熟な魂ってことだよね?それでも、〔裏論〕の展開には支障はないんだ?」
「ハイ。未成熟ナ魂デアッテモ、ソレハ魂デス。ソシテ〔変換式〕ヲ書キ込ム〔精シン世界〕ハ、魂ノ大部分ヲ占メテイマス。ヨッテ、〔裏論〕ノ展開ニ支障ハナイノデス」
「ほへえええ~」
「ソシテ、〔裏力〕ヲ自己生成出来ナイトイウコトハ、〔意志〕ガ目覚メテイナイトイウコトヲ意味シマス」
「そうか、〔意志〕は〔ジレンマ構造〕を認識して、〔裏力〕を生む部分。そもそもそれを認識出来るレベルまで〔意志〕が育ってない魂だから、〔ジン核〕や〔ハン核〕は〔裏力〕を自己生成出来ないんだ。自分でまだほとんど何も出来ない、お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんみたいなものなんだね?赤ちゃん、〔ジン核〕は、母親である使い手から、栄養を、〔裏力〕を受け取って初めて活動出来るってことだ」
「ハイ。シカシ・・・」
言葉を切って、桧王が視線をキョトンとして座る赫夜に向けて言った。
「赫夜様ハ、〔ジン核〕デアリナガラ、目ヲ覚マシテイラッシャイマス。一度デモ培養液カラ出サレタ核ハ成長スルコトハナイ、トイウ前提ガアリナガラ、デス」
「それは・・・」
「赫夜は、〔シン核〕や〔人間〕の魂のように自力で〔裏力〕は作れない。だが、コイツの中には〔ハン核〕みたいにすでに幾つも〔論派〕がある。本来1つの〔論派〕にのみ染められるはずの〔ジン核〕には、ありえないことだ」
付け加えられた柳児の補足に、一虎は、
『・・・それって、普通じゃないんだろうな』
そう内心で呟き、改めて赫夜をまじまじと見る。
しかし、
「イッコも食べようよ~」
そう言って正座する一虎の口に鼻水まみれのかりんとうを押し付けてきた笑顔の赫夜は、
「うおおおおおおおおおおおおおちょっと待ってそれはいいかな僕他のオロロロロロロロ!?」
『頬に罅が入ってることを除いたら別に普通の子供に見えるけど甘いけど塩味いいいいいい!』
一虎にそう思わせるくらい、人間らしい存在感と鼻水感であった。
それを察したように、
「デスガ、物事ニハ例外ガ付キモノデス」
と桧王が言葉を放ち、
「何か事例でもあるのか?」
柳児が促す問いを投げる。
それに応じて、桧王の頭部がディスプレイを消して言った。




